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夙坂侑恵菜

「ねぇねぇ〜莉奈ってキスってしたことあるんだっけー?」

「……なっ!?なんなの、唐突にそんなこと訊いて?」

ベッドに仰向けで寝そべり購入した本屋のカバーをかけた文庫本を読みながら訊いてきた夙坂侑恵菜(しゆくざかゆえな)に、咽せながら身体を捻って訊く私。

「いやぁーどうだったかなぁって、ふと気になったから聞いた」

「そう、なんだ……キス、ねーぇ……」

私は左手のひとさし指で下唇を触れながら、記憶を辿っているように呟く。

「勿体ぶんなよ、あるんならあるって言え。その間はあるんだろ?なあ」

「無いよ、無い無い。侑恵菜こそどうなの?したこと、ある?」

「ある。三回」

「へぇ〜あるんだぁ!三回も、へぇ〜」

「うへぇー。ムカつく返しだな、それ」

「まあまあ。それでいつなの、いついつ?」

「小三と中二に二回だよ。これで満足か、莉奈」

「侑恵菜からしたの?相手からされたの?どこでどこで?」

「ウザぁー、ウザいよこいつ……」

「やり返されないって思ってたのが悪い。で、でどうなの?」

部屋の主である美代菜はテレビに向かい合ってゾンビ共をばたばたと撃ち倒していくTVゲームに夢中で、私と侑恵菜の会話に割り込んでこない。

「おりゃおりゃおりゃーっ!死ね死ね死ねーぇいっ!!オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラーァッ!!!」

興奮して叫び続けている美代菜。

荒ぶっているご様子の美代菜に構うことなく、侑恵菜に絡む私。

「私の家で遊んでる時ソファに座ってたら相手が押し倒してきてキスしてきた……小三のとき。あとは言わねぇッ!」

読んでいた文庫本を閉じ、頭のそばにそれを置いて恥じらいながら経験を答えた侑恵菜だった。

ベッドに仰向けで寝そべったままで両手で顔を覆い、隠した侑恵菜。


可愛いな、見た目に反して。


凛として大人びた雰囲気を纏っている侑恵菜が頬を赤らめ恥じらう姿は、身悶えてしまうほどに破壊力があった。


「莉奈……のばかぁっ!」


冷房の効いた美代菜の部屋で、私の身体は若干の汗をかいていた。

私はいくらか興奮しているようだった。


もっと見たい、彼女(ゆえな)の可愛い姿を。

そんな欲望を肌の露出が多い彼女を眺めながら、抱いた私だった。


そんな8月の中旬のある平日の昼下がりだった。




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