ヒトメボレ
はぁー、と溜め息を漏らすと、つるんでいる女子の一人が声にもならない悲鳴をあげそうになるのを片手で口もとを押さえ視線を彷徨わせる。
彼女が両隣りの女子二人に何かしらの合図を送った。
「そういうんじゃないから。続けてて」
私が名指しするだけで、さらに萎縮しそうな彼女に向けて気に障ってないことを告げて、会話を続けるよう促した。
「う、うん……でね——」
教室の校庭側の隅でつるんでいる数人の女子に混じって、彼女らのつまらない会話に耳を傾けることなく、窓に視線を向けて、ある人に対して想いを馳せていた私。
周囲の女子が口にする恋愛対象について、私はどうも腑に落ちないでいる。
異性に惹かれるだなんて、理解に苦しむ。
あんな獣どものどこに魅力を感じられるというのだ。
アイツらは、自身の性欲を満たすためだけに、乱暴に異性を汚すだけ汚して、性欲のはけ口の道具としてしか見ていない。
飽きたらゴミのように捨てて、次の相手を見繕う。
愛情なんてモノを与えない醜い生物に身を委ねようとするだなんて、おぞましい。
恐怖心を抱かずに誰々に抱かれた、誰々とヤったなどと言っている同性が私にはおぞましく感じられた。
高校に入学して一ヶ月が経とうとした四月下旬のある日の昼休みに、私はある先輩を目撃して、恋に落ちた。
蜜牧先輩という、女子生徒を一目見て、恋に落ちた。
——一目惚れだった。
アイツに無理矢理されたアノ行為を彼女であれば、私は受け入れられる。
蛇が這うような感触に似たアイツのあの手付きを彼女であれば塗り潰せると、直感が告げ、彼女に近付こうと決めた。
悪夢から抜け出せるように、彼女に、蜜牧先輩に縋ることを決心した。
彼女と親しげにしている四條原に接近して、蜜牧先輩とお近付きになれるところまでこぎつけられた私だった。
なのに、四條原にアイツと関係をもっているのを知られてしまった。
四條原は、アイツとの関係を追求してこない。
アイツも、四條原に私との関係をバラさなかった。
私の、麻生愛梨彩の悪夢はいつ覚めるのだろうか。
私の身体に巻き付く太く頑丈な鎖を砕き自由にしてくれる蜜牧先輩は、いつ触れてくれるの?




