返事
——四條原先輩……好きです
宮郷が発した艶っぽい囁き声での告白に、動揺する俺。
驚きのあまり、言葉が出ずに吐息が漏れた。
「……」
「……っ!」
宮郷は無言の俺に返答を急かすことをせずに、静かに俺が発する言葉を受け止めようという覚悟を決めた表情で見据えている。
「……ご、ごめん。宮郷さんとは……付き合えない。嬉しいけど、ほんとごめん」
「そう……でっ、すか……あの、お相手を聞かせて、貰えませんか?」
「あっ……えっと、それは——」
「ごめんなさい、四條原先輩。そうですよね……振った相手に言えませんよね。さきに好きになったのに……私に振り向かせられなくて、悔しいです。ほんとに……」
口ごもった俺を遮って、震えがおさまった声で謝ってから悔しがる宮郷。
ああ、やっぱり……
「解るんだね、宮郷さん……」
俺がぽつりと呟いた声に、彼女は頷いた。
「解りますよ……四條原先輩は一途ですもん。先輩から何も貰ったこと、無いですから。あのひとだろうってくらい、ね……」
「渡してないね、宮郷さんには……何も」
彼女の精一杯の強がる微笑みを瞳に捉えて、事実を呟いた俺だった。
俺が何かをプレゼントしたのは数人しかいない。
その数人に、宮郷はいない。
一途、ね……一途、か……
宮郷は強張った身体の力が抜けたようで、ダイニングチェアの背もたれに身体を預けて瞼を閉じて、無言になった。




