友人の存在
「莉奈ぁ〜ぼぅーっとして、どうしたーぁ?」
「どうもないよ。ただ……ううん、気にしないで」
隣にいる友人の美代菜が、怪訝そうに片眉を僅かに吊り上げ訊いてきた。
私の言い淀んだ返事に、彼女が追及してきた。
「えぇ、なになにっ?その違和感ある感じぃ、ほんと大丈夫ぅ?莉奈ってば、溜め込んでダメになっちゃうからさぁー、心配だよぅ」
「大丈夫大丈夫。ほんとなんでもないから」
胸の前で両手を左右に振って否定する私。
「そんな引き攣った顔で言われてもねぇー」
「いやいや、ほんとだからっ!そ、それよりさっ、夏休みの予定どうする?」
「……怪しー。まあ、そこまで言い張るんならそういうことにしとくよ。夏休みの予定かぁ〜そうだねぇ……んとぉー、義弟くんも誘って海、とかどうぉ?」
「えっ、なんで、四條原くんが出てくんの?」
「なんでって、そりゃあ、ナンパ除けじゃん!女子同士で遊ぶのは良いけど、莉奈が男も連れないで出歩いてたらナンパしようと近付いてくる輩がいるに決まってんじゃん。最近、物騒なんだから非力な女子が群れても、やられるだけだって。四條原がいたら、なんか不都合でもあるわけ?あの子は男性の中じゃ無害だってぇ〜!」
「四條原くんは獣じゃ……いくら美代菜だからって、いくらなんでもそれはないよっ!」
「ごめんごめん、言い過ぎたよ、莉奈。断った相手なのに、それほど気に障ったとは驚いた」
顔の前で掌を合わせ謝ってから、降参するかのように両手を肩より上に挙げた。
「ふ、深い意味は、な、いよ……」
「ま、まあ、相思相愛なんだし……邪険にしなくても、なぁ」
美代菜が私の表情を窺いながらも同意を求めてきた。
「また、美代菜はそうやって……わかったよわかりましたぁっ!四條原くんを誘いますよ誘えば良いんでしょ!」
私は諦め、投げやりに彼女の提案にのることにした。
義妹にメイド服を着させられた翌日の友人の自宅の自室での会話だ。
引っ越してくる以前よりかは、友人との付き合いが良好なのは望ましいことだった。
——原澤莉奈だった頃よりかは、幸せなのは紛れもない事実だ。




