閑話—数少ない友人
私が、このやんちゃな同級生に目を付けられたのは小学三年のゴールデンウィークが終わった一週間と数日が経った頃からだった。
「ねぇねぇ、ミヤザトさん。なによんでるの?」
クラスが二つあり、二年間も違うクラスということもあって話す機会もなかった彼女が唐突にそんなことを隣に立って聞いてきた。
「……」
「きいてるの、ミヤザトさんってば」
人見知りな性格ということもあって、返事を返せずにいた無言な私の肩を揺すりながら聞いてきた彼女だった。
「えっ、と……」
絞り出せたのは、掠れてか細い声だった。
現在のねぇーちこと、四條原さんが困惑の表情を浮かべてバツが悪そうに謝ってきた。
「び、びっくりさ、せて、ごめんなさい……ミヤザト、さんと……お、お友だちに、なり、たくて。だっ、だから——」
彼女が身体を震わせながら頭を下げてから、しおらしく友人になりたいと腹の前で両手のひとさし指の先を触れたり離したりを繰り返しながらお願いしてきた。
「……」
返答に戸惑った私をみかねた担任のヨシコ先生が助け舟を出してくれた。
私のそばに寄り添い、肩に手を置きながらこう告げた。
「○○ちゃんは綾ちゃんがこわがるような娘じゃないからね。だぁいじょうぶだから……ねえ、どうかな?」
私はヨシコ先生に聞かれ、おそるおそる首を縦に振った。
「エラいエラいね、綾ちゃん。じゃあ——」
無理矢理ながらも彼女と握手を交わすことを促され、流されるままに彼女の手を握った。
満足したのか、担任は他のクラスメイトのもとに向かう。
「よ、よろしくね、ミヤザトさん」
「うん……よろ、しく……シジョウハラさん」
ぎこちない挨拶を交わした私とねぇーちは徐々に交友を深めて現在に至る。
彼女は笑顔を浮かべるが、小学四年のある時期を境に不自然さを感じる引き攣ったぎこちない笑顔しか見せなかった。
ねぇーちが母親を亡くしたことを知ったのは、小学五年が終わろうとする数ヶ月前だった。
聞けなかったのは、当時の関係性が脆く壊れることを理解っして、恐れたからだった。
母親が生きている私の励ましが届かないことは子供心ながらも解っていて、私にはどうすることも……
彼女の哀しみは計り知れないのに、第三者がおいそれと云えるわけがないのだから。
ある上級生の男子も彼女と似た表情を張りつかせていたことが、気がかりだったことは言うまでもない。




