要望に応えたつもりなのに…
翌日になり起床した俺を迎えたのは、同じベッドで一夜を共に過ごした蜜牧先輩の無防備で可愛い寝顔だった。
仰向けの体勢の俺の左頬に、彼女の規則正しい寝息が掛かっている。
カーテンの隙間から僅かに射した淡い陽光が彼女の寝顔にかかる。
恋人のようで、夫婦のような起床に感じる。姉弟という関係でなく他人という関係であれば……
彼女は、俺をどういった風に見ているのだろう。義弟となった冴えない後輩としか見られていないだろう。
***
昨夜。
彼女に俺と就寝したいと提案され、何故かと訊いたがはぐらかされた。
「——面白い話、聞かせてよ。何かない、四條原くん?」
「えぇー面白い、かぁ……」
「とびっきり面白いのっ!……そうぅだねぇー幼少期の冒険譚やこれまでの失敗談なんてのは、どう?」
「そんなぁ〜……あっ、小学生の低学年だったかな?うぅーんっと……同級生の女子と放課後に遊んでたら、キスされました」
「うんうん。うんう——って自慢かぁっ!告白した相手に面白い話って言って、他の女子といちゃついた話って……」
「面白いっていうから話したのに。すいません……」
「言ったよ、面白いのって言ったけどさぁー……告白を断られた仕返しってかぁっ!」
不貞腐れたように唇を尖らせ、不満を口にする彼女だった。
「仕返しって……違いますよ。こんなのしか、話せるのが……」
「深掘りされても良いってことだよね?額?頬か、唇にされたり?やんわりとされた、それともディープに?ねぇねぇッッ——?」
就寝まで彼女の追及が続いた。




