恋人に出来ないもどかしさ
「あのぅ、ひとつ良いですか?」
「良いよ。どうしたの?」
弁当箱に入っているミートボールを箸で掴み、口に運び首肯し、怪訝な表情で見つめてくる蜜牧先輩。
「えっと……ですね。そのぅー……クラスメートの一人が蜜牧先輩と話したいらしくて……」
「うん。構わないよ、四條原くん。話すくらいなんでしょ、その相手と?話して困るようなこと——」
間髪入れずに承諾する彼女。
「はい……」
「四條原くんはどういったことを危惧してるの?」
「いやぁー……危惧というか、気になるってだけで……」
片手を後頭部に伸ばし、掻きながら返答する俺。
麻生の去り際に見せた表情が引っかかっており、蜜牧先輩に近付けさせたくないというものが脳内にある。
「四條原くん、もしかして……話したがっている相手に私を奪われる、なんてことを考えてたりする?」
悪戯心が働いたような表情を浮かべ、訊いてきた彼女。
「……ッ!ちがっ、違いますッ、よ!そんなこと……」
俺と蜜牧先輩の二人だけが占領する空き教室には穏やかに時が流れている。
クラスの教室内には流れない空気を蜜牧先輩だけと共有するこの空間が愛しく思える。
彼女が行う全ての所作が、瞳に吸い寄せられていく。
父親の再婚相手の連れ子が蜜牧莉奈でさえ、なければ——。
複雑な感情が生じることはなかったのに。




