不自然な夢からさめると
※※※
「みーくん、お友達は出来たかしら?」
ダイニングテーブルを挟んで向かい合う母親が、いつものようにゆったりした声で訊ねてきた。
もうこの世に居ないはずの母親が笑顔でいた。
「出来たよ。多くはないけど......」
「多くなくても良いの。何だか悩んでいるように見えるけど、何かあったの?」
何でもお見通しの母親。
好きだった母親、好きな母親だ。
「好きな娘が居るんだけど、どうしても......」
「あらあら~良いわねぇ~!みーくんに彼女が──」
控えめに拍手した後、そのまま掌を合わせたままゆらゆらと胸の前で左右に振る。
「違うって!まだだからっ、付き合うにはどうしたらいいかってことだよぅ~母さんっ!」
声を荒らげて否定した俺に、動じることなく謝る。
「ごめんね、またまた~さきばしちゃってぇ~。みーくんは、みーくんを貫けば良いのよ。難しいことは考えずに。ファイトォっ、みーくん!」
片手でガッツポーズをとる母親。
「えっと......そんな茶目っ気あったっけ?」
そう訊ねようと恥ずかしさに俯いた顔をあげると母親の姿はなく、代わりに──いた。
※※※
翌朝。
そこで瞼があがり、瞬きをする。
夢か......そうだよな、母親は居ない。
何故夢に出てきたのか、分からない。
「おはよう......ございます。四條原先輩」
とそんな囁く声が耳もとに届き、驚いた。
「ふぇっ!あっ......ああーっと、おっおはよう......」
声の主は、意外な人物だった。
女子に起こされるのは、定番の展開ではあるけれど、幼馴染でも妹でもないのはあまりみない......はずだ。
情けない声が出てしまった。