キミは追い込まれたとき、遠くを見る
おはよう。
そう伝えたが、目覚めは最高に悪かった。
朝起きてすぐに、彼のスマホを覗いてしまったのだ。
よせばいいのに私の手は、勝手に動きを加速させていた。
朝の彼は、戦闘力がかなり落ちる。
だから、朝に繰り広げれば、勝機はある。
スマホには、女性とのラブラブなやり取りがあった。
目を擦りながら寄ってくるキミに、証拠となるスマホを、印籠のように掲げた。
するとキミは、すぐにスマホから視線を逸らし、その上に広がる空間に視線をぶつけ始めた。
これで、もう確定だ。
キミは追い込まれたとき、遠くを見る。
それは、浮気を認めたことを意味していた。
私は、浮気をする人が大嫌いだ。
でも、キミのことは大好きだ。
ずっと、あなたの一番でいたい。
だから、反省して私の胸に入ってきてほしい。
そう思っていた。
しかし、そんな願いは叶わず、突き放す言葉を次々と溢すキミ。
気付けば私は、窓から微かに見える、山の奥の奥の方の景色を、ずっと見つめていた。