表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

7:見えてきたもの

「薬用植物ばっかりじゃないですか。それも全部、一級品の、めったに市場に出回らない種類」



「リサさん、これらの薬用植物の用途を教えてもらえませんか?ひょっとしたらそこから犯人の目的がつかめるかもしれない」




私はリストを受け取り、目を大きく開いた。




「よくもまあ、希少種だけをこれだけ狙い撃ちにしたものですね。


まずリストの一番目、この樹木は香木です。強い鎮静、鎮痛効果を持つ薬剤になるんですが、香料としての価値の方がむしろ高いんです。



生育が遅く、育つ場所も限られているのですが、それでいてこの香料を好む愛好家が国内外に多いんです。おかげで現在では、取引される価格は右肩上がり。金よりも高い値段がついています。


これってひょっとして木が切られていたっていうことですか?」



「ああ、木の枝のごっそりなくなっていました。さすがに樹木の本体を盗むのは難しかったのか、枝だけ持って行かれた形です。


あと幹の部分に無数の切り傷がありました」




私は眉をしかめた。




「その香木は傷つけられることで、自分を守るために特殊な樹脂を分泌するんです。


香木自体も元々良い香りを持っていますが、樹脂が熟成するとさらに希少価値の高い香料になる。犯人はそれをわかってやっているのかもしれません。



次は『クスリクサ』。文字通り薬になる草ですが、実は亜種がものすごく多くて、亜種だと薬効がとても弱いんです。



真性の『クスリクサ』であれば傷を治す効果が高く、痕も残りにくい。痛み止めにもなります。とても需要が高い植物なので、残念ですがまがい物が非常に多く市場に出回っている種類でもあります。



薬効の弱い亜種を混ぜた薬をよく効くように宣伝して、高く売りつける悪徳商売をやっている輩も多いです。



亜種ならまだ薬効が弱いだけで害はありませんが、粗悪な混ぜ物が入れられる場合もあって、そういう薬を飲んだ人はかえって健康を害してしまいます。



残念ながら一般の人には、亜種と真性の『クスリクサ』に見分けはとても難しいので騙される人が多いのが、ものすごく残念な植物でもあります」




私はそうやってリストにある植物について上から順に全て説明した。説明が進むにつれ、カインとダンさんはどんどん深刻な顔つきになっていた。



しばらく沈黙が続いた。



「気が付いたことを言っても?」



私は言った。



「うん?」



「このリストの植物って、香木は木なので目立ちますが他の植物はみんな背が低くかったり、地面を這うように生えていたり、花を咲かせても色がすごく地味だったり、とても小さかったりするものばかりです」



「ふむ」



「植物に詳しくない人が、いきなり森に入り込んですぐに探せるような種類ではないと思います。植物にものすごく詳しい人が、事前に何度か足を運び、この森にどう言った希少植物があるかを調べ、その植物の生息場所を確認する。そんな風に目星をつけてから盗んだ可能性は?」



「確かに」



ダンさんは言った。




私は自分で言って、自分の言葉にゾッとした。もしその通りであれば犯人は、森の管理者の監視をすり抜けてこの森に繰り返し足を運び、丁寧に下調べをしていた可能性がある。



ここのところ、エルのために一人で森の管理小屋に足を運んでいたが、ひょっとしたら犯人は、まだ森に足を運んでいるのかもしれなかった。



途中でもし、知らない間にすれ違っていたりしたら、と思うと背中にざわりと嫌な感じが走った。




「リサさん、帰りは街まで送って行きますよ」



私は微妙に顔色を悪くしていたようだった。それを気遣ってくれたのか、カインは私にそう言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ