第1話 決意
第1話 決意
「アリシアーー!! アリー !! ただいま、アリー !!」
ちょうど帰宅した父を母が出迎えている所に出くわしたらしい。
お帰りという間も無くアリシアは抱っこされ、
くるくると回され、ほおにキスをされる。
たっぷりと愛情をもらい感謝すればいいのか、
あまりの過保護っぷりに怒ったほうがいいのか、
いまだに迷うアリシアだったが今日は怒ることにした。
「お父様 !! 私、一週間前に16歳になったのよ !!」
「そうだね、アリー。大丈夫だよ、お前はずっと可愛いアリーのままだよ。
フィルもグラントもお嫁に出さないと言っているし、本当に良い子に恵まれたよ」
目をウルウルさせてアリシアを抱きしめる父は、とても近衛隊長とは思えない。
どの辺が大丈夫なのかも分からないし、
二人の兄も父の見事な過保護に加担しているらしい。
アリシアはいつもの事ながら頭がクラクラするのだった。
「カルロス、いつもの事だけど ちょっと落ち着いてちょうだいね。
年頃の娘に近づきすぎると嫌われますよ。
あらあら、口を聞いてもらえないかもしれないわね〜」
母がおっとりと、そしてバッサリと父に一撃を与える。
「リリアーナ!! そんな恐ろしいことを言わないでおくれ !!」
王宮で 1, 2を争う強さの父を一撃で倒せるのはこの母だけの気がする。
アリシアは父や兄たちが帰宅するたびに起こるこの騒動を、
そう思いながら眺めるのだ。
『でも今日こそ願いを叶えてみせるわ……』
密かに心に決意してアリシアは皆と話せる時間を待つのだった。