第8話◆重鎮達と会議を◇
ちょっとしたトラブルはあったものの、グループを分けることが出来た。
……若干1名納得できない人物がいるけれど……。
「ええっと……。アレイの方に行かなくていいのかな……?」
「勿論、勇者様と姫巫女様の授業も気になりますが、最近は魔術にも興味があるので」
「そ、そっか……」
アルフォンスが凄い見てくる……。やりずらいな……。
こちらに来た人数は約30人程。決して少なくないが、隣に70人の大所帯があるので少なく見える。
「何をしようかと考えたんだけど、2つのうちどっちかを選んで欲しいんだ。両方でもいいけど大変だからね。1つは『ランプライト』をずっと使い続けてスキルの『魔力操作』のレベルを伸ばす訓練。2つ目は身体強化をして『魔力操作』のレベルを伸ばしながら俺達と1対2の魔法戦。俺達は状態異常魔法を使うからその耐性の獲得が出来る」
アルフォンスの手が上がる。質問だろうか?
「身体強化による耐性訓練は分かりますが、生活魔法の『ランプライト』で何故『魔力操作』のレベルが上がるのでしょう?」
「実は、魔力操作のレベルは3までなら簡単に上げることが出来るんだ」
その一言で聞いていた先生までもが声を上げて驚く。
まぁ、驚くよね……。スキルの獲得条件は研究中のものがほとんどだし。
「ま、まさかそんな方法があったなんて……」
「使う魔法は何でもよくて、大事なのは魔法を使った時間。生活魔法の中で『ランプライト』を選んだのは消費魔力が少なくて連続で使えるという点で効率がいいんだ。それでも回復魔力が少ない人がいたりするから無理はしないようにして欲しい」
「アカネさんもその方法で上げたんですか?」
生徒の1人から質問がくる。
「勿論。自慢じゃないけど、寝てる時間も含めてもう1ヶ月以上この『ランプライト』は付けっぱなしだよ」
そう言ってポーチから光の玉を出してみせる。
「事務官、人間ですか……? 寝てる時間までって自分にまでスパルタ過ぎますよ……」
サラがそう言うと生徒達に軽く笑われる。
恥ずかしいのを隠す様に咳払いをして、話を続ける。
「『ランプライト』でのんびりしていたいって人はラルさんの所に集まるように。魔法戦をしたい人は俺とサラの所に。後からでもこっちに来る事は出来るからその時は待ってる人達で順番を調節して欲しいかな。質問はある?」
ざっと見回してないようなので号令をかける。
「では一旦、解散!」
こちらに来たのは20人。
ラルさんの方では先生であるラルさんまで混ざって生活魔法で効率の研究をしているみたいだ。
あの様子なら放置していても大丈夫だろう。
こちらも10名2グループに別れて始める。
……って最初の相手はアルフォンスか……。あんまり強いと負ける気がするからほんとに相手したくないんだけどなぁ……。
「サラ。1試合10分程度で状態異常系の魔法がメイン。戦い終わったら戦術はどうだったかを評価して欲しいかな。これはMPポーションだから戦闘が終わってからキツかったから迷わず飲んでね」
「わぁ、ありがとうございます〜。じゃあ、事務官、頑張ってきます!」
俺と違って張り切ってるなぁ……。
……さてと。わくわくしてる人の相手をしますかねぇ……。
「よろしくお願いいたします」
「聞いての通り、試合時間は10分。あくまで戦術を見るからただのゴリ押しはやめて欲しい……って所かな」
「勿論です。こんな貴重な機会はそうそう無いですからね。そんな勿体ない事はしません」
「……じゃあ。始めようか。そうだな……。一手目は生徒側からにしよう」
「では、遠慮なく……『ファイアーボール』」
真っ直ぐ『ファイアーボール』を打ってくる。
思っていたよりも簡単な初手だけど……。こういう時は貫通力のある魔法……『エアピアッシング』を使う。
放った魔法は火の玉を貫き、後ろに隠れていた『ロックボール』に当たり、相殺される。
やっぱりそう来てたか。だけど、ありきたり……。
すると、土煙を掻き分けてアルフォンスが近くに来ていた。……走るにしては早すぎる気がするけど……。
「『ロックニードル』」
「『ジェルネット』」
発射速度の早い攻撃を水魔法の粘性を上げた網で捕らえて、弾き返す。
「『ファイアーウォール』!」
アルフォンスは素早く下がり、火の盾で防ぐ。
……また身を隠したのか……。移動速度が上がっている所を見るとあれも魔法かな。出てこられる場所は左右と上……。先手を取られるとちょっと危ないかな……。ならこっちから!
そう踏み出そうとした瞬間に、前後左右4方向の地面が盛り上がり、次第に先は鋭くなって俺に迫る。
なるほど……。だけど、負ける事は出来ないからな……。
「三重。『ロック』『エアボム』『パラライズロープ』」
「なっ……! くっ……」
土属性魔法の動きを強制的に止める上位魔法の『ロック』。火の盾を風で払い、麻痺の縄で縛り上げる。耐性があれど学生ならこれからはまず逃げられない。
「いやぁ……。上手く行ったと思ったんですが流石です」
「最初に魔法使い同士で距離を詰めるのはかなり思い切った戦術だったね」
「先程の戦闘で遠距離で強力な足止めをしていたので速攻の方が有効だと思いました」
アルフォンスはこれでも剣術の方が得意だったはず。それを考えると近付いて魔法を使い、相手が驚いた所で剣で攻撃……。1体1の場面ではかなり有効的と言えるかな。
「まさか学生の中にここまでの人材がいるとは思わなかったよ。さすがは生徒会長。二重が使えるようになれば騎士団でも即戦力になりそうだ」
「ありがとうございます」
……ん? そういえば、剣を禁止していないし最強と言われる生徒会長なら二重も使えたんじゃ……。
という事は実力が不明な俺を試したか、純粋に戦略だけで勝とうとした……のか。どちらにせよすっごい腹黒……。
少し引きながらも次の生徒の相手を始める。
数時間が経ち、授業終了の時間となった。
午前だけでなく、午後も続いたので思っていたよりも時間が長くどうしようかと焦ったが、2対2や騎士団毎の仕事内容等の詳細。実際に起きた戦争を元に戦略を考えてもらったりと上手く講義が終わった……と思う。アルフォンスが満足そうなのがいい証だ。
それにしても疲れた……。連戦と言うのは辛いな。何か考えておかないと。
「あぁぁぁ……。アカネぇ……。僕疲れたよ……」
俺の横で汗だくになって倒れているアレイ。
「エンドレスで戦ってるからでしょ……」
「だって教える事なんて無いし……」
……確かに我流で、実践の中で育ってきたアレイは教えるのはキツいかぁ……。
「明日もあるんだからね? 戦ってばっかりじゃ大変だぞ〜」
こっちはこっちで内容に悩んでるんだ。気にしなくても何とかするだろう。リーズが。
こうして、1日目の授業を終えた俺達は家へと帰った。
その日の調査だが、これだけ疲れた面子で行っても失敗するだろうと考えた俺は単独で学園の中を巡回した。
入口の門は下校時刻を過ぎると閉まってしまうが、守衛さんに英雄騎士団の証であるマントを見せる事でスルー出来る様に学園長に掛け合ってもらった。おかげでスムーズに中に入れる。
学園の中にいるのは帰る途中の教師ばかり。俺自身も疲れていた為、これ以上は何も無いと判断して家に戻った。
そうした生活が1週間続き、アレイ、リーズ、サラが『徹夜慣れ』を地獄のような3日間を耐えて獲得した頃。
今日も早起きなお留守番2人組と朝食を取っていた。
「そう言えばアカネさん。最近、街に買い出しに行く時に妙な視線を感じんるんです」
「……ストーカー?」
「んー。ちょっと違うんですよ。なんかこう……ズモモォ……って感じの目線なんです!」
……どんな感じなの。その胸と美貌。人あたりの良さからストーカは2桁行ってもおかしくは無いけど、そういう感じの目線ではない……と。
「それで、実害は何かあった?」
「いえ、今のとこは何も」
この騎士団は敵も多いからなぁ……。単なる監視かそれとも弱みを握る為の調査か……。
「大丈夫。ここは私が守り抜く。今日もしっかり学生達に技術を伝えてやってくれ。ルミネスも自分の身を守れない若輩者ではないしな」
「もちろん! もしも襲われたらババーン! と返り討ちですよ!」
2人とも頼もしい限りだ。
「じゃあ、何か些細な事でも実害があれば伝える事。あと2週間は手薄になるから警戒を頼むよ」
「「了解」」
残る3人も遅刻しない時間にちゃんと起きて朝食を取った。
そして、ラルさんの馬車に乗り、今日も学園へ向かう。
「調査の方はどうでしょう? 怪しい人物等はいましたか?」
ラルとの朝の軽い調査報告だ。
「怪しいと言うか……。気になる人物と言う程度なら数人……ですかね」
「もうそこまで絞り込めたのですか」
「まだ、様子見の段階ですが……」
今日の生徒の中にも候補の何人かが混ざっている為、注意しなければならない。
アレイがボロを出さないか胃が痛む……。
その後も馬車の中で報告をして、学園へ着く。
闘技場で準備をしていると、近衛兵が近付いてくる。……騎士団の団員とは違って近衛兵は王の側近であり、それを使いとして出すという事は大事な要件という事……。
「英雄騎士団の皆様で宜しいでしょうか?」
「……誰なんだ? アカネ知ってる?」
「近衛兵の方だよ……。城下町ではあまり見ないけど、騎士団設立の宣言をする時に王の周りに沢山この鎧の人達がいたじゃないか」
白い鎧。それが近衛兵の装備だ。近衛兵の隊長はその鎧に金の王冠の装飾が施されている。
それはそうと本当に騎士団しか目に入ってなかったんだな……。
「ええっと、それで何かあったんですか?」
「重要な会議を開きますので、アカネ様を呼ぶようにと命令を受け、参った次第です。ご同行願います」
「団長はアレイじゃ……。何となく呼ばれた理由はわかるけど……」
頭使う感じじゃないもんなぁ……。
「な、なんだよ」
「いいや。なんでもないよ。じゃあ、今日は3人でまとまって授業して欲しい。サラだけじゃ魔法の授業はきついだろうしね」
「そうですね……。事務官頑張ってきてください!」
その場を3人に任せて、俺は近衛兵と共に城へ向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「失礼しま……す」
扉を開けて中に入ると長机があり、一番奥に王が座り、その横には宰相。団長は全員揃い、重鎮貴族ばかりが座っている。何ここコワイ……。
「別の任務中だと言うのに呼び立てて悪いな。そこの団長達の横に座るが良い。」
「あ、はい」
「そこがお主の会議の時の定席となる。覚えておくのだぞ」
……ストップ。”会議の時の定席”? これからも俺が会議に出るってことなの? えぇ……。
「では、始めよう。今回お主らに集まって貰ったのはこの国から東に位置する国。ハルバンに戦争の予兆があった件について話し合う為だ」
その場の全員が冷や汗を流し、唾を飲む。戦争の話をするという事は相手はこの国……か。強国ではないものの戦争となれば村の一つや二つは簡単に壊滅することだろう。
……でも、おかしい。時期的にはまだ戦争をするはずの無い国だ……。それどころか、この国は帝国に侵略されて乗っ取られるはず……。
この王国の周辺は東にハルバン。北にはレディーア村のある平原や山があり、その向こうに幾つか国があり。そして、更にその奥に帝国がある。西にはマルチル商業国家が海を使って交易をしている。この国とは有効な関係で海産物が新鮮な状態で市に並ぶ。南はロイス、リーエスと言う2つの国が同盟を組んだ状態である。
東側には国が多くあり、ハルバンを落とした所を攻めてくる危険がある……。
「ふむ……。陛下。何を持って戦争と判断するのかお教え頂きたい」
ガタイのいい大柄の男がそう言う。アーガイル・エル・エンタニィ。医療の分野で活躍している大貴族の1人だ。
「それは私から説明しましょう」
王の横に書類を用意してたっている宰相のベルグが話を始める。
「皆さんも知っている通り、青宝騎士団には国境の警備を任せているのですがそれと同時に何がどのくらい輸出されているのかを改めて検査させています。そして、記録によると乾物やパン等の輸出が多くなり、傭兵が集まっているようなのです」
「それはどのくらいなのですかな?」
宰相に質問したのは痩せ気味の老人。この国の大貴族の1人で、クリフト商会や商業ギルドの頭のストランド・クリフト。見た目は痩せているが目はまるで獣を狩る野獣の様な鋭い目。女の子なら睨まれただけで泣くだろうなぁ……。
「2ヶ月の間に増え続け、今では初期の頃と比べて1.5倍〜2倍程です」
「ふむ……。新事業や新しい商会が立ち上がったとしたら一気に増えるはずじゃ。それが2ヶ月もかけて上がり続けるのは少々妙な話だと儂は思いますな。まぁ、そもそも日持ちする食料など商会では食べませんしの」
確かに売るにしても変な話だ。
「やはりそう思うか。そして、もう1つ重要な議題がある。呼びつけた理由としてはこちらの方が大きい」
戦争よりも重要な事……?
「どうやら貴族の誰かが裏切っている可能性がある」
席に座っている者達全員に衝撃が走る。
「陛下。そんな事があるのですか? 国力で言えばこちらの方が強く、ハルバンに加担しても勝てる見込みは少ないのですよ?」
アーガイルがそう言う。確かに失敗する可能性が高く、危険な賭けだ。
「うむ……。我も信じたくはない。だが、そうかもしれないのだ」
「なるほど……。やっと私が呼ばれた意味が分かりましたわ。どんな小さな噂でも掴んでみせましょう」
そう言うのは社交界のプリンセスと言う2つ名を持つ美女。エリーゼ・シークレイ。シークレイ子爵の長女だ。国の内情に詳しく、裏の話から周辺諸国の事にまで詳しい。彼女の持つその情報網が目当てで呼んだんだろう。
「この事は口外することを禁ずる。騎士団長達は国境、国内の警戒を強め、お主ら貴族達はそれぞれの情報網を使って情報を集めるのだ。1週間後にまた会おう。アカネはそのまま残るのだ」
貴族達は後ろに控えていた使用人に要件を伝えながら部屋を出ていく。
いつも元気なクリルメタでさえ難しい顔をして出て行くのが見えた。
皆が出ていったのを見計らって話しを始める。
「それで……。話か何かあるんですか?」
「うむ。お主の考える事は我らでは思いつかぬような物もあるからな。少しばかり意見を聞いてみたくてな」
「意見を……?」
「現在、学園にて調査を進めてもらっている訳ですが、もしこの事に気づかず見過ごしていた場合の話がしたいのです」
んー。……英雄騎士団が設立されなければ見過ごされていた案件だからそのままだったら……という事かな?
「送られてくる報告は見ています。洗脳が進み、全ての生徒と教師に掛かっていたとしたらどうなったと思いますか?」
ベルグが資料をペラペラと捲りながら聞いてくる。
「そうですね……。最初に見つけたのは校門の洗脳魔法ですが、校舎内にもいくつか発見しました。なので、あのまま進んでいれば暴動が起きるのは時間の問題だったかと」
「……やはりそう思うか」
「それがどうかしたんですか?」
俺が書いた物語では暴動は起きていないし、そこまで気にする案件ではないと思ったんだけど……。何かあったのだろうか。
「まだ確信はないんですが……。その洗脳をしている国は帝国ではなくハルバンなのではと考えているのです」
「……確かに帝国っぽくは無いですけど……」
……そんなに頭のいい国だったか……?
「もしも、あの学園で暴動が起きた場合、通常の兵士では抑えられない場合がある。その場合は騎士団を投下せねばならない。……ここまで言えばお主なら分かるだろう」
……国境の警備はヴァイスの騎士団が担当してるとはいえ、制圧目的で配置されている訳では無い。地方から王都へ素早く状況を伝えられる者が多いのだ。もちろん精鋭揃いだけど何千という軍相手に数十人ではどうにもならない。
もしも、そんな状況で王都で暴動が起きたら敵国の侵入に気づかず、備えることも出来ないかもしれない。国力で負けていてもそれなら……。充分有り得る。
……だけどそれを可能にするにはこの国の貴族の協力が必要となってくる。王や騎士団にバレないように情報をもみ消す力を持つ者……それなりの家でないと……。
「お主は貴族全員が敵だと思って行動して欲しい。まぁ、その様子だと数人に絞れているようだが」
おっと……。また顔に出てたか……?
「暫く個人で動くがよい。学園側にはベルグが事情を説明しておこう」
「分かりました」
俺は2人に軽く挨拶をして部屋を出る。
個人で動くとなると協力者が必要……か。ギルドへ向かってみよう。
久しぶりにギルドへ立ち寄り、受け付けのスーシーに話しかける。
「お久しぶりです」
「アカネさんじゃないですか! お久しぶりです! 騎士団だったなんて……言ってくださいよ!」
興奮気味で周りの視線もこちらに向く。
「まぁ、あの時は発表前だったんで勘弁してくださいよ……」
「ふふっ。それで今日は何かクエストをやりに来たんですか?」
「いや、今日はルニー達に依頼をしに来たんですけど……。います?」
「依頼ですか……。昨日帰ってきたばかりって聞いたからいると思います。呼んでくるから応接室の方で待ってて下さいね〜!」
スーシーに案内を任された受付嬢について行き、応接室で数分待っていると3人が入ってくる。
「ようようよう! ひっさしぶりだなぁ!」
「……騎士団だったとは驚いたぞ」
「あはは……。2人に依頼をしたくて今日は来たんだ」
「相手はどんな魔物だ!? それとも護衛か!?」
「……静かにしろ。何にしろ話を聞いてからだ」
相変わらず正反対のタッグだなぁ……。
「頼みたいのは俺達、英雄騎士団を監視する奴らの特定と冒険者の繋がりで周辺の国の情報を探って欲しい……。この2つを頼みたい」
「……まぁ、突然できた騎士団は敵が多いのは分かるが、他にも何かあったのか?」
鋭い目でルニーが見てくる。
「詳しい事は口止めされてて言えないんだ……。ただ、俺達を監視、尾行してるのは恐らくスリット子爵家。バード侯爵家。そして、エンタニィ公爵家。この中の誰か、もしくはこれ以外も含め複数の家がやっている事かもしれない」
「エンタニィってのはあれだろ? ポーションとか病院の」
レルヴィがポーションを取り出して転がしながらそう言う。
「そうですね。あの家が無ければここまでポーションが安くなったりしなかったですね。そのおかげで低ランクの冒険者の死亡率が下がってありがたい限りです」
「……他の2家はあまりいい噂はない家だな」
スリット家もバード家も商業において裏のある家だ。今のうちに排除できるならしておきたい。
それに、輸出の件で関わって来るのはきっと商会や商業を生業としている家の筈。この2つを調べさせて損は無いだろう。
「……まぁ、情報を集めるのは受けよう。それでもう一つの監視されている。と言うのは心当たりがあるのか?」
「うちの騎士団の1人。ルミネスが見回りを兼ねて買い出しに行くんだけど、その時に監視されているらしい」
「ルミネスちゃんが!?」
「「……は?」」
レルヴィさん。うちの子知ってるんですか?
「……まさか監視してるのはお前じゃないだろうな」
「ちっ、違うって! 前に可愛いなぁ〜って思って声掛けただけだよ!」
あぁ、ただのナンパでしたか。……スーシーのレルヴィを見る目が冷たい……。女の人怖いなぁ……。
「ま、まぁ。それも任せとけ! しっかり突き止めてやるからよ!」
「では、正式にギルドで受理させていただきます。この以来には難易度は付かず、特別な依頼として”特級クエスト”となります。それで報酬ですが決まっていますか?」
「それなら、これからも2人に依頼をするという事と今回の件で上手く行けば国から英雄騎士団へそれなりの金額が流れるはず。その一部……。3割でどう?」
「いいねいいね! ノってきた!」
「……特級クエストに美味しい報酬。いいだろう受けよう」
特級クエストはS級になる為にも必要になる。これからも2人に依頼をしたいと言うことはその特級クエストを受けられるかもしれないで、その上更に報酬もある。冒険者なら飛びつかないはずが無い。
2人ともいい顔で返事してくれてよかった。
「じゃあ、3日置きにギルドのバーに来るよ。その時に報告を聞く事にするよ」
「……じゃあそれまでに俺が監視を」
「俺が情報を集めてやんよ!」
「よろしく頼む」
2人とギルドで別れて自分でも情報収集を始める。まずは知っている情報屋を当たるところから始めようか。
ーー……が。結局何も掴めず、夕食を取りに家に戻る。
「……ただいまー」
「事務官! おかえりなさい」
「ちょっとアカネ! ずっと帰ってこないで何してたのよ。こっちはアレイの相手で大変だったんだから!」
「えぇ、僕……?」
一体アレイは何をしたんだか……。
とにかくそれは一旦置いておき、今日の出来事を夕食を食べながら皆で話す。
「そんな訳で、王様からの命令で俺は個別に動くことになったからよろしく」
戦争の話は避けながら大まかな現状を皆に伝える。
「でも事務官1人で貴族を相手にするって危なくないです?」
「そうよ。それに3人で講師なんて……」
「貴族には真っ向勝負はしないし、講師の件は”自分自身の特訓”を兼ねればきっと上手くいくから。それでも心配だったら立派な教官がそこにいるじゃないか」
そう言って俺はクレイバルを指差す。
「うむ。助言できることがあるかもしれない。なにかあれば聞いてくれ」
「そうですよ〜。クレイバルさんはサイコーなんですから! あ、そうだ。さっきの話だと今後私の周りに気配が増えても気にしないでいいって事ですか?」
「……流石に警戒はしてよ?」
「それはもっちろんですよ〜」
「……なぁ、アカネ。話変わるけど、学園で調べるってのも3人で?」
「「あっ」」
珍しくアレイの呟いたことでリーズとサラが固まる。
「そうだな。3人で頼む」
「ま、また寝ないでやるの……?」
「じ、事務官。私もゆっくり寝たいです……!」
……どうやら無理やり3日間寝かせなかったのが地味にトラウマになっているらしい。
「と、とりあえず俺の考えてる事は書類にまとめてサラに渡しておくから読んでくれれば調べるのも楽になるはずだよ」
「あんたの言うこと一々難しいんだから分かりやすく書いてよね……」
「……アレイ。ちゃんと読めよ?」
「うっ。わかったよ……」
溜息をしながらリーズが言い、気配を消そうとしていたアレイに釘を刺す。
「それじゃあ。各自やる事をおさらいしていくか。まずはルミネスとクレイバル。2人はここの防衛と街の巡回をよろしく。城から何かあれば俺達に伝えるのも忘れないでね」
「うむ」
「了解です!」
2人に伝えるのはこれくらいか。周りにはルニーとレルヴィもいるしね。
「次にリーズ、アレイ、サラは引き続き任務を遂行。犯人を急激に追い込んだりはしないようにして欲しい。捕まえられると確信した時に行動する事。洗脳された人はサラが解除してくれ」
「おう!」
「頑張ってみるわ……」
「分かりました事務官!」
リーズは苦悩が絶えないなぁ。
「で、俺は個人で暫く動く事になる。帰ってこない日もあるだろうけど気にしないで欲しい。最初から想像してたよりも大事になってきたけど頑張ろう」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ーーとある貴族の屋敷の一室。
フードを深く被った男と密会する小太りの貴族がいた。
「……それで? 次は何と言ってきた」
「次の指示はーー」
「……また人使いが荒いな。だが、今耐えればこの国が生まれ変わった時に私は王に次ぐ権力者となれる! おい! 裏商人を呼べ!」
小太りの男が扉に向かってそういうと、また1人、フードを被った男が入ってくる。
「あい。お呼びでしょうか」
「麻薬を用意しろ。最後の仕上げで必要だ。あの学園の人形共の洗脳が出来上がる頃だからな」
「その件ですが、あの騎士団が邪魔をしているようですが?」
「ふん。ただの講師と聞いている。低レベルの屑になど気づけるはずがないだろう」
「……」
黙った裏商人の様子を見て舌打ちをしながら小太りの男は喋り出す。
「わかった。『催眠』を使える魔術師を5人。魔物も捕まえてこい。これでいいだろう!」
「あい。1週間で用意致します」
「ふ……ふふふ。後2週間以内にこの国が手に入る。騎士団など無意味だと証明してやろう……!」
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