第7話◆学園で講師を◇
窓に着いているカーテンの隙間から朝日が入り込み、顔に当たる。
俺は最高品質のベットから起き上がる。部屋を見渡すと見た目はシンプルだが、買ったら王室にも負けていない額の家具が至る所にある。
ここは【英雄騎士団本部】の俺の部屋だ。クリルメタは本当に2日で家具を作り上げてしまった。
今日は初のお仕事の日。週の初めは学校で朝礼を行うのだが、その時に俺達の紹介する。それに合わせて俺達も用意をしなければならない。
とりあえず食堂へ行こう……。
部屋を出ると、とある男が部屋から出た所だった。
「おはよう。クレイバルさん」
「うむ、おはよう。しかし……。さんは要らんと言っておるだろうに」
クレイバル。金剛騎士団から来た40代後半のベテランで重装兵。
長身で髪は短く、とても頼りがいがある。金剛騎士団では確か新人の教育係をしていたと記憶している。
「いえいえ。年上だし、さん付けくらいはいいじゃない。それよりも朝食を作ろうと思うんだけど食べる?」
「そうか……。ありがたく朝食を頂こう」
2階へ降りて、ダイニングキッチンへと入る。
そこには既に先客が2人居た。
「んっ。クレイバルさん。アカネさん。おはようございます」
「クレイバルさん。事務官。おはようございます!」
先に挨拶してきたのは金剛騎士団から来た女剣士。ルミネス・ハート。容姿は綺麗系でクレイバルと同じく長身。紺色の長い長髪を後ろで束ねている。そして、今はダンベルを持ってタンクトップ姿なのだが……。2つの山の暴力が凄い。こんな感じで少し気にしすぎないところもあるけど、子爵家の長女でそこそこのお嬢様だ。
そして、俺を事務官と呼んだ女の子。名前はサラ。身長は150センチ程度でいつも黒のローブを着ている。この子が最後の補充要員。ローズマリアの所から送られてきた子だ。
綺麗な銀髪でセミロング。首を傾げるだけでサラサラと髪が動くのは見ていて気持ちがいい。
「あぁ。おはよう」
「2人ともおはよう。……あの2人はまだかぁ……」
「事務官っ。今日からよろしくです!」
「うん。よろしく。2人ともご飯作ってあげようか?」
「いいんですか? ならお願いしたいです!」
「私もお供します!」
というわけで朝食4人分だ。遅れてくる奴らは知らん。自分で用意すればいい。
朝食から重たいのは俺が嫌なので、卵、コーンを入れた中華もどきのスープ。簡単なサラダ。ベーコンと目玉焼きをおかずに、バケットを切って少しだけオーブンで焼く。
バターとジャムも用意完了っと。
冷めないうちにササッと皆で頂く。
「このスープ、変わった味ですけど美味しいですね。病気の時でも飲めそうです」
「リーズさんと事務官がいれば美味しいご飯には困らないですね〜」
そんな会話をしながら食事が終わる頃。
「ね、寝すぎたぁ!」
「わ、私も……! まさかアレイと同着なんて……。ベッドがあんなに柔らかいなんて反則よ……」
寝坊組が食堂に入ってきた。
2人とも寝癖で頭はボサボサで、着替えてもいない。
「はぁ……。2人とも寝癖を直して、着替えてきてよ。今日から仕事の始まりなんだからさ」
俺がそう言うと、2人はハッっとして急いで部屋に戻っていく。
「剣の腕はいいんだが……」
「……クレイバルさん。アレイに振り回されるだろうけど騎士のイロハを叩き込んでやって」
「もちろんだ。任せて欲しい」
ルミネスもチラッと見られて冷や汗を流している。まぁ、クレイバルは鬼教官だしアレイには丁度いいだろう。
「じゃあ。サラは用意できてると思うから先に外に行っておこうか」
「はいっ」
2人で外で待っていると門の前にひとつの馬車が泊まる。
王冠と星の模様が目立つ紋章……。学園の馬車だ。これからは毎日アレで通勤することになる。
近づくと男が1人出てくる。
「初めまして。国立クロス騎士学園で教頭をしています。ラル・フランスタと申します。皆様をお迎えに上がりました」
国立クロス騎士学園。俺達4人が今日から調査する場所だ。
主に、優秀な騎士を育成する学校だが、一部、高等学校と同じことを学ぶので、王都で1番人気があり、1番難関な学校だ。
そこの教頭。ラル・フランスタ。彼の専門分野は魔法と高等知識。強さ的には副団長クラスだった……かな?
「ありがとうございます。あと2人ももうすぐ来ると思います」
「お2人は事務担当のアカネ様と中位魔道士のサラ様ですね。私も魔法を嗜んでいる身。お2人とは仕事の話抜きで語り合いたい所です」
貴族の威圧感はなく、パッと見は執事のように見えるが、しっかりと立場を抑えているような……。そんな不思議な喋り方でラルは話す。
「私もです! アカネさんの知識は豊富で本当に素晴らしいのでもっとお話が聞きたいです!」
「ほう……。それはますます聞いてみたいですな」
「ははは……。それよりもラルさん。俺達に様は使わなくても大丈夫ですよ。呼ばれ慣れてないもので少しむず痒くて……」
「左様でございますか。ではこれからは君。と付けましょう」
「はい。ありがとうございます」
そこまで話したところで、後ろで扉を勢いよく開けてこちらに走ってくる音が聞こえる。
やっと来たみたいだ。
「「お、遅れましたぁ!!」」
「いえいえ、大丈夫ですよ。初めまして。ラル・フランスタと申します。学園では教頭をしています」
「アレイです! よ、よろしくお願いしまぁぁすっ!」
「リーズです。ど、どうも!」
2人の様子を見て、ラルは微笑み、俺達を馬車へと乗せる。
「では改めまして、今回はご依頼を受けていた頂き感謝致します。この中では防音魔法でガードされていますので学校に着くまでの間、情報を提供したく思います」
「はい。では、俺がメインで聞きましょう。3人は気になる事があれば何か聞いて欲しい」
「おうっ! 任せた!」
「いつも通りね」
「異論ないです!」
とはいえ、概要は大体聞いている。
依頼内容は原因の追求及び犯人の捕縛。カモフラージュとして、生徒の魔法実践訓練、武技実践訓練の講師。
うーん。とりあえず被害状況とかはまだ分からないので調べるが、先に情報を貰っておいてもいいかな。
「その……。貴族至上主義の洗脳を受けたと思われる生徒は何名位になるんですか?」
「絶対数は分かりませんが、50名程かと。ですが、洗脳は見た目での判断が難しいので被害を多く見積って3クラス相当の150と学園は考えています」
学園は四年制で1学年5クラスと決まっている。つまりは1つの学年で250人。全体で1000。そのうち、貴族の生徒は4割程。そう考えると被害はかなり大きいなぁ。
「……では、これまでに特に大きな問題は何かありましたか?」
「そうですね……。貴族と平民と言う肩書きの小さないざこざが殆どで……。後は騎士学校という事もあり決闘で負傷したり等ですな」
「思ったより問題は起きてないんですね。私はもっと酷い状況を想像してました」
「サラの言いたいこともわかるけど、最高峰の学園だし、力の差がきっと大きくないのが原因じゃないかな。貴族でも平民でも、あそこは実力至上主義だから」
そう言うとサラは納得したように頷く。
「アカネ君の言う通り。力の差がそこまで大きくないのです。成績上位者はまだ洗脳されていませんし、教師達はAランク以上の冒険者やそれに相当する実力者ばかりですので」
そこまで話してリーズが外を見ながら呟く。
「制服姿の人が多くなってきたわね」
「それほど遠くないから。馬車なら10分もあれば着くよ」
「では、少し学園の施設について話しましょうか」
そういえば資料には施設の内容はなかったから皆は分からないのか。
「お願いします」
「我が学園は他国の留学生や地方からの生徒が多く、1つにつき100名が泊まれる寮が9個敷地内に併設されています。校舎ですが一学年事に1つあり、その他の研究室、闘技場、魔法練習場などの施設がそれぞれあります」
「つまり、学校が4つ集まった感じ……。なのね……」
「僕、迷子になりそうなんだけど……」
「わ、私も心配です……。事務官にくっついておきます……」
3人が青ざめている。
「あれ、でもそういえば決闘って言ってましたけど他の学年とはしてないんですか?」
「決闘は手続きさえ行えば、2000人が入ることが出来る全学年共通施設の闘技場の1つで行うことができます。ですが生徒会が不穏な動きを察知して同学年意外との決闘を認めていないので他学年との決闘は今の所ありません」
なるほど。どうやら生徒会が上手く機能しているようだ。総合成績上位者20名による生徒会は教頭の次に発言権を有する組織であるため、教師が洗脳に掛かってもしっかりと機能する。
それに、4年生の上位3名。この3人は未来の団長候補として設定した為、ステータスも高いしカリスマ性もある。生徒会が上手くいかないはずがない。
「どうやら着いたようですね。外をご覧下さい。これ我が校の敷地内です」
ラルがそう言い、俺達は外を見る。
大きな門を潜り、敷地内に入った瞬間、謎の違和感が俺を襲った。
《『魔力操作』が発動します。罠魔法を検出しました》
レベルアップやスキルが増えた時と同様に脳内に響くアナウンス。
これは魔力操作のレベルが4になったと同時に手に入れた技のようなもの。ここまでレベルが上がると体外の魔力を感知できるようになり始めるので魔法の罠なら見えなくとも感知することが出来るのだ。
「ちょっと馬車を止めてもらっていいですか」
「どうしたんですか? 事務官、難しい顔してますけど」
「門に魔法が仕掛けられる。多分効果は依頼の件と絡んでくる物だと思う」
「門……。成程、貴族で寮に泊まる者はあまり居ません。朝、登校する時は必ず門を通りますから、そこで洗脳してしまおうと言う作戦だったと……。いやはや、私よりも高度な魔力操作とは流石、騎士団と言った所でしょうか」
「自慢の事務官ですっ!」
「サラにもこうなってもらうから、地獄の訓練をする予定だけどそれは今は置いておいて……」
「事務官待って欲しいです! 私まだ死にたくない!!」
凹みすらしないサラを茶化す。
ラルと俺の考えは同じだ。接触もしないから足もつかないし、高度の魔力操作を持たなければまず気づくことは無い陰湿なやり方。
とりあえず解除しよう。
「そうだ、罠の解除をリーズに教えておこう。着いてきて」
「わかったわ」
「私も行きましょう」
「と言うか皆行く流れだよな。これ」
「ですね〜」
という事で皆が着いてきて、門の前へ行く。ラルが警備兵に罠の事を伝え、入ってくる馬車を止めている間に解除を始める。
「『マジックキャンセル』」
そう言うと隠れていた魔法陣が浮かび上がり、皿が割れるような音と共に粉々に砕ける。
「これは冒険者も使う事が多い魔法で覚えておくのに損は無いよ。魔力の消費も少ないからアレイでも覚えられるから帰ったら練習ね」
「うっ……。魔法の練習は頭使うから苦手なんだよなぁ……」
そんな俺達の様子を周りの生徒達がチラチラと見ている。
おっと。封鎖してるから通れないんだっけ……。
「ラルさん! 解除したんで大丈夫ですよ〜」
俺の声を聞いて生徒や馬車を引く御者達に指示を出し、中へ入れる。
その内の1つの馬車が列を外れ、俺達が乗ってきた馬車の近くに止まると、中から執事といかにも貴族と言う見た目の男が出てくる。
綺麗なショートの金髪が日に当たり、少しライトグリーンに見えるちょっと変わった毛質。長身でイケメン。
確かこの人は……。生徒会長だった気が……。
うん。そうそう。生徒会長はやっぱりイケメンだろう! と勝手な妄想で設定した気がする。
「英雄騎士団の皆様。初めまして、生徒会長を務めておりますアルフォンス・レガーノと申します」
手を胸に当てながらお辞儀をする。一般的な貴族の挨拶だ。
「おはよう。アルフォンス君。どうかしたのかね?」
ラルが戻ってきて、アルフォンスにそう聞く。
「噂の勇者様とこんなに早く出会えるとは思っていなかったので、つい馬車を降りて挨拶に来てしまいました。色々と話をしたい所ですが生徒会長なので仕事が少々ありまして……。私はここで失礼します」
「後で生徒会室に行く予定なのでその時に話をしたらいいでしょう。今日は顔合わせのようなものです。時間はたっぷりありますから」
「それは、生徒会室を片付けておかないといけませんね。楽しみにしています」
アルフォンスはそう返す。
なんだろう。自分で文章を考えたり、文字で見ていても何も思わないけれど、実際に前で話されると貴族の会話だ……と。聞き入ってしまう。
アルフォンスの馬車は走り出し、闘技場へと向かう。
週1の全校集会は闘技場で行われるため、俺達も馬車に乗り込み、そこへ向かう。
校長、教頭が話を終え、俺達の紹介をして集会はすぐに終了した。
集会が終わると、校長、教頭に案内され、生徒会室へ向かった。
部屋に入ると生徒が5人がソファーに座っていた。5人が立ち上がり礼をしようとするのを校長が止めて話し始める。
「待たせてしまったね」
「いえいえ。それで何のお話でしょうか?」
校長の言葉にアルフォンスが答える。
俺達6人はアルフォンス達、生徒会の対面にあるソファーに座り、話を始める。
「まずは自己紹介だろう。わしはアイゼン・クロス・アルベート。校長だ。今回は依頼を受けて貰ってありがたく思う」
生徒会の方に目で合図をして、それに気づいたソファーの端に座っているアルフォンスが咳払いをして生徒会の自己紹介を始める。
「では改めまして、私が生徒会長のアルフォンス・レガーノです。隣が生徒会副会長クリスです」
丸眼鏡をかけたボブカットの男。女に見えなくもないが、まだ男と認識できる。
「残りの3人は全員寮長です。私に近い方からカイガス。ルピア・ランネス。フォリア」
学園の寮長は全員、生徒会に所属している。その内の3人かな。
「うむ。では、私から話を始めましょう。内容は騎士団の皆様に講師して頂く授業とクラスの確認です」
ラルが話を始める。寮長達は呼ばれた意味が少し分かったのか先程までのソワソワした感じが少し落ち着く。
「皆様に担当して頂くのは実技授業で、アレイ君とリーズ君が武術や剣技。アカネ君とサラ君は魔術や戦術等を全学年3クラスずつ教えて頂きます」
「3クラス? 確かアカネは5クラスって言ってなかった?」
アレイがそう聞く。
「それは、クラスは成績順になっていまして、1組が一番高く、一番下は5組です。3クラスというのは、この中の1組、2組、5組の事です。トップ2クラスは日々のご褒美として、5組は軽いムチの様な意味合いで騎士団との実技授業が行われます」
「ご褒美……」
ラルの言葉に少し照れるアレイとサラ。
そんな2人を無視して、リーズは普段通りで質問を返す。
「ええっと……。そうなると授業をしている間に誰かが捜査……。ということですか?」
「いえ、申し訳ないですが、授業は4人でお願いします」
「という事は……まさか……」
3人の顔が徐々に引き攣っていく。
「寝ずに夜の調査。もしくはそれ以外の時間を使うってことだね。魔法の訓練より簡単だから3人とも大丈夫だよ」
「アカネは簡単に言うよなぁ……」
どっちにしろ、この3人には称号の『徹夜慣れ』を取ってもらう予定だし丁度いい。寝ずに3日程活動すれば簡単に取れるからね。
とは言え、ちゃんと休まないといけないし、ローテーションを決めないと。
「では、夜にも活動できるように他の寮長達にも生徒会長の私から伝えておきましょう。……では、そろそろ皆さんのお話が聞きたいのですが……」
「相変わらず騎士団が好きなようだな。わしの若い頃を見てる気分になるわい」
アイゼンが笑いながら言う。
アルフォンスの騎士団好きは中々のもので、アレイとの話に花が咲きまくる。俺達はそんな2人を置いておき、ゆったりと校長達と話を進めた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
学園から帰り、就寝前。ステータスを眺めながら授業について考える。
学園側からは特に要望はないし、こちらが決めるようなので少々迷っている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アカネ Lv.12
体力:340 魔力:475
力:85
防御:75
俊敏:46
SP:15
・スキル
魔道士Lv1、魔力操作Lv4、生活魔法効率化Lv3
・称号
五重、魔道士、全属性使い、徹夜慣れ、努力者、創造者
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔力は相変わらず高いけど、それ以外が平均かそれ以下。
立場上、団員達のステータスは把握している。サラのステータスはウチの入団から変わりがなければ……。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
サラ Lv.44
体力:985 魔力:721
力:157
防御:147
俊敏:251
SP:6
・スキル
生活魔法効率化Lv.1、魔力操作Lv.2、精神苦痛耐性Lv.4、中級魔法使いLv.2、観察眼Lv.6、読心術Lv.5、速読Lv.4、並列思考Lv.3、高速暗記Lv.3
・称号
二重、中級魔法使い、商人、気品、努力者、水、風属性使い、聖属性使い
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
俺達と比べるとかなり強い。けれど、騎士団全体で見るとそれ程でもない。騎士団はこの国の最高レベルの戦闘集団であり、そこらの兵隊とは訳が違うからね。
……それにしてもこのスキル構成。サラの過去と色々と関係があるんだけど……。それは今片付けられないから置いておこう。
団員の過去や未来を知っているとどうにもそっちにばかり気を取られてしまう……。変に察されないようにしないとなぁ。
……うぅん。なんだか授業内容を考える気分じゃなくなってしまった。生徒の実力を見てサラと決めるとしようかな。
翌日。俺達は集会をしていた闘技場にいた。
今日の生徒達は4年生の1、2組だ。
「あぁ……。アカネェ……。胃がキリキリするん……」
「いつもの馬鹿みたいなやる気はどこいったの……」
「だって講師って何したらいいかわかんないし!? アカネ教えてくんないし!」
「あはは……。やってみれば何したらいいかわかるよ。多分」
アレイが緊張で震えてるのを見ながら暇を潰していると生徒達がゾロゾロと闘技場に入ってくる。
先導しているのは教師2人と生徒会長のアルフォンス。
「おはようございます騎士団の皆様。私は1組の担任教師のネルと申します」
「俺は2組の担任教師で、タリスマンだ。俺達2人はあんたらの補佐をすることになっている。なにか手伝うことがあったら遠慮なく言ってくれ」
ネルはおっとりとした感じで、セミロング内巻きの女性。
タリスマンは少し長い髪を後ろで束ねた男で、引退した冒険者の様な感じだ。
「おはようございます。昨日ぶりです。今日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくお願いします。それではまずは魔法か武技かに別れてもらおうかと……」
3人と簡単な流れを話していると生徒から気になる声が聞こえた。
「はっ……。レベル10の雑魚だろ……」
「そうよね低レベルで私達貴族に勝てると思ってるのかしら」
「平民の分際で騎士団に入団など……」
パッと見で半数位からそんな声が聞こえる。
そう言えば騎士団内の一部の貴族も少し面白くなさそうな顔してたなぁ。
「では、貴様らは実際に戦ってみればいい。我等は騎士学校の生徒に過ぎない。それが分からないのなら実際に騎士団員、騎士団長がどの程度なのかその身をもって知ればいい」
急に振り返り、アルフォンスがそう言い放った。
そして、生徒会の皆も口を揃えて挑発を始める。
「い、いや……急に何を」
「彼等は恐らく、弱い洗脳を受けている者達です。弱い洗脳ならば軽いショック等で戻ることもあると聞きます。ここは解放されていて、観客席にいる者の中に犯人がいるかも知れないので、決闘と言う形を取らせて頂きました。申し訳ありません」
アルフォンスが小声でコソッと伝えてくる。
……そうは言っても、相手は平均レベル20〜30程の集団。
叩いて治す戦法は余裕で勝てるという状況でないと難しいし治るとは限らない。
……と心で反論しても、観客席には教師や生徒などがそこそこの人数いて、犯人がいるかも? という考えには賛成だ。これじゃ面と向かって洗脳を解除できないし……。はぁ……。俺にもう少し魔力があったら別の方法がーー
《魔法連続使用時間が一定ラインを越えました。称号『魔の記憶』を獲得しました》
「ふっ……。ふふふ……」
「……ア、アカネ? 急に笑いだしてどうしたの……?」
「い、いや。大丈夫。何でもないよ」
遂に。遂に獲得した……! 魔法を連続で使い続けて数週間。魔法系の称号において最強格の称号。これを持つだけで力、防御が10減り、代わりに魔力が200上昇する。これで俺の魔力は675となる。
「分かりました。この決闘で何とかしましょう。アレイ、リーズ。準備しようか。サラさんは……。見守りでお願い。俺達が原因みたいなもんだから」
「了解です!」
「ありがとうございます」
いい返事を返すサラとは真逆に2人は露骨に嫌な顔をする。
「初手で動きを止めるから後はアレイに任せるよ」
「「……は?」」
俺達が話している間に決闘する人達は俺達の前に集まり、こちらを睨んでくる。
《それではこれより、学生23名VS英雄騎士団員3名の決闘を始める。怪我をしても高速回復する範囲魔法を発動させているので安心して欲しい》
アルフォンスが拡声器の魔道具を使いながら離れた所でそう言った。
「アレイ。すぐに突っ込まないで少し待っていてくれる?」
「ん? 分かった!」
「……はぁ。なんかすっごい嫌な予感がするわ……」
《それでは……。双方用意》
アルフォンスの言葉で向こうは件を抜刀したり、弓を引いたりと用意を始める。
俺も魔力を練る。
《始めッ!》
『うおぉぉぉぉ!』
開始の合図とともに、矢、魔法が打たれ、前衛も突っ込んでくる。
少し深呼吸をして……。
「五重。エアシールド。アースバインド」
前方と頭上に空気の盾を2つ作り、土を操り、生徒達を拘束する。
観客席からもざわめく声が聞こえる。
”かなり派手に見えるように”したが、上手くいったようだ。
実は今の魔法達は五重ではなく六重で、もう1つの魔法はアレイの剣への解呪の付呪だ。
そちらに目を向けさせない為にこれだけ派手に魔法を放った訳だ。
「アレイ! 全員に勇者からのお灸をすえてやれ〜!」
「おっしゃァァ!」
アレイは鞘のついた状態で1人につき一撃ずつ入れていく。
叩かれた生徒の数人が激昴状態から段々と落ち着いていき、正気を取り戻していくのが見ていてわかった。
こう眺めていると洗脳にかかっていたのは10名位かな。もう半分は素直に疑っていたんだろう。
「私の出番は皆無ね……」
「あー。……うん。そうだね」
俺とリーズはアレイが次々生徒を小突いていくと言う少々問題のある状況を眺めながらそう呟いた。
『申し訳ありませんでした……』
決闘が終わり、怪我をしている生徒が居ないかを確認し終わると先程戦闘に参加していた生徒が俺達の前で土下座をしながらそう言った。
「レベルが低いのはその通りだし、疑うのはいいけど、攻撃的になったりしない事。それがわかったら時間が惜しいから講義を始めないかな? 俺の横にいる勇者なんてさっきの戦闘で体を動かしたせいで、もっと動かしたいなんて言ってるんだ」
少しだけ笑いが起きて、全員が立ち上がり、元気よく敬礼をしながら「はいっ!」と言った。
「よし。それでは、魔法を学びたいものはアカネ殿とサラ殿の元へ。剣術、武術等を学びたい者はアレイ殿とリーズ殿の元へ集まる様に!」
落ち着いた生徒達をタリスマンが2つのグループに分けていく。
やっと授業か。少し魔力を使いすぎた気もするけどまぁ、大丈夫かな。
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