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朱の世界  作者: 色音れい
プロローグ
7/10

第6話◆国民達に発表を◇


 試験の翌日。俺はリーズに集まる様にと言われ、泊まっている宿で待っている。

 例の宿に泊まり、朝食を終え、魔法の訓練をする。そうしながら時間を潰し、待っているとドアをノックされる。

 開けるとそこには少しムスッとしたイリスが立っていた。


「イリスどうしたの?」

「アカネさんにお客さんですよ」

「あぁ、リーズか。イリスも案内ありがとう」

「ふんっ。別に〜!」


 ムスッとした表情は変わらず、頬を膨らませたまま受付に戻っていく。


「あはは……。何か勘違いされちゃったわね。まぁ、とりあえず中に入らせて貰うわ」

「どうぞ〜。そういえばアレイは?」

「あのバカが来たって話がごちゃごちゃするでしょ? 今日はアカネに会うってだけ伝えて皆の所に置いてきたわ」


 ため息混じりにリーズはそう答える。


「ははっ……。それで、何が聞きたい?」

「そうね……。色々あるけどまずは、初めて会った時。森の奥地出身って言ってたけど嘘よね?」

「そうだね。俺は森の奥地出身じゃない。だけど、知りたいだろうけど本当の出身は言えない」

「そう……。じゃあ、何でこんなにこの国……。いや、全部のことに詳しいの?」


 疑うような目。疑いたくなる気持ちも分かる。だけど……。


「それも詳しくは話せない。ただ、そこら辺にいる情報屋なんかよりも情報には強いと思う」

「そう……。じゃあ、今問いただしても私も覚えきれないからこれで最後にするわ。……信用していいのよね?」


 願う様に言われた言葉に俺も誠意を持って返す。


「もちろん。裏切ったりしないよ」

「はぁ……。わかったわ。正直私は今の状況についていけてないのよ。アカネと会ってから『姫巫女』って呼ばれたり、アレイは『勇者』になっちゃうし、騎士団になるどころか設立まで……」



 少し俯きながらそう呟いている。

 リーズの性格は予想以上に強くないみたいだ。アレイの幼馴染として一緒に生活。成長してきて、元気な性格。

 だが、実際はしっかりと乙女としての心の弱さも持っている。

 アレイだけならこの環境の変化も特訓をしてストレスを発散できるが彼女はそうもいかない。自分的に数日という単位で時間をかけたと思っても彼女の感覚では早すぎたようだ。これからは気を付けよう。


「これからはゆっくりと進めて行こうと思うよ」

「うん……。でも、アカネ1人で進めるんじゃなくて私達にも相談して。これからきっと団員も増えるんだから」

「そう……だね。できるだけそうするよ」

「さてと。じゃあ嘘をついていたお詫びにご飯でも奢ってもらおうかしら?」

「ちゃっかりしてるなぁ……。いいよ。この宿のご飯は美味しいからお昼はここでどう?」

「じゃあそうしようかしら! さっきの子にも話しておかなきゃだし……」


 最後の方はよく聞こえなかったけどご飯はここでいいみたいだ。

 2人で下に降りて3人分の昼食代金を払う。ちなみに今日は少し高い昼食だ。

 代金を受けるのは旦那さんだ。ここではウエイトレスと雑用は娘のイリスと旦那。料理が奥さんという分担となっている。



「……と言うか何で3人分?」

「あの子……。えぇっと……」

「イリスの事?」

「そう! イリスちゃん。どうせ奢ってあげてないんでしょ? たまにはいいじゃない」

「まぁ、別に俺はいいんだけど」


 席に座り、食事を待っているとイリスが寄ってくる。


「アカネさんが私に奢ってくれるなんてどんな風の吹き回し〜? それとえっと……」

「私はリーズ。アカネとは職場の同僚? みたいなものよ」


 リーズも公表してはいけない事とわかっているので伏せてくれる。


「そ、そうなんですね〜!」

「敬語はいいわよ。私の方が多分年下だし」

「分かったわ。よろしく! 私はイリス。ここの娘で掃除したり色々してるの」


 なるほど……。俺とイリスをそういう関係と間違って食事代を払わせたのか……。

 付き合ってもないんだけど。


「それにしてもいい匂い……」

「今日の上物メニューはブラックチキンって鳥のお肉と少し高めの野菜がいっぱい使ってあるから美味しいよ〜」

「アカネ。ブラックチキンって?」

「Bランク指定の魔獣で、森からは滅多に出てこないんだ。卵も誰も見つけたことがなくて、例え見つけたとしても視界に動く物を攻撃するっていう習性があるから養殖も厳しいって言われてる。だから高級食材なんだ」

「ほんっと知識は底なしね……」


 あっ、やべ。

 反射的に説明してしまった……。まぁ、イリスはそこまで気にしていないからいいか……。

 リーズとイリスが喋っている所を眺めて数分。旦那さんが料理を運んでくる。

 今日のメニューはチキンの香草包み、後はスープや漬物、パン等だ。

 この香草包みは味としてはカレーに近いだろうか。スパイシーで鳥とよく合っている。


「驚いたわ……。王都1番って言われても納得いくわ」


 いや、リーズさん。ここ王都1番ですよ。


「えへへ、褒められるのは嬉しいね〜。作ってるのはお母さんだけど」


 そんな2人を微笑ましそうに見つめる旦那さん。……話を近くで聞いてた俺もあんな感じだったんだろうか……。顔は自分でも分からないからな。気をつけよう……。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 試験から3日後。つまり、騎士団お披露目の日だ。

 国民達には3日前から張り紙等で大事な話があると呼びかけていて、城前や大広場には人がごった返している。

 俺達はと言うと、人混みで動けなくなるのを予想して前日には城内に移動して泊めさせてもらっていた。


「うわぁ……。凄い人の数……」

「俺らが団長に任命される時もこんな感じで集まったな。国民達はよく集まってくれるもんだ」


 アレイが城内にいるのに外の様子が分かるのは『ライブモニター』と言う魔法のお陰だ。今、王国内にある人が集まれる場所と城内の一室を繋ぎその映像をリアルタイムで流している。

 簡単に言えばテレビ通話かな。今日の発表はこれを通してすることになる。

 そして、今は騎士団長2人と話しながら正装中だ。この2人は急に来たから、リーズの方にはローズマリアとクリルメタが邪魔していることだろう……。


「しかし、この魔法。持続しているのはキツくないか?」

「この『ビュー』は見るだけの魔法ですし、画面も本より小さいですから。分間回復で充分補える範囲なんで気にしないでも大丈夫ですよ」


 そう、さっきからアレイがうるさいのは俺の魔法を王都内の各地に飛ばしてその映像を見ているからだ。


「こう見ていると敵等の偵察にかなり有効だ……。うちの誰かに覚えさせようか迷ってしまうな」

「魔力さえあれば覚えるのは割と簡単なんで時間があれば、数人に教えますよ」

「ならば、選んでおこう。助かる」


 話しながらだが、着替えもしっかり済ませた。国王がなんと服やポーチまで作ってくれたのだ。俺は紺のズボンにベルトの着いたマジックポーチ、その上から団の証である黒に近い深緑色のマントを羽織る。

 アレイは紺のズボンに動きやすいように、肘辺りまでの少し短いマント、腰にはしっかりと剣を携えている。

 どこからどう見ても育ちのいいイケメン剣士だ。


「さて、着替えも終わった事だし謁見の間へ向かおうじゃないか」

「は、はい!」

「アレイ……。固くなりすぎだって……」



 部屋を出て謁見の間へ向かう途中でリーズとも出会った。思った通り、ローズマリア達2人が邪魔をしに行っていた様だ。

 服はワンビースに長めのマント。とシンプルだ。


「リーズ……。似合ってるよ」

「アレイこそ……」

「……アレイ。演説するのに惚気けてるって事は内容は覚えたんだろうね。すごーい」

「えっ!? あっ! なんて言うんだっけ!?」


 全く……。今回ばかりは助けてやらない事にしよう。


 部屋の前に着き、兵士に話しかけられる。

 

「皆様お疲れ様です。ただ今、国王様が国民に向けて内容を話している所です。出番が来たら合図がありますので、そうしましたら、アレイ様を中心に一歩下がってリーズ様とアカネ様。その後ろに団長様4人が歩いて行ってください」

「僕が中心……。い、1番前……!?」


 団長なんだし当たり前だろう。しかし、大量の人に見られているとはいえ、魔法越しならそこまで緊張はしないものだ。俺もそこまで人に見られることは得意じゃないからとても有難い。アレイは緊張しているみたいだけど。

 慌てふためくアレイをみて面白がっていると扉の向こうにいた兵士の一人が扉を少し開けて合図をして来る。


「では、お願いします」

『はい』


 2人の兵士が扉を大きく開け、最初に国王が。そして、これから歩くレッドカーペット、横に並ぶ国の重要人物達と言う流れで目に入る。

 横に並ぶ者達の俺達を見定めるような視線や素直に賞賛を送るような視線が混ざり合い、とてつもない違和感と圧力だ。

 そんな中ガチガチに固まっているアレイの背中を少し押して、歩かせる。

 そして、国王の目の前まで来て、俺とリーズがアレイの横に並んで膝をつく。

 ちらっと後ろを見たが、団長4人組はの横の列に混ざったようだ。


「国民達よ。この者達は新たにこの国の守護神となる者達だ。先程話した重要な話とは新騎士団設立なのだ! 団長から順に名乗るがいい!」


 謁見の間を写していたレンズの1つがアレイの前に来る。


「はいっ!! 僕が英雄騎士団団長の勇者アレイです! まだまだ生まれたての勇者ですが鍛錬を重ねて皆様のお役に立てるようになります!」


 台本通りの自己紹介を終えるとレンズはリーズの前へ移動する。


「国民の皆様。初めまして英雄騎士団副団長の姫巫女リーズです。どうぞよろしくお願いします」


 そう言い終わるとお辞儀する。

 リーズも台本とほぼ同じ。あんまり表に出てないけど緊張してるみたいだ。

 レンズは俺の前に来る。ここで不思議な事が1つ。俺だけ台本渡されてないんだよね。なんでだろうか。


「国民の皆様初めまして、英雄騎士団で主に事務を担当しますアカネと申します。勇者と姫巫女の2人に挟まれて仕事をするのは少しばかり緊張しますが完璧に近い状態でこなすことを約束致します」


 国王をちらっと見ると何やらニヤニヤしている。やっぱりなにかしてたんだ……。

 俺の横2人は持ち上げられたのが恥ずかしかったのか耳が赤くなっている。


「うむ。この3人に加え、他の騎士団から3名が英雄騎士団に入ることとなっている。国民達よ。新たな騎士団達を拍手で祝福して欲しい」


 その言葉の後に外から拍手の音が聞こえる。

 広場は幾つもあるとはいえ、結構遠い。その拍手の音がここまで聞こえるということは、ほとんどの人が拍手をしてくれているということになる。そう思うと少しばかり恥ずかしくなってくる。

 レンズが消えて映し出されていた画像も消える。


「さて、式は終わった。皆の者ご苦労だった。3人はこれからクリルメタの所へ行くが良い。騎士団本部の件で話があるそうだ」


 予定では後2日あったはずだけどなんの用だろうか。

 兎にも角にもそういう事なので、謁見の間を出て3人でクリルメタのところへ向かう。

 すると俺達の顔を見てすぐに、「せっかくだし、あそこでしよう!」などと移動を始めた。それに黙って着いていく。城から徒歩10分。すぐ近くには貴族街が広がる場所で本部予定地。……いや、予定地だった場所。に着いた。


「……立派な屋敷だなぁ」

「きょ、今日からここが家……!?」

「私だけで掃除できる自信ないわ……」


 周りは頑丈な塀で囲まれ、入口には大きな門。その奥には綺麗な藍色の屋根と白い壁出てきた3階建ての屋敷がたっていた。


「いいねいいね! その反応!」

「……でも確か5日かかるって……?」

「うんうん。だから家具の事聞こうと思って呼んだんだよ〜」

「「あ〜なるほど……」」


 俺とリーズがハモる。

 屋敷が3日で完成。内装に2日……か。ほんと仕事早すぎでしょうこの人。


「は、入っていいですか!? クリルメタ団長!?」


 アレイは大好物のお菓子が目の前にある犬のような目でクリルメタに聞く。


「う、うん。案内するからついてきて! それともうアレイ君は私と同格なんだから呼び捨てでも大丈夫だよ〜」

「は、はい!」


 案内されたのはもちろん玄関からで、入ると広いエントランスが広がり、ここに何か美術品を置くのがいいらしい。正面には2階、3階へと上がる螺旋階段が2つ。

 その螺旋階段を上がり、3階へまず連れていかれる。


「まずは3階! この階の部屋は8部屋。全部団員達の個室にしようと思ってるんだ〜。さっ、入ってみて!」


 そう言われて入ってみると、家具を置いてない為なのかすごく広く見える。

 10畳……。いやそれ以上?


「すごい広いわね……。2人でも大丈夫そう……」

「よくお気づきでリーズちゃん! ほら、アレイ君とリーズちゃんはカップルだから2人で寝れるダブルベットを置いても狭くならないようにって”全室”この設計にしたんだ!」

「べ、別々よ! 部屋は絶対!! 別々!! 分かったわねアレイ!」

「は、はい!」


 にしても全室こうなっているんだ。確かに王女がうちに入ることになったらここに住むことになるし広い方がいい。

 家具がないから広すぎる気もするが、置けば丁度よくなる感じかな。


「次は2階! 2階は全部で3部屋だよ〜。まだ家具が無いからどれも想像つかないかもだけど、左奥から2つは応接室。3つ目が厨房と食堂! この3つ目はアカネ君の頼み事だったね」

「厨房と食卓も気になるけど、なんで応接室が2つも?」

「そうそう。僕も2つもいらない感じがしたんだけど」


 2人がそう聞いてくる。


「まぁ、確かに俺達平民からしたら1つで足りると思うかもしれないけど、騎士団は時々貴族も相手しなきゃならないんだ。そうするとたまにダブルブッキングする場合があって、片方待たせるとめんどくさい事になるんだ」

「だ、ダブルブッ……なんだって??」


 目をぱちくりさせながらアレイが聞いてくる。


「簡単に言うと、先に話してる人がいるんだけど、もう1人が急に来ちゃう事だよ。そうなるともう1人を待たせちゃうでしょ? そうなると貴族は怒り出したり、俺らの敵にもなりかねないんだよ……」

「……面倒ね。それで2部屋ってわけね」

「あはは……。確かにあたし達団長4人相手でもたまにいるのよ〜。特に! 太って無駄に宝石を身につけてる奴には注意よ!」


 あはは……。めっちゃテンプレだなぁ……。確かに何人かいるけど……。


「はは……。説明はいいかな? じゃあ俺、厨房を見たいんだけど」

「私も見たいわ」


 厨房兼食堂に入る。部屋の形としてはダイニングキッチンの様な感じを頼んでその通りとなっている。


「じゃあ少し先に説明するね! ここの石は熱に耐性がある石を使用してるの! ここの平らな場所には火を灯す魔術式を2つ付与するつもり」


 コンロが2つか。


「それでその横の四角に凹んだ場所。そこはアカネくんに言われた通りに排水管を通して地中を通して裏にある小川に繋げてあるよ!」


 俺の頼みでかなり現代チックになっているが、さすがクリルメタ。しっかりと形にしている。意外と出来るものだな。


「うんうん! 思い描いていた物とだいぶ近い。蛇口は後付け?」

「まだ宝石に水付与が終わってないから後付けだよ〜」

「となると……。この後ろの壁の四角い凹は、オーブンが2つかな?」

「一緒に設計したからアカネ君にはバレバレだね〜」

「オーブン?」

「アカネ君は面白いことを考えるよね〜。中の壁に熱魔法を付与して魔力の加減で熱の調整をして物を焼いたり、温めたりするんだって!

まぁ、それだと苦手な人もいるから魔法式と普通のピザ窯も作ったよ〜」


 この2つでピザ窯、オーブン、レンジの役割をする事になるので俺はこの提案を受け入れた。

 魔力を操る練習にもなると思って魔法オーブンだけにしようと思ったけど、それだけにしてご飯が作れなかったら困るもんね。


「あ、そうそう。うちの職人がここは作りがいがある!って張り切っててお礼に最高品質のまな板と包丁をプレゼントしたいって言ってるけどいる?」

「えぇ!?」

「アカネ何驚いてるの?」

「いや、だって王立工房印の包丁は最高級品でそこらの剣よりも切れるんだ……。ふ、普通に買えば白金貨5枚はくだらない代物だよ」


 それを聞いた。アレイとリーズは開いた口が塞がらない。

 後々欲しいとは思ってたけどまさかこんなに早く貰えるなんて思っていなかった……。貴族ですら数ヶ月待ちの代物をくれるとは……。


「それでどうする〜?」

「も、もちろん貰えるなら欲しいです……」

「じゃあそう伝えとくね!」


 俺達は包丁の驚きが消えないまま1階へと案内される。


「玄関から入って右側はリビング。左側は倉庫かな。ちゃんと食材を保管できるように冷蔵室を作っておいたよ!」


 両方とも寝室4つ分なのでかなり広い。が、家具を置いていないので外へ向かう。


「アカネ? 外に何かあるの?」

「なんというか……。アレイが喜ぶ物とだけ」

「僕?」


 屋敷の裏手に回ると開けた土地が広がっている。そこには白い白線で四角い模様が描かれた場所がある。


「あの白い枠内はね簡易コロシアムって言って、あの中にいれば、防音、防振だから外への攻撃は無効化になるの! だから、訓練はあの中でね!」

「おぉ!! 」

「近くは貴族街だし音とか振動とかで文句を言われても嫌だから頼んだんだ。そうじゃないと魔法の訓練をする時は国を出て草原の方まで行かなきゃいけなくなるからね」

「ほんと貴族って色んな事に文句つけるのね……」


 ごめんね……。そんな貴族達にしちゃって……。


「さっ! 君達の本部はまずこんな感じ!どうかな?」

「いい! 凄くいい! 部屋は広くて食堂も綺麗で訓練場も!」

「ここの掃除はやっぱり少人数じゃきつい気がするんだけど……。そこが心配ね」

「それは心配ないよ。直ぐに国王がメイドを3名送ってくれるらしいから掃除とかは任せていいって」

「それはそれで、申し訳なくなるから手伝わなきゃね」


 俺達はその後、城へ帰りながらクリルメタへの家具の注文を大量発注したのだった。



 城でクリルメタと別れ、時刻はもう夕方になっていた。


「さてと。俺はこれから夕飯を食べに行くけど2人はどうする?」

「あら〜。またあの子のとこかしら? 贔屓にしてるのね〜」


 リーズがにやにやしながら言ってくる。

 ……贔屓にしてるも何もあそこに泊まってるし……。


「折角だし私達もついて行くわ!」

「え? え? 夕飯だよな?」


 若干1名ノリに乗り切れてないが、行くとしようか……。


 だらだらーっと歩きながら宿に着く。


「【妖精小屋】……?」

「ここはアカネが泊まってる宿なのよ。ここのご飯が美味しくって……!」

「僕に隠れて美味しいご飯だと……!?」


 リーズとアレイが目をキラキラさせている所を苦笑いしながら扉を開くと、勢いよく肩を鷲掴みされ、前後に揺さぶられる。


「ア、カ、ネ、さ、ん!! 新騎士団ってなんなんですか!? リーズさんが姫巫女様ってなんで言ってくれなかったんですか!? ってかアカネさんもエリート中のエリートじゃないですか!! どういう事ですかァァァァッ!」

「ちょ、ちょっと落ち着いて……」


 掴みかかってきたのはイリス。色々と処理しきれていないのか目が血走っている。単純に怖い……。


「こらイリス!! アカネさんに迷惑だろうに!」

「……はっ! ご、ごめんなさい……。私ったら何が何だかわかんなくなっちゃってつい……」


 奥さんから軽く怒鳴られて正気に戻るイリス。

 恥ずかしかったのか耳まで赤くしながら謝ってくる。


「あはは……。大丈夫だよ。それよりも今日はご飯3人分頼みたいんだいい? それとイリスもどう? まぁ……。さっき聞かれたことも少しなら話したいし」

「う、うん、分かった。えっと……じゃあ席は端っこのあそこがいいかな」

「じゃあ、先座って待ってるね」


 イリスは奥さんのいる厨房へ戻っていく。

 俺達は旦那さんにお金を払いに行く。


「いやぁ……。にしても朝は驚いたよ。ずっとここに居てくれてる君が騎士団だったとは……」

「内緒にしててすみません……」

「いやいや! そう簡単に言えるような事でもない! それにこれからもご贔屓してくれるなら文句なんてないさ!」


 大きく笑いながら旦那さんは答えてくれる。

 うん。まじでいい人。

 払い終わり、イリスに言われた端の席へと行く。

 やっぱり夕飯には少し早い時間だが、ほぼ満席に人がいる。その人達がどこを見るかと言えば……。言わなくても分かるけど、全てここに集まる。


「……。アカネ……。すごい視線を感じるんだけど……」

「……私も」

「まぁ、騎士団だし、勇者だし、姫巫女だし? 流石にこればかりは慣れるしかないよ」


 2人ともソワソワが止まらない。

 その環境に耐える事数分。イリスが料理を持ってくる。


「お待たせ〜。今日はタイガーバニーのフルコースだよ〜」

「……ん? タイガーバニーは確か高級品の方のメニューだったと思うけど……」

「えへへ〜私達からちょっとしたお祝い!」


 3人で少し照れてしまう。やはり、素直に祝われると少し照れる。

 周りの冒険者と思われる人達からも「頑張ってくれよ!」、「今度手合わせしようぜ勇者さんよ!」等、声がかかる。

 俺はその光景を見てなんとも言えない気持ちになる。平和だな……。2人の幸せに少し近づいた気がして泣きそうになるが料理の匂いを嗅いで落ち着く。


「……今日も美味しそうだね」

「もっちろん! それで……。この前言っていた1ヶ月はここに来れないお仕事って言うのは……」

「そう。あと数日したら俺達ともう1人。ローズマリアさんの所から来る魔導師の人なんだけど……。この4人で国立学校の臨時講師をするんだ」

「……ちょっと。私それ聞いてないわよ……」

「ぼ、僕が国立!? い、いやぁいくらなんでも教えることなんか……」

「まぁ、それしか伝えられないけどね。内緒事が多くて……。2人にはまた詳しく教えるよ」


 国立。と俺の口から出たところでエリスが固まってしまっているが話を続けてみた。フォークに刺したお肉が口まで運べていない。……かわいい。


「へ、へぇ……。国立の……」

「本部ももう少しで出来上がるし、次の仕事が終わったら新団員を募るつもりだよ。さすがに6人じゃ。仕事の限界が見え見えだからね……」


 それを聞いた周りの冒険者が急いで食事を終えて顔をキリッとさせて店を出ていく。

 何をしに行くのかは分かる。どうせ、噂として広めに行くんだろう。いい宣伝の材料だ。その為に鍛えてくれるならこちらとしてもいい人材が手に入る。


「新団員かぁ……。アカネさんはどんな人が欲しいの?」

「んー。あんまりどんな人が欲しいとは言えないけど……。面白い人かな」

「ふふっ。面白い人って強い人じゃないの?」

「そうだそうだ! やっぱり仲間にするなら強い人だよ!」


 アレイが便乗する。


「私は防御力のある人がいいわ。私達って守りが薄い気がするもの」


 確かにリーズの言いたいことは分かる。優秀な盾は後衛の守りを完璧にこなす。

 でも、言ってしまえば今のこの団の状況じゃ誰でも欲しいんだよね。


「まぁ、なんにせよ! 今日来てくれて嬉しいよ! また1ヶ月後会えるの楽しみにしてるねっ!」

「うん。また、ここのご飯を食べに戻ってくるよ」


 難しい話に耐えられなかったのかイリスが無理やり話しを変える。


 その後は皆で美味しく晩御飯を楽しんだ。




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 @D6Pfe ←Twitterアカウントです。


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