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朱の世界  作者: 色音れい
プロローグ
6/10

第5話◆試験の後には食事を◇


 ゴブリン村を1つ潰し、Cランクへと昇格してから約1週間。正直な話……。暇である。

 近くの森の魔獣や害獣を駆除してもいいのだが、そんなに頻繁に依頼は出ない。かと言って、Cランクの駆除や護衛の依頼を受注しようにも少し遠くへ行く必要があり、騎士試験を控えた俺達は受けることが出来ない。

 レルヴィ達にも誘われたが断るしかなかった。

 となると自然と訓練だけとなってしまう。

 アレイとリーズは騎士団本部へ行き、訓練をしている。そしてその流れで仲良くなった人の部屋に泊めてもらい、ずっとあちらで過ごしているらしい。

 いいのか……? と思ったけれど、同じ騎士だし問題は無いのだろう。


 俺はと言うと、魔法をひたすら練習したり、めぼしい人材を探していたのだけど……。成果はゼロ。言っちゃ悪いがまさにモブの集まり。どうしたものか……。1から育てる? いや、それはかなり信頼できる人物じゃないとダメだよなぁ……。


「はぁ……。他になんかやることあったけなぁ……」


 ついつい独り言が口に出る。物書きの悪い癖だ。……早めに治さねば。

 最初は危険と思われるイベントを潰そうかとも考えた。だけど……。他国のスパイや貴族を汚職で捕まえようにも、内政が上手くいかなくなれば別の問題ができるし、第一実力が不十分だ。

 後々に大事になるとわかっている芽を摘み取れないのは歯がゆい。


 仕方ないと割り切り、今日もギルドへと足を運ぶ。

 すると珍しくアレイがいた。



「おっ。アカネおはよう」

「おはよ。やっと試験かな?」

「そう! いよいよだ! って事で皆が呼んでるから行こう!」



 良かった。今日から暇な時間は無くなってくるかもしれない。



 アレイと一緒に騎士団本部へと行き、門をくぐり中に入ると、各騎士団長と宰相が本部の外に仮設された屋根付きの席で話をしていた。

 


「む? 来たようだね。お使いありがとうアレイ君」

「いえ! 全然大丈夫です!」



 敬礼をしながらベルグさんに報告をしているアレイ。新人兵としての行動が身についたようだ。しばらくここにいたからなのか敬語がスムーズになっている気がする。



「ベルグさんお手を煩わせてすみません。それで今日は試験ですか?」

「いやいや。大丈夫だよ。こちらこそ試験の準備に時間がかかってしまってね。申し訳ない。さて、試験の内容を早速紹介しよう」



 試験の内容は軽い筆記試験、魔力測定、技術試験そして戦闘試験だ。


 筆記試験は問題用紙が3枚あり、時間制限は1時間。計算や歴史。貴族などへの対応や簡単な方についてを答えるものだった。


 これは余裕……と言うか間違えたら作者としていけないやつだ。



「ふむふむ……。筆記は問題ないですね。それにしてもアカネ君は本当に頭がよろしいようだ。言葉は悪いが平民でこれだけ答えることができるなら相当頭が切れるのだろうね」



 ベルグがそう言いながら答案用紙を眺める。


 ……若干ズルして褒められてる気分がしなくもないけど……。



「さて。次は私が試験を見るわ。順番に1人づつこの水晶に触ってもらえる? あぁ、アカネ君は最後がいいわ」



 そんなメインディッシュみたいな……。


「じゃあ私から触るわ」


 リーズから触れるようだ。台に置いてある水晶にリーズの手が触れると中心部分が光り、徐々に形を変えていく。


「410……? これって」


 リーズはその数字が自分のとあるものを表していることに気がつきローズマリアの顔を見る。


「お察しの通り、これは魔力の値。この魔道具はその者の魔力を映し出す物なのよ」


 ステータスペーパーがあるのになぜこの方法を取るのか。それは、騎士団の試験を受けるために偽造をして参加する者が稀にいるためである。

 偽造し他人を騙す……。偽造魔法『トリック』。

 この魔法は自分の姿やステータスを人の目には違う様に見せると言う能力を持つ。

 そうやって偽造する人間は信用出来ないしスパイの可能性もある。それでこうして調べているのよとローズマリアが話す。



「……でもそれならなんで魔力だけを……?」

「…………。魔力が全てよ」

「えっ」

「魔力が全てよ!! だから他は別にいいのよ!」


 押し切ったなぁ……。


「それはそうと……。今のレベルは15。この時点で410もの魔力があるなんてさすが姫巫女……と言った所かしら」

「あ、はぁ……。ありがとうございます……?」



 リーズがローズマリアのテンションについて行けず混乱している。他の騎士団員も面白いのかクスクスと笑い声が聞こえる。


「よっしゃ、僕の番だ!」


 自分も知っているステータスを見られるだけなのに何をこんなに張り切っているんだか……。

 先程と同じく数字が浮かび上がる。


「440……。剣士としてはかなりいい魔力値ね。魔法も使うのかしら?」

「アカネに教えてもらおうと思ってます!」


 待て。そんな話聞いてないよ?


「流石、私の見込んだアカネ君だわ。ナイスっ!」


 俺の株高すぎない……? こんな魔法オタクにしなければ良かったよ……。これが無ければ美人な研究者だったのに……。


「さっ。いよいよ大トリね」


 アレイが水晶から離れ、最後に俺が前に立つ。

 同じように触れて数字が浮かび上がるのを待つ。出た数字は450。

 この数週間でスキルや称号が進化してくれたおかげで低レベルでもここまで伸びた。魔力だけなら『勇者』や『姫巫女』の称号とスキルのステータス補正にも負けていない。それ以外はボロボロだけどね……。


「レベル10の魔力じゃないわね……。上級魔法が使えるからそこそこあるとは思っていたけれど思っていたより多かったわ」


 ローズマリアの「レベル10」と言う単語が聞こえたのか、周りは少し笑う者がいたり、難しい顔をする者がチラホラといた。


 まぁ……。騎士団の平均レベルは約50。新人でも30近い。そんな中にレベル10が入れば笑われるのは必然。仕方ないよね。


「ほんとに私の団に加入させられないのは残念ね……」

「……どうせ別の団でもしょっちゅう会いに来るでしょう……」

「あら? よくわかったわね」

「はぁ……」



 そう言いながらニコッと笑うローズマリア。


 そりゃわかるよ……。研究の為なら他の大陸に行くような変人だし、別の団になったくらいで諦めるはずない。


「はいはい! オタクはどいて! 次は技術試験!」

「ちっ。うるさいわねロリババア」

「あぁ?」

「まぁまぁ。今回の技術試験は難しいことも出来ないから、この問題を解いて欲しい」


 ベルグさんが2人の仲裁をしながら俺達に紙を1枚ずつ配る。その紙には剣を作る工程。魔道具の知識の確認など少し専門的な内容が書かれていた。

 問題自体が少なかったので、すぐに書き終わり、ベルグさんへ再び渡す。


「なるほどなるほど……。これはアレイ君も中々点数が高いね?」

「村でたまに鍛治の仕事を見てたことがあったので!」

「リーズ君も魔道具の知識が少しあるみたいだね」

「こんな魔道具があったら……ってよく商人の方と話したりしてたので……」

「そして、アカネ君。君は……」

「最っ高だね! 基礎は大体合ってるよ!」


 ベルグの言葉を遮ってクリルメタが割り込んでくる。


「魔法の道よりも技術の道を歩んでみない〜? 新しいものを作る……! 楽しいわよ!」

「はは……。まぁ、気が向いたら考えてみますよ……」


 それにしても大体……か。どこか間違ってたかな? 流石に細かくは覚えていられないんだよね……人間だし……。


「そっかぁ……。残念」


 そう残念そうにしながら、ヴァイスとアルバレスタ2人と入れ替わる。


「次は戦闘試験だ。いつもは1人ずつ見ていたんだが、君達は騎士団になると確定しているし、今日は団体戦闘での戦闘能力を見る……という物だ」

「それで、早速お前らの相手だけど……。この4人だな」


 ヴァイスが説明をして、アルバレスタが俺達の相手となる4人組を呼ぶ。

 周りの野次馬からこちらに歩いてくる男女4人。名前は知らない。だけど、見た目では盾役、攻撃役、後方支援2人……かな?


「こいつらは去年入って、まだ1年ちょっとの新入りだな。レベルは……平均30だったか? まぁ、そんな所だ。細かい事はヴァイス頼むわ」

「あぁ。ルールは基本的に相手を死に至らしめる様な攻撃はしてはいけない。剣は刃を潰してあるものを用意したからこっちを使って欲しい。それと、もしも大怪我をしても回復に特化した者を連れてきているからある程度までは大丈夫……。と言った所だな。質問はあるか?」

「……作戦会議の時間等はあるんですか?」

「おぉ? アカネ勝つつもりかぁ?」



 アルバレスタがニヤニヤしながら聞いてくる。4人組は顔には出さないようにしているけど若干イラッとしたのかこちらを睨んでいる。



「まぁ……もちろんです。勝てなければ騎士団の存続が危うい言うか……」


 こっちだって騎士団を設立しなきゃならない。下っ端になんか負けてはいられない。


「自信があることはいい事だ。それにアカネ君ならこの試合でも色々と見せてくれそうで私も楽しみなんだ。作戦会議はどれぐらい欲しいんだい?」

「そうですね……3分もあれば……」

「そのくらいなら問題ない。少し待とう。お前達も作戦を練るんだ」

「……はっ」


 ヴァイスは4人組にも声掛け、仮リーダーの男の様な人が返事をする。


 俺達は少し離れた所に行き、話を始める。


「ちょっとアカネ。3分なんかでいいの?」

「もちろん。大丈夫だと思ってるよ? アレイがいるしね」

「僕?」

「そう。『勇者』の能力があれば自分のレベルよりも10上の相手とも互角に戦える程の恩恵があるんだ。もちろんスキルや称号によって変わるけど自信を持って戦えば大丈夫だよ」

「お、おう! この一週間アルバさんから教わったことをいかす!!」


 ……もしかして団長と自分を比べてちょっと心配そうな顔してたのか……?


「うん。まぁ、アレイが前2人を相手するとして……。俺も少し攻撃に参加しようと思ってる。リーズは俺と一緒に後ろで支援だけど、どう?」

「この一週間で支援系をマリアさんに教わったわ。攻撃はまだだけどね……」


 この2人、団長捕まえて1週間も何してんのさ……。

 リーズが支援できるとなると、アレイの強化に穴があれば、その穴を俺が埋めるだけで良くなり、余分な魔力を自分自身へ使うことが出来る。俺の攻撃魔法のレパートリーも少し増える……かな。


「大丈夫。勝とう。そろそろ3分経つ頃だし集まろうか」

「そうね」

「うっし!!」


 2人も気合いを入れ直して歩き始めた。


「さて。戻ってきたようだね。この試合の審判は私……。ベルグが務める。双方いいかい?」

『はい!』

「では、場所はここ。線の内側で戦闘を行って欲しい。周りの野次馬達も中に入らない事! 干渉を行った場合罰が待っているということを覚えておくように!」


 それを聞いて野次馬の騎士達は足下の線の外へと移動していく。

 線は約30メートル四方の様で騎士達もその形になっているからわかりやすい。


 騎士団が使用できる外の特訓スペースは広く、わかりやすい例を出すと普通の公立高校がすっぽり入るくらいになる。

 そう考えると30メートル四方は小さく感じるが7人が戦うには十分な大きさと言える。


 その正方形の中で俺達は向かい合うように立ち、開始の合図を待った。



「では、作戦会議も終わり、準備が整った。これから、アカネ、アレイ、リーズの団体戦闘試験である模擬戦を開始する。始め!」


 ベルグの号令と共に向こうの前衛2人がこちらに突っ込んでくる。


「アレイ。2人同時に相手しなければ大丈夫だ。任せたよ」

「頑張るぞぉぉぉぉ!」


 アレイも嬉しそうに突っ込んでいく。そのアレイにリーズが力、防御、俊敏の補助魔法を掛ける。たしかに基本的なことを教えて貰ったみたいだ。そこから俺が重ねて、魔法を防ぐ『マジックシールド』、物理攻撃を少し跳ね返す『リフレクト』をかける。

 自分にもいくつか魔法を使う。

 すぐにアレイと共に戦いたいが、先に後衛を倒す。

 相手もそのつもりのようでこちらに向けて魔法を放ってくる。普通の人よりも詠唱が早い……。『魔力操作』のレベル2かな?


 『魔力操作』のレベル1は思いのほか簡単に取得できるがそれ以上は普通では考えつかない魔法の持続発動時間が関係してくるので一気に取得出来ている人数が減る。俺がいつも魔法名だけで発動出来ているのは称号のお陰で、普通なら詠唱が必要となる。それを短くするのが『魔力操作』。という訳だ。その他にもこのスキルは関係してくるが、魔法使いの彼女はそこまでの手練じゃないだろう。


二重デュアル『ウォーターウォール』、『アイスラッシュ』」


 飛んできた火の玉を水の壁で受け止め、同時発動した氷のつぶてを撃つ。

 途端にローズマリアの黄色い声援が俺に飛んでくる。


「二重! ほら、ヴァイス! 二重よ! しかも上位属性の氷魔法まで!」


 ローズマリア……。ヴァイスに絡むのはやめなさいよ……。困ってるじゃん。


 外野がうるさい中、魔法使いの彼女は冷静に反撃が来ることを予想していたのか『ファイアーウォール』で氷を防いでいた。

 得意なのは火か。なら水属性で……。


「『ウォーターキャノン』」


 『ウォーターボール』の1つ上の中級魔法。火属性が得意でもこれは防ぎきれないだろう。

 巨大な水の塊が飛んでいくが、彼女は避けようとはしない。

 詠唱を終えて何かの魔法が発動する。彼女の足元の土が抉れ、その土が巨大な人間の様な形に変わっていく。


「ゴーレムッ! 防御!」


 そう彼女が命令すると土の巨人は水の玉を拳で潰した。

 魔法使いではよくある事だ。最初に見せていた魔法はそこまで得意ではなく、相手が魔力を多く消費する魔法を使った途端に有利な属性で圧倒する。

 魔法の威力はすごいけれど彼女は基本的なことに囚われている気がする。

 折角ゴーレムを作り出してくれたんだし、壊すのは魔力の無駄。有効的に使わせてもらおう。


「『傀儡マリオネット』……2人を拘束しろ」


 『傀儡』。相手が操っている者を無理矢理奪い取る魔法。この時、相手よりも『魔力操作』のレベルが高くなければ成功しない。

 思った通り、彼女よりもレベルが上の俺が操作権を手に入れ、後衛役の2人をゴーレムで拘束する。

 残りの魔力は約150。

 ……確実に勝てる。こんなに簡単に勝てるとは思っていなかったけど、予想以上にアレイが強いし、リーズの魔法も上手い具合に邪魔をしている。


「ふふ……ふふふ……」

「アカネ……。笑顔が黒いわよ……?」

「ん? いや、アレイが強いなって思ってたんだ」

「いや、『こいつらチョロい』……って感じの笑いだったわよ」


 バレてる。


「ま、まぁ、それは置いといて……。俺もアレイと戦ってこようと思う。回復魔法は使える?」

「そうね……。3回くらいなら使えるわ」


 魔力をちゃんと節約しながら戦えている様だ。


「十分。じゃあ、俺は重戦士を相手するから、リーズは回復優先で邪魔は最小限で頼むよ」

「わかったわ」

「アレイ! 軽い方を弾き飛ばせ!」

「やっと来た! 2人相手はきついって! おっりゃァァ!」


 アレイが戦士1人を剣で弾き、重戦士と距離を置かせる。


「二重『エアハンマー』」

「ぐぅっ!」


 1回目のハンマーで体を宙に浮かし、2回目のハンマーで線の外へと叩き出す。

中級魔法の二重詠唱だったので魔力はもうスッカラカン。

 後1人はアレイに任せるとしよう。


 相手の剣術は騎士団に入ってから教わる王国流の剣術の様だ。上段からの切り付けを1番の技とし、それに繋げるために相手の姿勢を低くするような攻撃を行う。だが……。


「クソッ! はぁッ!」


 戦士の少年の攻撃はアレイには尽く避けられる。


「アレイってこんなに強かったのね……」

「まぁ、成長速度が信じられないほど早いし、我流の剣術は王国の騎士にとって嫌な戦い方だから」

「ふぅん……。ねぇ、アカネ?」

「ん? なにか質問?」

「世間には疎いんじゃなかったのかしら?」


 ……あ、あぁ。そんな事言ったっけ。すっかり忘れてた……。


「まぁ、それについては後からゆっくり聞くわ」

「……はい」



「ここだァ!」

「……くっ……。参った……」


 俺がリーズに軽く睨まれている間に、アレイが木剣を相手の首に当てていた。


「そこまで! これにて団体戦闘試験を終了とする。各自手当をして休むように」


 ベルグが試合の終わりを告げ、団長達と集まり、話し合いを始める。



「最近ここに入り浸ってたあいつ強かったな」

「俺の4分の1のレベルであの魔法の威力はなんだよ……」

「平民らしい型のない戦い方だ……」


 等と周りにいる野次馬達もザワザワと騒がしくなる。


「さて。試験お疲れ様。合否は……既に決定しているから別に報告する意味はあまりないけど、能力で言ったらアカネ君、リーズ君は魔法。アレイ君は戦闘系の……。ヴァイスの騎士団に入れるレベルと言っていい。ぜひ新しい騎士団で頑張って欲しい」


 ベルグと団長達が近くへ来て、俺達にそう伝える。


「これで騎士達へのお披露目はよしとして……。国民へのお披露目は3日後に予定しているからそのつもりで頼むよ」

「はい!」


 あれだけ動いていたのに元気に返事をしているアレイ。このチート野郎め。


「それでよ。アレイ。騎士団の名前決まったか?」


 急にアルバレスタが話を始める。


「なんのこと?」

「稽古をつけてもらっていた時に騎士団の名前を聞かれたんだけど決めてないなぁ……って思ってさ」


 そういえばそんな話し合いは3人としなかった。何がいいかな……。


「それで僕考えたんだ! 2人がよければこれにしたい……って」

「「センスによる」」

「あ、あぁ。大丈夫だよ。多分。えっと……。【英雄騎士団】……はどう?」

「……割とまともだ」

「案外マシね……」


 アレイのことだからもっと酷いと思っていたけど、思いのほかセンスは悪くないらしい。

 

「では、その様に発表しよう。団長はアレイ君。副団長がリーズ君。補佐の立場にアカネ君だね」

「わ、私が副団長……?」

「勇者が団長なら副団長は姫巫女じゃなきゃ!」


 突然の暴露にリーズが驚き、クリルメタが茶化す。

 俺は補佐か。理想的だ。


「ははっ。では、騎士団試験は終了だよ。すまないけど、アカネ君は私と国王と少し話を頼むよ」

「わかりました」

「では、一緒に行こうか」



 アレイ達とはここでお別れして、俺とベルグは王城へ向かった。

 そして、王の自室へと入り、またお菓子を食べながら話は始まった。



「アカネ。今回呼び立てたのは依頼の件の話に進展があったのだ」

「おぉ……!」


 依頼。恐らくは騎士団へ向けた依頼だろう。この依頼を達成できれば他からも依頼が来ることだろう。


「それでどこからの依頼ですか?」

「国立騎士団養成学校で、1ヶ月限定の臨時講師だ。詳しくはベルグがする」

「はい。ここ、王都にある国立の養成学校は王国領において1番規模が大きく、人材のレベルもかなりのものとなっています。なので、講師もレベルが高く、Aランク以上の冒険者または騎士になった者が講師をしています」


 そうそう。ここ王国領において、学校はいくつもあり大きく分けると魔法学校、貴族学園、騎士学校、高等学校。の4つになる。

 最初の3つは名前のまんまだが、4つ目の高等学校は現実の物とは少し違う。この世界での高等学校は、全てにおいて高等な技術を学ぶ場所。であり、商業、建築技術、史学、生物学、魔法学など、この学校を出た者は国の重要機関に就職することが出来る。

 まぁ、今回はそうところではなく騎士学校。そこの講師をレベル10なんかがやっていいのだろうか。


「まぁ、表向きの依頼はこんなところです」

「……表向きは?」


 ベルグの顔が少し真面目になる。

 んー。学園が関係している事件は、原作だと帝国のスパイだ。帝国は戦争国家であり、敵国にスパイを送り付けて内政を乱したり、状況を探ったりするのだ。

 因みにこの世界自体、戦争は多い。人々が多く亡くなり、荒れている。だから、この作品の名前は【朱の世界】という訳だ。

 そんななことも忘れるほど平和になってた所に胡散臭い話……ねぇ。


「裏の内容は、最近学生の……。特に貴族の考え方の違いが見られるようになったんだ。その原因を突き止めて欲しい。まぁ、恐らくは帝国のスパイだとは思うけど、どうもやり方が薄いのが気になるんだ」


 確かに原作では重要人物の暗殺、武器庫の破壊、毒を水路に等、国そのものに攻撃を加えていた。なんというか生徒の意識を変えるとか、ねちっこい。俺も何か裏があるという案には賛成だ。


「わかりました。最初の仕事。失敗しないよう頑張らせていただきます」

「では、講師の仕事は1週間後からだ。よろしく頼むぞ? ……そういえばお主らの居住もクリルメタが後5日程……と言っておったからそのうち連絡が行くだろう。今日は帰って良いぞ」

「では失礼します」


 俺はその場を後にして城を出る。時間は昼を過ぎた辺りだ。


「お昼にでもしよっかなぁ……」


 お腹も空いたのでお昼ご飯を食べに店へ向かう。

 今日、試験に呼ばれるまで、食事だけをお世話になっていた宿に向かう。

 その宿は食事が非常に美味しいのに、あまり知られていない。所謂、穴場スポットという訳だ。


「こんにちは〜」

「おや、いつも来るのは夜なのに今日は早いねぇ?」

「ちょっとこっちに用がありましたから」

「今日はまた飯かい?」

「はい。大丈夫ですか?」

「もちろん。銅貨3枚だ」


 きちんと払い、食堂へ案内される。

 キッチンに女将さんが入り料理を始めるといい匂いが広がり、宿に泊まっている人も食堂へと降りてきて食事を注文する。

 流石というかなんというか……。

 出来上がったものを女将さんとその娘が皆へ配る。


「はい! アカネさん、今日のおすすめ! 」

「ありがとうイリスちゃん」


 この宿に娘がいるという設定は作った。でも、容姿についてまでは深く書いていない子だったのだ。それが実際に会ってみるとかなり可愛い。歳は18。黒く長い髪を後ろで束ね。少し切れ長の目はクールさを醸し出しているが笑うと、とてつもなく優しそうに見える。実際優しいが。

 そんなイリスも食事をとるのか食事ののったトレーを持っている。


「一緒にいい?」

「もちろん」

「ありがと〜。いただきます」


 イリスも食べ始める。


「んー……。暫く食べれないからしっかり味って置かないとなぁ〜……。んん〜。うまっ」


 その言葉に反応して食事を口に運ぼうとした手が止まった。


「暫く来れないって……。やっぱり冒険者だからどこかに……?」


 なんだろう。どことなく寂しそうだ。


「いや、これから忙しくなりそうで……。1ヶ月後にはまた落ち着いて来られると思うんだけど。それと、俺は冒険者じゃないよ〜」

「お仕事かぁ……。よかった〜。そういえば冒険者じゃないって、なら何のお仕事って何してるの?」

「それはまだ言えないんだ。3日過ぎたら言える……と言うかわかると思うからお楽しみにね」

「ふふっ。何それ〜。なんで3日なんだろう〜」


 笑った……。可愛い。

 そんなたわいもない話をしながら食事をした。



 感想、ブクマ、評価お待ちしています!


 誤字、脱字。等がありましたら、遠慮なく言ってください。


 @D6Pfe ←Twitterアカウントです。


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