第4話◆騎士で冒険者◇
裁判が終わり、あれから3日後。
王からの召集があり、城へ向かう事となった。話し合いとの事でもちろん内容は騎士団についてだ。
今日は謁見の間ではなく、王の執務室に呼ばれた。
兵士が扉を開け、中に入ると豪華な部屋に豪華な面子が勢ぞろいしていた。
奥のソファーには、王、王妃、姫。そして、右と左に別れて団長4人と宰相が座っている。
そんな豪華なメンバーだが、囲んでいるテーブルに乗っているのは紅茶やコーヒー、お茶請けのクッキーだ。
俺の後ろでは、2人が固まっている。
そりゃあそうなる。王からの招集で、騎士団の話なのにゆったりとお茶を飲みながらなど誰が考えるだろうか。
だが、そこに王のギャップがある。アウグステ王は強面の外見からは想像もつかない甘党である。もっと言えば、クッキーとケーキが大好物なのだ。それがこじれて上層だけの話の際には、お茶とお菓子を食べながらゆっくりと穏やかに話をすると言うのが暗黙のルールとなっている。
「アカネは驚かないのだな? こんな強面がクッキーを食べて頬が緩んでいると言うのに」
「俺もお菓子が大好きでしてそっちに目を奪われていましたので」
「ふははっ! 面白い事を言うではないか! 3人もそのソファーに座るが良い。騎士団設立について決めていこうではないか」
裁判の時の威厳は今はなく、怖い顔もどこか優しげに感じられ、2人の緊張もほぐれ始めた。。
「っと話し合いの前にだ。我の妻。王妃のイリーナ・ルートヴィヒだ」
「3人とも、これからよろしくお願いしますわ」
「それと……。まぁ、もう知っているだろうが、娘のサリナだ」
「お久しぶりですわ」
微妙に声が低い。本当に会ったことを喋ったのか……。
久しぶりってまだ3日しか経ってないし……。
「次は私ですね? 宰相として働いているベルグ・オルクマン公爵だよ。よろしくね」
少し長めで濃い緑色の髪を後ろでまとめ、眼鏡をかけた爽やかな人だ。
この国の爵位の順は、国王が1番上で、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵となっている。辺境伯は別の括りで発言力は公爵に匹敵する。
この宰相さんはこの国で国王の次に偉い人ってことだな。
……と言うか。ヴァイスさんは辺境伯。それ以外の団長も侯爵で……。ここにいる全員が国の重要人物となっている。
「ありがとうございます。改めてアカネです。こっちの2人が『勇者』と『姫巫女』のアレイとリーズです」
「ア、アレイで、です。よろしくお願いしますです……」
「リーズです……」
アレイは変な敬語になり、リーズはいつもの元気さは無い。
「まぁまぁ、そんなに緊張するでない。早速本題だが、我は騎士団設立には賛成だ。今ある騎士団に勇者を入れるとバランスが崩れるであろうからな」
「僕が入っただけで……?」
「えぇ、騎士団には貴族の子息達が多くいます。実力があって貴族ともなると、平民を少し蔑む節がある者も少なからず出てくる。そのような所に気を使って、私は仕事を割り振ったりしているんだけど……」
「すまねぇな。良くねぇって言ってるんだけどよ……」
ベルグとアルバレスタが申し訳なさそうにそう言う。
「いえ、気にしないでください。それも含めて騎士団設立を進言したので」
「ほほう……。面白い。そこまでわかっておったか。それでだが、お主ら3人では少々騎士団としては少なすぎる。そこで各騎士団から移動しても良いという者を探して欲しい。団長達よ。できるか?」
「うちの王立工房は無理かもしれないですよ〜……。皆工房に籠ってやりたい事したい人達だから……」
「申し訳ないが、私の蒼宝騎士団も厳しい……。協力したいが、国境を守る関係でほとんどの者が王都にいなくてな……」
「……では、大魔法騎士団から出しましょう」
「俺の金剛騎士団からも出せると思うぜ」
「私も入りますわ〜!」
『………………』
団長達の話の後に姫が笑顔でそう言った。
「……サリナ。それは本気か……?」
「……? 本気ですわよ? お父様」
「はぁ……。騎士団がどれだけ大変で危険か知っとるのか?」
「もちろんですわ! 私は勇者殿とた……。こほん。色々な地域を救いたいのですわ!」
この姫さん本当に旅したいだけだわ。
「それについてはまだ決められない……。騎士団が成長してから考えるとしよう……。それまで待ってくれ……」
「……むぅ……。わかりましたわ……」
王は眉間を抑えながらため息をしてそう言い、姫は頬を膨らましながら拗ねて返事をした。
「あはは……。それで、裁判の際に言ったように、王都を離れる期間は1ヶ月まで。行く前には私へ申請書を出してほしい。それと、国民へ正式に発表するまでは離れる事は許しません。認知されてないと問題が起きるかもしれませんから……」
「発表するのはいつくらいになりそうですか?」
「……申請や用意があるから1〜2週間後って所だろうね。それまでは訓練中心でよろしく頼むよ」
「訓練……!」
ベルグの訓練と言う部分にアレイが反応する。
「おっ、訓練好きか?」
「あ、はい! ずっと1人で訓練してて……。組手とかするのが夢です!」
「カッハハ! そうかそうか! んじゃあ俺の所で一緒にどうだ!」
「いやっ……でも確か……」
アレイの思っていることは手に取るように分かる。
騎士団の泊まる宿や本部は王城の敷地内にあるのだ。そしてそこに入れるのは騎士団員のみ。
呼ばれても入れなければ訓練は一緒に出来ないのだ。
因みに当主として独立している貴族は国内の、貴族街に家を持ちそこから通っている。
「大丈夫! あたしがあなたたちの騎士団本部を建ててあげるから!」
俺が考え込んでいるとクリルメタが自信を持ってそう言ってきた。
「そうか。クリルメタよ。資金は私から出そう。して、何日でできる?」
「そうですね……。要望は何かある?」
「え、えと……」
「そ、そうですね……。要望……」
2人は俺に視線を送って助けを求めている。
要望……か。
「そうですね……。キッチン、寝室、応接室、地下倉庫、書斎は欲しいですね……」
「うんうん。確かに必要だね〜。寝室はいくつ作る?」
「10は欲しいですね。後は……皆で集まっておけるような広い共有スペースが欲しいです」
「となると……。わかってた事だけど今の王城内の土地面積ではちょっと狭いね〜。設計する時に増えるなんて思ってなかったから……」
「そうですか……」
わかりやすく凹むアレイ。それを見た王が安心するが良いと笑いながら話し始める。
「王都内に土地を用意しよう。それに城への出入りの件だが、騎士団としては今日許可できるように証も作らせた。ベルグ」
「はい」
ベルグが席を立ち、何やら重要そうな箱を3つ持ってくる。
一人一つずつ手に取り、開けるとフード付きマント入っていた。そして背中の刺繍には球体を持ったドラゴンとその前に花柄の模様が入った剣がデザインされている。
「これはもしかして……!!」
「おう! 俺達と同じ騎士団である証拠だな!」
「僕、本当に騎士団になれたんだ……!」
「感動の所を邪魔するようだが……。後日、試験は受けてもらう。何もせずに入団では団員達が納得しないであろうからな」
「はい! 試験を受ける事も実は楽しみだったので!」
試験と聞いて、感動しているノリのままワクワクし始めるアレイ。
その様子を見て呆れるリーズと微笑む団長達。
「そうだ。そのデザインはクリルメタと私が相談して作ったんだけど……どうだろう?」
「僕はすごい気に入りました! えっと……。この竜が持ってる丸いのはアカネの水晶?」
「そうそう! せいか〜い! 最強の印であるドラゴンに綺麗な水晶とアレイ君の使う剣! それに剣に入ってる花の模様はリーズちゃんをイメージしたんだよ〜」
「私まで……!」
「因みに俺の所はこれだ!」
そう言ってアルバレスタがブローチを見せてくる。城の前に盾が3つ並んでいる。
「私はこれ〜」
「私はこれよ」
「これは見せる流れかな?」
残りの3人も証を取り出して見せて来る。
クリルメタのブローチには王家の紋章と大きな金槌。ローズマリアの物には杖とローブが描かれ、そして、赤、青、黄、緑の玉が付いている。ヴァイスの物はペンダントで、ミスリル出てきており、剣の模様が描かれている。中には写真も入れられるようになっている。
「これ全部あたし達が作ってるんだよ!」
流石王国最高の技術者だ。どれも細かい仕事だ。
「これから先何度かアカネには話に付き合ってもらおう。騎士団として正式に国民へ伝えるまでに他にも決めないと行けないことがあるしな。2人は気にせず特訓に励むが良い」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あの話し合いの後は普通のお茶会になり、アレイとリーズの2人も大分あのメンバーに慣れたみたいだ。
だが、そのお茶会も夕方になる前には終わり、俺達は城を出て城下町を歩いていた。
「俺はこれから冒険者登録に行こうと思うけど2人はどうする?」
「冒険者? どうして?」
「僕達、騎士になったよね?」
「冒険者カードってかなり便利なんだ。身分証になるし、お店で割引になることだってある」
「お店で割引……ね。私も行くわ」
リーズの目が真剣だ……。
2人も着いてくるようだ。城から歩いて10分ほどの場所に冒険者ギルドがある。
この世界のギルドは職業毎に別れている。冒険者ギルド、商業ギルドなどが分かりやすい。
「思ってたより綺麗だし、大きいわね……」
「荒くれ者のイメージがあると思うけど、そこまで荒れてはいないんだよ。しかもここは王都だしね。規模もかなりのものになる」
外見は普通のお店と間違えるほど綺麗で3階建ての建物。
だが、しっかりと間違えないように看板が目印となっている。看板の旅人が剣と杖を持ったイラストはどこの地域でも共通となってるためたとえ言葉がわからなくてもここは見つけることが出来る。
と言うかギルドは全体的に看板のイラストは統一してある為、間違えることは無い。
両開きの扉を開けて中に入る。
『いらっしゃいませ〜』
受付嬢やバーにいるウェイター等からの挨拶が聞こえる。
左にはカウンターが並び、正面に進むとクエストボードがある。右には簡単なバーがあり、ちょっとした待ち合わせ場所になっている。
2階への階段はカウンターの横にある階段だな。
その中から俺達はカウンターへ行く。
「いらっしゃいませ。見ない顔ですが冒険者登録でしょうか?」
「はい。3人とも登録です」
「では、こちらの用紙に情報を記入しますが、代筆は必要ですか?」
「俺は大丈夫です」
「僕達も大丈夫」
「かしこまりました。ではお願いします」
紙に年齢、レベル、名前、を記入した後、魔法や剣を扱えるか。等の質問があり全て書き終わったあとに先程の受付嬢に渡す。
「……はい。確認できました。では、次に試験があります。内容はこちらの用意した冒険者が決めますので何になるか分かりません。今日やりますか? それとも後日にしますか?」
「俺は今日やろうと思ってるけど2人は?」
「じゃあ一緒に!」
「私もそうするわ」
「かしこまりました。では……。あぁ、ちょうどいい所に来ましたねレルヴィさん。ルニーさん」
「ん? スーシーちゃんどした〜?」
「……何か用か」
レルヴィとルニー。作中には少ししか登場してなかった記憶がある。
レルヴィは短剣を何本も所持している。役職は盗賊と言ったところか。姿は軽装で赤い髪の三白眼男子。
ルニーは大人しめで青みがかった藍色の髪の魔法剣士。薄手のコートを着ていてマジックバックと軽い片手剣を持っている。
「この子達の試験を頼みたいんだけどいいかしら?」
「おぉ! 新人の相手なんて久々だな!」
「はぁ……。落ち着けレルヴィ。まずはこの依頼の報告からだろ……」
「あ、そうだった。じゃあ、先にこれ。換金してくれる〜?」
「俺達は待ってるんでどうぞ」
「……助かる」
「では先に報告の確認と討伐アイテムの換金をしてしまいますね。少々お待ちください」
そう言って裏に行ってしまう。
レルヴィはこちらを向いて食い気味で話し始める。
「じゃ、この間に自己紹介しとくか! 俺はレルヴィ! 速さと手数多めの前衛だ。こっちの無口で無愛想な奴がルニーで、冒険者じゃ珍しい魔法剣士でな! 剣士タイマンじゃ中々負けないクールな奴だよ」
「……無愛想はよせ。ルニーだ。よろしくな」
「僕はアレイ。よろしく! こっちはリーズ」
「よろしく」
「俺はアカネ。よろしく頼むよ」
「アレイ、リーズ、アカネな! 試験かぁ……。なぁルニーどんなのがいいかな?」
ルニーは少し考えて気だるそうに答える
「もうすぐ夜だし近くの森に行って、野営で十分だろ。俺達も楽だ」
「んん……。まぁ、最初から難しくてもいけないだろうしそれしかないかー。ってことで野営で決まりだ!」
「お二人共お待たせしました。こちらが報酬で……。こっちが試験の依頼用紙になります」
「……あぁ。確認した。じゃ、行くぞ」
「「もう!?」」
「……冒険者ならば不測の事態に備えて何も無い状態からでも森で生き抜く位の事はしてもらわないとな。何も無い砂漠で生き抜けと言っているわけじゃない」
近くの森ならそこまで危険な魔獣や獣もいないし……。出るとしたら盗賊くらいか。出会ったら逆に運がいい位の確率だけど。
「まぁ、ここじゃ俺達2人はそこそこ強いし大丈夫だって! 何かあれば先輩にまっかせなさーい!」
「……頼りねぇ先輩だな」
「頼りなくない! じゃあ試験に〜しゅっぱ〜つ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よーし、ここが今日、野宿する森だな」
「……じゃあ、好き勝手に明日の朝まで過ごしてくれ、俺達はそれを見て採点する」
2人はそう言うと木と木の間にハンモックを2つ作り、それを覆うように雨避けのテントを張っていた。
基本的なサバイバルって感じだな。
俺達はどうするか……。
「あ、そうだ。もう暗くなるし、アレイとリーズは何か食べ物を取ってきてくれない? 動物とか果物とか」
「それなら大丈夫! 村にいた時は森にも入ったことあるし!」
「私も野草の見分けはそこそこできるわ」
「俺は魔法で拠点が何とかならないか試してるよ」
「まぁ……なんかアカネなら出来そうね……。じゃ、アレイいくわよ」
「うん!」
2人は森の奥に歩いていく。
出来そうねって……。まぁ、いくつか思いついてるけど。
さて。何からしようか。まずは料理をする為に竈みたいなのは必要として……。テントをどうやって作るか……。
まずは土魔法の『クリエイト』で地面を操作して3人が入れるだけの大きさの箱を作る。そこに簡単に窓とドアを作り周りは完成っと。魔力に余裕もあるしこのままでは地面が硬すぎて寝れない。
そこで、水と土の複合魔法の『グロウ』を使う。この魔法はその名の通り植物の成長を急激に促進させる。その効果を使い、部屋の地面を芝生で覆う。このままだとちょっとチクチクするので『アイテムポックス』から大きめの布を取り出して地面に敷く。割といい感じだ。
外に竈も作って……。外見はともかく、野宿するなら豪華な方だな。
因みに『アイテムポックス』は空間魔法。布は王都を探索していた時に買って置いたものだ。後々必要になりそうだったしな。
「……これは、魔力は大丈夫なのか?」
作業を一通り終えたところでルニーに話しかけられる。
「まぁ、そこそこ多い方なんで大丈夫かと」
「……草を生やしていたがあれも魔法か?」
「水と土の複合魔法。『グロウ』ですね。特に種とか撒いてなければ繁殖力の強い芝生が勝手に育つから便利で」
真剣に聞いてメモをしている。真面目だな。
レルヴィは仮設小屋の中に入っていく。
「おーっ! ふかふかだな! 俺こっちにいるわ」
「……アホが。お前はこっちだ」
「アカネーっ。そこそこ取れたぞ〜!」
「ここ、野草多いのね……って何か小屋が出来てるわ……」
若干引いてるな。できるんだろうと思ってるんじゃなかったのか……?
「アレイそれは?」
「ブラックピッグとロイヤルバードかな? 血抜きと内蔵は両方取ってあるから後は料理だけ!」
「竈はあるし……。いつの間にか食器もあるし料理しろって事ね。じゃあ、作るから待ってて」
リーズが調理器具や野草を持って竈の方へ行く。
もちろん俺が『アイテムポックス』から出した物だ。ほんとに便利だなこれ。お金をここに入れておけばスられる事も無いし、荷物も減って楽だ。
リーズが調理を始めて数分が経ち、物凄いいい香りがして来る。調味料も出して置いたので使ったのだろう。
その匂いに釣られてあの2人が寄ってくる。
「何だ何だこの匂い!! 美味そう!!」
「……俺も混ぜろ」
ルニーさんめっちゃ直球だな……。いや、両方直球だな。うん。
「はい。豚の方は出来たわよ。2人も食べませんか? 私たちだけじゃ余りそうなので」
「……貰おう」
「試験でこんなご馳走にありつけるなんてそうそうないぞ! ラッキーだったな! ルニー!」
「……美味い」
「早っ!? もう食べてるのかよ……」
ちなみにアレイは2人が来てからずっと無言で肉を口に詰め込んでいる。
食い意地はりすぎだろ……。
俺も食べてみる。少し分厚く切られた肉とニンニクの様な風味と塩コショウで味付けされたこの料理はかなりのものだった。
その後もリーズの山菜と肉のフルコースで俺達は食事を満喫した。
翌朝になり、小屋などは全て元の土に戻して、王都に帰る。そして、真っ直ぐとギルドへ向かう。
「あら、いらっしゃいませ。おはようございます」
「たっだいま〜。試験終わりだよ〜」
「……問題無しだ。むしろ一緒に仕事したい位に」
「ふふっ。それは将来有望ですね。では改めまして、ここで受付嬢をしていますスーシーと言います。末永くよろしくお願いしますねっ」
こちらを向いて自己紹介をしてくれる。
スーシーさんは長い茶髪をハーフアップしていて、可愛いが、お姉さんのような雰囲気も併せ持つ人だ。
「こちらがギルドカードになります。ギルドカードはランクによって色が異なっています。ランクはSSからFまでの8つがあって、ここ1階はF、E、D。2階はC、B。3階がA、S。専用のカウンターとなっているので間違えないようにして下さいね」
「あれ? SSは?」
「SSランクは今、王都には1人もいないの。だから無いんです。因みにレルヴィさんとルニーさんはAランクなんですよ〜。昨日ここで受付したのは試験の依頼を出しやすかったからですね〜」
「ここじゃAランクは30人ちょっと。Sランクは……何人だっけ?」
「……Sは5人だ。強さは騎士団団長に匹敵するとかしないとか」
「A、Sランクになるのは難しいですからね。地道にお仕事をして、国からも承認されないと慣れないんです。ただ、クエストボードの依頼を5回連続で失敗してしまうとギルドカードが剥奪されて、1年間再発行が出来なくなってしまうので注意してくださいね」
「大丈夫かしら……」
リーズは心配しているが失敗することはほとんど無い。
ランクによって仕事はしっかりと分けられていて、徐々に力をつけていけるようになっている。心配はない。
「ねぇアカネ! せっかくだからなにかやろうよ!」
「そうだなぁ……。用事もないし何か探しに行くか。って事なので俺達はここで……。ありがとうございました」
「おうっ! また料理待ってるぜ〜リーズちゃん〜」
「……分からないことがあれば聞きに来い」
「わかった。今度飲みに誘うよ」
「おっ。飲めるのか〜。いいねぇ待ってるぜ」
2人と別れ、俺達はクエストボードの前に行く。
「アカネこれはどうだ〜? フォレストウルフの討伐!」
「それはDランクの仕事だ……。俺達はまだ受けられないよ」
「ならこっちかしら? ゴブリン討伐。Gランクね」
「それは一年中あるんだ。繁殖力が強すぎて人攫いまでするから。それなりに危険だけどやる?」
「ゴブリン位なら何回か会ったことあるけどそこまで強くはなかったし大丈夫!」
「私もバインドで何とかなるわ」
「よし、なら……。こっちも一緒にやろう」
「一緒に? 一度に幾つも受けられるのか?」
俺が選んだのは薬草の採取。冒険者ならば別の町での依頼を受け、その道中にある依頼も一緒に受ける。というのが一般的なのだ。
「あぁ、ランクが上がれば迷宮に入れるようにもなるし、レベルを上げやすくなる。だから、難易度は上がるけどランクも上がりやすいからこういう方法を取るんだ」
「へぇ……。まぁ、薬草なら私が探せるし大丈夫よ」
「よし、じゃあ行くか!」
スーシーさんへ依頼書を渡し、道具を買い揃えて王都を出る。
向かう場所は今日まで野宿していた森の奥地。
「ほんとに薬草多いわね。もう積み終わっちゃうなんて」
「少し多めに取ってもらってもいい? 俺が持っておくから」
「わかったわ。にしてもゴブリンどころか他の獣とかが少ない気がするわ」
「確かに。いるけど、僕達の村の辺りならもっと簡単に出会えるんだけど」
「王都の近くだから?」
「さぁ……。流石に俺も分からない。もう少し奥に行ってみようか」
「そうね」
薬草を取りながらどんどんと奥地へと進む。
同時に『サーチ』で獣を探す。
そして、10分ほど先に進んだ所で『サーチ』にゴブリンらしき反応がある。
「いた。いたんだけど……」
「どうかしたの?」
「獣がいない理由がわかったよ。ゴブリンが小規模の村を作ってたんだ。今感じるだけでも30はいる」
「どうする? 僕は行きたいんだけど」
ゴブリン村の、討伐難易度は冒険者ランクCに相当する。数はおよそ100と仮定したならば勝てる見込みは十分にある。
「まぁ……。様子は見に行かないといけないしそのノリで殲滅しましたって報告すればいいかな」
「私は隠れて『バインド』をしているわ」
「俺も遠くから魔法で援護する。アレイは突っ込んでくれ」
「おう!」
3人分の『サイレント』をかけて歩く音を消してゴブリン村へ近づく。
「くっさ……。凄い臭いね」
「ゴブリンの臭いは落ちない。やばいで有名だからな。それより数は相当いるなぁ……。100じゃ済まなそうだ。奥にあるあの大きな木の不格好な小屋の中に長がいそうだからアレイはそこをめざしてくれ」
「わかった!」
アレイは勢いよく飛び出し、一直線に向かっていく。
「リーズは手前を気にしないでアレイに向かっていくゴブリンに絞って『バインド』を使って欲しい」
「が、頑張ってみるわ」
俺も草むらから出て魔法を発動する。ゴブリンは防御力が低く、初級魔法でも倒すことが出来る。
そこで威力はなくとも範囲が広い魔法を2つ同時に放つ。
「二重『サイクロン』」
風属性の中級魔法の二重詠唱。竜巻が2つ生まれ、その中にゴブリンが次々と吸い込まれ、切り刻まれていく。
この攻撃で下っ端の半数以上を倒すことが出来た。
奥ではホブゴブリンをアレイが引き出して戦っていた。
まだまだ下っ端のゴブリンが多い。なので今度は『サイクロン』を1つ発動して初級魔法の『エアバレット』で狙い撃っていく。
そして、数はどんどんと減っていき、アレイもホブゴブリンを倒してこちらに戻ってきた。
「はぁはぁ……。終わったぁぁ!」
「ふぅ……。流石に魔力が無くなりそうだよ」
「お疲れ様! 凄かったわよ2人とも!」
この戦いでレベルも上がった。塵も積もれば……だな。
ゴブリンの右耳を切り落とし、洗浄して袋に詰め込む。
洗わないと臭くて持ち歩けないからな……。ほんとに臭い。吐きそうだ。
それを持って王都へ帰る。
「あら、3人ともおかえりなさい」
「どうも。ゴブリン討伐と、薬草類の採取依頼の確認をお願いします」
「はい。それでこの袋は……?」
「僕達が討伐したゴブリンだよ。まぁ、僕はホブゴブリン三体を相手しててほとんどアカネが倒しちゃったんだけどね」
「こ、この数を……? もしかして村があったんですか?」
「えぇ、この2人が突っ込んで殲滅してましたよ……。竜巻が2つ出てきたり……もうハチャメチャな……」
スーシーさんそんなに見ないでくださいよ。照れるじゃないですか。
「わかりました……。それではこれを数えて換金。そして、ギルドカードの昇格を私から進言しておきますね」
「やった!」
まぁ、その日の内にゴブリンの村を潰して帰ってきたらそうなる。
騎士団の証を見せれば勝手に国公認であるAランクから始めることができるけど正直そこまでの強さは俺達にはまだない。
無理をして失敗でもしたらそれこそ騎士団の信用に関わる。今はCがちょうどいい位だ。
俺はしばらくここのギルドで依頼を受けて、ランクを上げながら騎士団に勧誘できる人間がいないかも探すか。
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誤字、脱字。等がありましたら、遠慮なく言ってください。
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