第3話◆裁判で改革を◇
襲撃から一週間が経ち俺達は今。王都にいる。
何故か。それは簡単。四大貴族の次男であるカジットを縄で縛り、村の近くにあった騎士駐在所に突き出したからだ。
その後は王国で裁判が行われることとなり、俺達は村にて軟禁。そして、王国からの馬車に乗り、現在に至る。
王が、俺達を軟禁していたのは裁判に出す為とクコ村がそんなに遠くない場所にあったからだろう。
これが遠くて、軟禁も受け入れないという事になれば指名手配されることは間違いなしだったかな。
そんな訳で、王国にいるのだが、ここでも軟禁状態が続く。宿は用意され、その宿泊代は国が持つようだけど、代わりに兵が入口で二人付いて、見張る状態が続く。
出掛ける時も一人の兵士が見張りとして着いてくる……。という説明を兵から受けた。
「何だか大事になったわね……」
「僕達どうなるんだろう……」
二人は心配なようだ。ここに来る間の馬車の中でもこんな雰囲気でメイドさんにまで励まされる始末。
ちょっと不安を解消しないとストレスで倒れそうかな……。
「ここからは、多分難しい裁判になると思う。弁護士は買収される危険性もあるし、必ず頼れるという保証もない」
「相手は貴族だものね……」
「そこで、俺に色々と任せてはくれないかな? 裁判に絶対勝つことを約束する。2人はあそこで見た出来事を俺に聞かれた分だけできるだけ正確に答えて欲しいんだ」
「聞かれたことに対して返せばいいのか」
「あぁ。この裁判で一番大事なのは、証拠。その次に大事なのが、確かな証言だ。だから頼む」
「まぁ……。私達はそこまで頭も回らないしアカネに任せるわ」
「僕もだ。信じてる」
「2人ともありがとう」
2人が同意してくれたので少し詳しい裁判の内容を話そうかと思った時、扉をノックする音が聞こえた。
……誰か来たのか……?
「はーい。空いてますよー」
「失礼する」
「なっ……」
「ははっ。3人とも驚いた顔をして……。まぁ、驚くのも無理はないか……。初めまして。青宝騎士団団長のヴァイス・アルヴァニアだ」
「なんでこんな所に……。確か遠征に……」
「ん……? それはまだ口外していなかったが……」
しまった……。まさかの展開で動揺した。こんなにも早く物語が大きく改変されているなんて思ってなかったから……。
この長身で、黒髪を短く切り、目付きの鋭い人こそ【剣のアルヴァニア】という家を作り上げた人物。
「まぁ……。情報には詳しいので……。それよりなぜ?」
「それはもちろん。私の息子の不始末を誤りに来たのだ。自分の子が問題を起こしたら謝りに出向くのは当然のこと。本当に済まなかった……」
そう言って腰を振り、頭を下げる。
「かっ、顔を上げてください」
「そ、そうです! 私達は無事なんですから!」
2人はそう言うが、たしかに謝るのは当然のこと。
責任感は常に強く抱き、国民を守る事。困っている人がいるのなら自らの剣を以て助ける。それを信念としているヴァイス。
今は貴族として扱われるよりも、どう報いたらいいのかを伝えるのが彼にとって有難い事となる。
と、言うことで失礼を承知で、俺は口を開く。
「確かに貴方の息子カジットは、俺達を殺そうと従者数人を連れて襲撃した。その事に対しての謝罪は受け取りました」
「お、おいアカネ……」
「ここからは先の話をしましょう」
「……ふむ」
「帰ってきたと言うことは、近い内にある裁判に参加するつもりですよね?」
「もちろん父親として参加しないわけにはいかない」
作中でヴァイスは遠征で帰って来れず、カジットの好き勝手に工作されてしまった。それをここでまずは叩き折る。
「なら、貴方の息子のカジットを部屋に軟禁してください。人と会うことを裁判の日まで規制して欲しいのです。理由は……。分かりますよね?」
「貴族の権力を振るわせないようにという事だな。無論。裁判は公平に行われるべきだ」
よし。次だ。
「ありがとうございます。それと裁判でカジットを重い刑にしようとは正直思っていません」
「えっ? どうしてよ」
「よく考えてみてほしい。カジットは四大貴族の次男なんだ。今はカジットが犯罪を犯したかもしれないと言う噂で、国を支える四本の柱の一つにヒビが入った状態。そんな状態でカジットを投獄すればアルヴァニア家の権力や印象は落ちるんだ」
「凄いな君は……。中々そこまで詳しい冒険者は見たことが無い。確かにその通りだ。私達の騎士団はいわば攻撃特化の騎士団だ。その信頼が下がり始めるという事は他国から攻撃を受けやすくなったり、犯罪の増加に繋がる」
「……。話はわかったわ。それでどういう事よ」
「カジットを重い刑にするとこんなにも国に不利益が出る。それを王は望むわけがない。だから重い刑を望むのは無駄。俺達の印象が悪くなるだけだ。なら、無難に家に軟禁……。程度に収めておいて、話を進める方がいいと思わないか?」
「なるほど……。よく考えるわね……」
「……おぉ。……ん?」
アレイはまだ分かってないみたいだ。こんな所で天然を発動しないで欲しいんだけど……。
大丈夫かな……。
アレイの騎士団入団にも響かない様にするにはこの手が一番だ。
ん……? 騎士団か……。ふふっ。いいことを思いついた。
「ヴァイスさん。頼みがあります。大事な頼みです」
「なんでも言ってくれ。できるだけ叶えて見せよう」
「裁判に四大貴族当主を全員揃えて下さい」
「出来なくもないが……。それでいいのか……?」
「えぇ。これが成功すれば国のためにもなるし、俺達のためにもなります」
「分かった。掛け合ってみよう。……では私はこの辺で失礼しよう……っとその前にだ。アレイ君だったか。剣を抜いて私の剣に当ててくれ」
「え? あ、はい。こう……ですか?」
アレイの剣とヴァイスの剣が触れると、その瞬間まで何をしているのか分かっていなかったアレイの顔が真剣になる。
この目の前で行われているのは、ヴァイス独自の相手の覚悟を図る儀式……みたいな物だ。そこまで重くないか。日本で言う、握手みたいな物かな。
剣から相手の気持ちや力量など様々なことがわかるらしい。
「ふっ。なるほどいい剣士だ。ありがとう」
「あ、いや。ありがとうございます」
三人で頭を下げてヴァイスを見送る。
これで、物語は全く違うものとなるけど……。思い浮かぶ事が全て上手く行けば、アレイは騎士団に入団でき、俺も自由に動ける様になる。問題のレベル上げも楽になるし、元の世界への手掛かりも掴みやすくなるかもしれない。
まぁ、これだけ俺達に利益が出るということはそれなりのリスクはある。だがそれも、アレイがいれば大丈夫だと思う。
裁判は三日後……。それまでできることは無いし、だらだらして過ごすとしようかな。
三日後。
俺にとって勝負の日。場所は謁見の間。俺達とカジットが向かい合う形で、それを見下ろす様に国王、アウグステ・ルートヴィヒが玉座に座している。
威圧感のある目に、オールバックの茶髪の髪。綺麗に整えられた髭。服を変えれば、強面の冒険者のようだけど、その見た目からは想像もできないような頭のキレで国を維持している人物。
怖いけれど、何度も思い浮かべた顔だし今更怖がるのも違う気がする。
そして、ヴァイスさんはと言うとしっかりと残りの3人を呼んできてくれたようだ。
2階の傍観席から見ている。その他の貴族ももちろん2階だ。
「これから裁判を始める。我の前だということを肝に銘じ、嘘偽りなく言葉を選ぶがよい。嘘を言った場合はこのベルが鳴る。鳴ればそこで裁判は即刻終了し、刑を与える。双方良いか」
『はい』
「うむ。では最初に情報の整理をする。襲われたのは『姫巫女』と『勇者』そして、冒険者の3人とあるが、間違いはないか」
「いや、俺は正確には冒険者では無いです。旅をする身ではあるけど、ギルドに登録はしていません」
「そうか。それは別に良い。確認した。称号を確認したい。ステータスペーパーを見せてもらおう。すぐに返却する」
「「分かりました」」
2人は紙を傍にいる兵士に渡し、その兵士が王の元へと持っていく。
「確認した。ではここからは本題に入る。文書には、3人の止まっていた宿にカジットを含む数人の従者が襲撃し、殺害しようとしたとあるが真か?」
「いや! 私は無礼を働いた者を罰しようとしたのです!!」
ベルは反応しない。
「と、言っているが?」
「そうですね。無礼を働いたのは確かだと思います。ですが。それは『姫巫女』であるリーズに無理やり言い寄り脅迫したから貴方の元に訪れなかったのです。そして、一週間が経ち、待ちきれなくなった貴方は俺たちを襲撃した」
「どこに……! っ……」
「そんな証拠があるか……。ですか? 言いましたよね? あの時、証拠は用意したと」
「ほう。証拠があるのだな?」
国王が興味ありげに聞いてくる。
「はい。確かな証拠を用意しました」
「それはどんなものだ?」
「魔法にございます」
「魔法……か。そのような魔法を知っているか?」
国王は傍観席に座る一人の女性に向かってそう叫ぶ。
長い黒髪と切れ長の目の彼女は【杖のエルシャ】魔法を得意とする騎士団を率いる団長で、四大貴族当主の1人のローズマリア・エルシャだ。
「複数ございます」
「見分けることは可能か」
「容易いことです」
「そうか。少年。名はアカネと言ったか。魔法名はなんだ」
「『クリスタルビジョン』です」
「発動してみよ」
発動すると、水晶が現れ、あの時の映像が鮮明に映る。
俺はその映像の前に起きたことや、映像に合わせて説明をして状況の補足をする。
映像が終わると水晶は砕けて消えていった。
「エルシャよ。魔法に偽りは無いか」
「はい。非常に綺麗な上級魔法の『クリスタルビジョン』でした」
なんかすごく見られている。見られる理由はなんとなく分かる。
ローズマリアは魔法の才を持つ者を見つけるのを趣味とし、見出された者は、入団を迫られる。勧誘されないのは裁判中だからだな。良かった……。
「反論は……。無いようだな。はぁ……全くなんてことをしてくれたのだ。して、アカネよ。この者にどの程度の罰を望むか」
「そのことに関してですが提案があります」
ここからは交渉。上手くいくことを願うばかりだ。
「申してみよ」
「まずは刑の話ですが、重い罰は望みません。それは国王殿も望まれないでしょう?」
「無論だ」
「そこで彼を家で10年間の軟禁してください。そして、私達の願い2つほど聞いて欲しいのです」
「ふむ……。どうやら色々と分かっているようだが情報屋か?」
「いえ、ただ単に情報に詳しいだけです」
「そうか……。して、頼みとはなんだ」
「先程話した通り、この者達は『勇者』と『姫巫女』です。ですが、この称号を持つ前はこの国の騎士団へ入団する事が願いでした」
「それは真か?」
「「はい!」」
「……それはよかろう。アカネ。お主の魔法の腕も先程の魔法で分かっている。3人の入団を許可しよう。それで2つ目はなんだ?」
「新騎士団の設立です」
全体がざわざわと騒がしくなる
ザワつくのも無理はない。なんせ騎士団に入団するためには、厳しい試験をクリアし、訓練期間という名のふるいにかけられて、それでも残った者が、各団長の指名を受けてその団に入団するというプロセスだ。
「静かにせよ。……アカネよ。どういう事か説明せよ。これまで話していてわかる。何かを考えておるのだろう?」
「新しい騎士団を作るのがどれだけ大変なことかは分かります。ただ、普通の騎士団とは少し違うのです。今、存在している騎士団は王からの名を受けて現地へ向かったりしますが、俺が考えているのは、貸す為の騎士団です」
「騎士団を貸す……。だと? それは他国へと言うことか?」
髭を触りながら聞き返してくる。
「他国に限りません。貴族個人や、学園。村等にもです。一番近い職種は傭兵でしょうか。ですが、国公認という事と、『勇者』という肩書きが傭兵よりも信頼を得る事ができ、そういう面での犯罪防止にもつながります」
「だが、失敗した時はどうするのだ?」
「自分の力はどの程度か把握はできます。失敗するようなことは致しませんし、それに拠点移動式を考えています」
「移動式とはキャラバンのような事で良いのか?」
「はい」
キャラバンとは移動式の傭兵団や傭兵付きの移動商人の総称で、もっと簡単に言えば数人が集まって旅をする旅人という事だ。これが認められれば旅もできて、王国という後ろ盾も完成する。
「旅をすることは許せん。向かいたい場所に行く前に必ず申請を出し、一ヶ月以内に帰還せよ。それに急な話で今決めるには重要すぎる。重要人物が集まっていても決められる訳では無い。近い内にまた話そうではないか」
……確かにそうか。俺も少し先走り過ぎたかもしれない。
「もちろんです。聞いていただきありがとうございます」
「うむ。話が大分逸れたが裁判を閉廷しようではないか。我。国王ルートヴィヒの名において、カジット・アルヴァニアの罪を認める! アカネによる恩情で10年という話だったが、国を貶める様な行いに等しく、貴族である身でしてはならない愚行! よって刑は本家に15年の軟禁。そして、貴族との結婚権の剥奪である!」
なんか凄いプラスされているな。
「そして、集まった貴族達よ。この事は内密にせよ。他国に盛れるようなことがあれば戦争が近くなってしまうからな」
そう言い残すと、アウグステ王は兵に指示を出してカジットを連れて行く。
王自身も別の扉から出ていく。2階にいた貴族達も俺達を見定める様にチラ見をしてからぞろぞろと部屋を出ていく。
「お疲れ様」
「ヴァイスさん。どうも」
「な、なんであんたそんなに平然としてられるのよ……。私でも知ってるわよこの人達……」
「目の前の人が全員最高の騎士……!」
「ん〜。そこまで慌てることかなぁ〜?」
リーズは慌てて、アレイの後ろに少し隠れ、アレイは目をキラキラとさせている。
俺達の前にいるのは四大貴族の4人。
【剣のアルヴァニア】のヴァイス・アルヴァニア。【杖のエルシャ】のローズマリア・エルシャ。【技のティーナ】のクリルメタ・ティーナ。【盾のドルロス】のアルバレスタ・ドルロス。
「歳とって技だけになったロリババアが何をぶりっ子してるのやら……」
「あぁ? んだと魔法オタク。そんなんだから男に逃げてられてばっかりなのよ!」
まぁ。ローズマリアとクリルメタの相性はこんな感じだ。
身長が170cmで少し大人っぽい雰囲気のローズマリアに対し、クリルメタの見た目は130cmのロリ体型。金髪で髪はポニーテール。そして童顔。
ローズマリアは杖。魔法特化の騎士団の団長だ。攻撃、援護など、活躍の幅が広い。
クリルメタは技。技と言っても攻撃ではない。技術の方の技だ。魔道具や、装飾品。そういったもののエキスパートだ。
残った盾だが、もちろん防御特化の騎士団となる。背は高く、分厚い筋肉で覆われた肉体。肌は褐色になるほど焼けていて、金髪がいいハイライトだ。
「それで皆さんで何か用が?」
「いやいや! 王が中々にご機嫌で裁判をしてたもんでな。騎士団の話はもう確定だろうと思ってよ。んで挨拶に来たってわけだ。もちろんお前が団長になるんだろ?」
アルバレスタがそう言ってくる。
「いや、団長はアレイですね」
「僕が!!??」
「そりゃ、勇者なんだから。勇者をこき使ってたらそれこそ変な噂が産まれそうで怖い……」
「あははっ。確かにそうだろう。他の貴族も勇者が団長ならば手を出しにくいだろう」
「ヴァイスさんまで……。そんなぁ……」
この4人の団長の性格などには大きな変化は無いみたいかな。
それなら面倒見はいい人達だしこれからも頼らせてもらおう。
「じゃっ、あたしは工房に戻ろっかな〜。騎士団になって何か作って欲しかったら遠慮なく言ってね! アカネくん!」
「私も資料をまとめなくちゃ……。それではまた」
女子陣2人は、部屋を出ていく。
ローズマリアは、チラチラとやっぱり俺を見てるんだよなぁ……。
「私も家に戻って書類を書かなくてはな……。改めて息子が済まなかった」
「俺も稽古時間だ。っしゃ、今日もビシバシ行くとするかぁ! じゃあな!」
残った2人も帰っていく。
「俺達も新しい宿見つけるか」
「あ、そうだったわね……」
裁判が終わったので今日で軟禁生活は終了となる。となると、国が用意した宿は使えなくなり、自分で見つけないといけない。幸いな事に、謝罪料としてヴァイスさんから十分な金は貰っている。
2ヶ月は遊んで暮らせる量を貰ったけど、別に宿はそこまで豪華じゃなくてもいいという話になった。
王城を出て城下町を歩く。
冒険者、屋台、市民達。まさに王道ファンタジーという風景。
何度も夢見た風景だ……。そして、考えもしなかった目の前を歩くイチャつきカップル。
……爆ぜろっ!!
そんな2人にぶつかる人影。いやまぁ、何人も肩くらいはぶつかっているけど、その子だけはしっかりぶつかってしまったのだ。
見た目は、ローブのフードを深く被り、妙に綺麗な白のワンピースを着ている。身長はリーズより小さいから150cmくらいかな。
なんかどっかでこんな状況書いたような……。序盤は王国には来ないし……。
「す、すみません。ではごきげんよう……」
そう、小さな声で言うと人混みの中を再び走っていく。
「なんだったんだ……?」
「さぁ、なにかしらね?」
「あ。思い出した。あれお姫さんじゃん」
「「…………」」
……やっちまったぜぇー。
いや、だってこんな序盤で後々起きるイベントが始まるなんて思ってなかったし……。つい声に……。
「おいかけなきゃ!」
「そ、そうよね!」
お節介カップルだな。
リーズがいなかった原作ではヒロインとなったけど……。今ヒロインなんかになったら修羅場だ。それはそれで面白そうだけど。
「アカネ。人を探す魔法みたいなのないの?」
「あるけど……。人が多すぎて使い物にならないかな」
「それじゃあ、地道に探すしかないのか……」
地道にと言っても王国内の広さはかなりのものだ。
王城が中央にあり、それを囲むように貴族達の住む中央区。
さらに、その周りには住居や店。学校などがある。
あまり1つの場所に固まらないのは比較的大通りが多く、大通りに面している所は店を出し、そうでない所は住居となっているせいだ。
どこに住んでも店が近く、便利な作りとなっている。ただ、中央区に近ければ近いほど、物の値段は上がる。
「あー。ほら。あそこの。西の時計塔の辺りは立地が高くなってるから少しは探しやすいんじゃないかな? 白い派手なフードを被ってたし」
「そうね。手分けしてはぐれたらただの迷子になるものね……」
3人で時計塔へと向かう。
ここの時計塔周りは風景が綺麗でデートスポットでもある。周りは見渡す限りカップル……カップル……。
「……表は2人で探してくれ……。俺は時計塔の裏の方を見てくるよ」
「迷子になるなよ〜」
時計塔の裏は川と住宅街などがあるだけで、カップルも少なくなるのでこちらに行く。
慣れない桃色空間からの脱出に成功した俺は階段を降りて、川の傍に行く。
……意外と綺麗な水だ。水を浄化する魔道具で確か綺麗にしてるんだっけ。
川を眺めようと右を見ると、川に掛る大きな橋の下で数人の男が何かしている。
よく見ると時折、体の間から見える白いフード。
「ベタな展開だ事……」
主人公はアレイなんだからそっちに行くとばかり思ってたけど……。
そう言えば、姫って団長レベルのステータスに育つ予定なんだっけ。
ここで上手いこと恩売っておけば、後々いい事がありそうな気がするし……。
上手く助けるには……。まず、『パラライズ』で、姫ごと麻痺させる。また逃げられでもしたら面倒だしね。
そこに『パワーブースト』で走り込んで、お姫様抱っこ状態で連れ去る。
「なんだてめぇ! まてクソガキ!」
1人だけ麻痺が効かなかったのだろうか。追ってくる。
いかにも底辺の冒険者に見えたから麻痺も効くと思ったけど、耐性があったみたいだ。
それとクソガキと呼ばれる筋合いはない。若く見えるとよく言われるけど、20歳を軽く越えている。まぁ、若いことには変わりないけどさ。
「あ、あなたはあの時の……」
「舌。噛みますよ。『バインド』、『スリープ』」
男は縛って、眠らせる事に成功した。
麻痺に耐性をつけていても、眠りにはなかったらしい。
こうなれば、逃げる事は簡単。
表を見回っているアレイ達と合流して、喫茶店に入る。
「あ、ありがとうございました」
「いえいえそんな! それで……姫様はなぜこんな所に……?」
姫を目の前にして、リーズがすごい敬語になっている。
このお転婆な姫は14歳。サラサラな茶髪のショートヘア。少し白味の帯びた目をしている。
市民へのお披露目はされていないから、こうして市民街を出歩けている。
「そんなに畏まらなくてもいいですわ……。ここに来るのは城はとても退屈だから……。かしらね……」
「退屈? 何で?」
「ばかっ。あんた姫様になんて口を……!」
リーズがアレイの頭を小突く。
「ふふっ……。仲がよろしいのですね」
姫に笑われて恥ずかしかったのか2人とも少し顔が赤い。
「退屈の理由でしたね。部屋に籠って、たまに騎士団の方に剣や魔法を学ぶ。そして寝る……。これの繰り返しばかりで、もううんざりしたのですわ!」
「特訓は面白いと思うけどなぁ……?」
「アレイみたいに脳筋じゃないからね。それに目標がないと特訓だって面白くもならないよ」
「それもそっか」
「目標……。ですか……」
姫の目標。それがない。こういう生活が続き、心が疲れきった時に、アレイと出会いその揺るがない復讐心に心が引かれてしまうのだ。
なんて芯の強い人なんだろうか。と。
「それなら姫様。私達と一緒に旅をしないですか?」
「旅……ですか?」
おっ。俺が切り出そうとしてた問題をリーズが話し始めた。
「でも、一国の姫に冒険なんて……」
王に話した事とほとんど同じ内容を姫に説明する。
「……本で見たキャラバンのような……。素敵ですわ! ……決めました。特訓を励みますわ!」
「特訓ならこのアカネに聞けば色々と教えてくれるから聞くといいよ! 僕も色々助かってるし!」
「ま、まぁ……それは、城に呼ばれた時に相談してみないとなんとも言えないけど……」
「私からもお父様に言っておきますから安心してください!」
安心できない。王の知らない所で姫さんと会ってるとか結構な重罪なんだけど。
「あっ、そう言えば自己紹介がまだでしたね。私はルートヴィヒ国第2王女、サリナ・ルートヴィヒですわ。これからどうか末永くよろしくお願い致しますわ」
「さてと……。流石にもう帰りましょうか……姫様?」
「あっ……あはは……。そうでしたね」
「門の前まで送りますよ。また捕まったりしてたら流石に面倒臭いし……」
「あら、お優しいですね。ありがとうございますわ」
「私も賛成よ。お姫様一人じゃ心配だもの」
こうして、俺達は姫様を門の前まで送り届けた。
流石に門までは一緒に行けない。近くに隠れて姫様だけが門をくぐる。お忍びで出てきている姫と俺達が一緒にいたら、話が全てなかったことになる可能性があるしね……。
でもこれで4人目の騎士団員。さすがに少ないなぁ……。
当分は人手を増やす事が仕事になりそうだ。
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