第2話◆悪役には鉄槌を◇
ステータスの欄の【スキル】と【称号】は知りたい物に触れることで、少しの説明が浮あがる仕組みとなっている。
と、言うことで早速触れてみる。まぁ、いかにもって感じなやつは置いておいて……。ふざけた称号から見てみよう。
・『徹夜慣れ』
3日までの不眠なら健康状態に被害が出なくなる。
……すごくありがたいんだが……。どうせなら向こうで発動して欲しかった内容だなぁ……。
4日貫徹した時に寝込んだことだってある。もしもこれがあったら元気だったかもしれない。
……少しまともに考えよう。この称号はこの世界の学者や上級冒険者に多く付けている物だ。
健康状態に異常が出ないと書いてあるが、ちゃんと眠気は来る。あくまで異常が出ないと言うだけできついことにはきつい。なるべく寝よう。
さて。お次。
・『創造者』
この世界を作った者。この世界の全てに干渉し行動1つで物語を変えてしまう。
(変えた物語を閲覧することは不可能)
この世界の全ての魔法を扱える。
(ただし使用できる魔力に依存する)
ふむ……。こんな称号は作った覚えはないけど……。
ややこしい言い回しだなぁ……。
まず”この世界を作った者”これはそのままの意味。
”物語を変えてしまう”の所は……。物語を知っている俺が、その物事の元凶などに手を出して起こるはずの事件が無くなる……。とかそんな感じかな? つまり、俺が何も手を出さなければこの世界は通常の物語通りに進んで行くという事か……。
魔法全てか……。魔力が100じゃ、初級魔法2、3発位だから後々役に立ちそうかな。
「それがあなた方のステータスです。何かわからない事があればどうぞ聞いてください」
「あ、じゃあ……」
リーズが手を上げる。
……ここからどうするか本当に迷うんだよなぁ……。
「この『姫巫女』って何ですか? 聞いたことないし……」
「おぉ……。貴女様が生まれ変わりの……!」
神父は涙ながらに驚く。
『姫巫女』。『勇者』と対になる称号である。その効果は……。
「リーズ様……。貴女は”勇者を選べる”権利を持たれました。生涯を共にする者をこの世界から一人選べるという権利です。これは国王ですら縛れません。どうか我らに平和の光を……」
リーズに祈りを捧げる様に神父は膝をつきながらそう答えた。
そこから少し教会内は騒がしくなり、国王や周辺諸国に『姫巫女』の誕生と『勇者』の選定が始まると伝える準備が始まった。
『勇者』の称号は破格の効果を持つ。ステータスには全て補正が掛かるからだ。
その勇者を村娘のリーズが選ぶというのだから……。
「やぁ。お嬢さん。僕はカジット・アルヴァニア。アルヴァニア家の次男だ。率直に言おう。この僕に。名家の生まれである僕を『勇者』と呼ぶ事を許してやろう。さぁ。一緒にこの先の人生をどうだい?」
アルヴァニア家。この王国において4人いる英雄であり、国王の側近の1人。【剣のアルヴァニア】の家の次男だ。
見た目こそ爽やかでいいが、この通りの腹黒ゲス野郎。
「す、すみません。これから私達行くところがあるから……」
「……。そうか。それは失礼した。返事は後日聞くとしよう」
まぁ、こうなる。貴族や王族。高ランクの冒険者。なり上がろうとする村人。盗賊までもがその力欲しさに寄ってくることになる。
その第1号がカジットである。そんな状況が嫌でリーズはアレイの手を引いて教会を出る。
残念ながら俺の手は引かれないので着いていく。
俺達はそのまま宿へ向かう。ここには一週間いることになるからその期間の部屋を借りる。
部屋割りはアレイとリーズで1部屋。俺1人で1部屋だ。部屋が広く感じる。
借りた後、2人は買い物をしに村へ行くようで、誘われたが拒否した。これ以上は物語に支障が出そうだし仕方ない。
それだけじゃなく、1人になったのは考え事をしたかったからでもある。
俺は自分自身を転移者として見ることにする。
明らかに転生ではないし、ステータスまであるならこの世界にアカネとして存在している証明になる。それに、転移者なら帰れる方法があるかもしれない。
その方法を探すには冒険をしないといけない訳だけど……。今、そんなことをしたらすぐに死んでしまう。
となるとまずは……比較的安全に冒険できる30レベルをめざしてレベル上げをしないと……か。
レベル上げなら魔獣を倒して経験値を貰うのが一番楽だけど、それ相応のリスクがあるし特訓しても経験値は入る。アレイはほぼ特訓でレベルを上げている。
魔獣か……。特性全部を完璧に覚えているわけじゃないし、何より初級魔法3発じゃ、心許無い。
決まったな。まずは魔法を何発か打てるだけの魔力を用意する。
どう用意するか。答えは簡単。【称号】だ。
1週間かけて魔力を増強させる物を獲得していく。
もう既に魔法を行使できるなら思っているより簡単かもしれないし。
「『ランプライト』」
手のひらの上に小さな光ができる。『ランプライト』は部屋を照らすくらいの弱い光を生み出す持続系魔法だ。
これを1週間ずっと付けたままにして、2つの称号を獲得する。
分間魔力消費は2。分間魔力回復量は……。魔力が無くなっていない所を見るとそれ以上なのかな。
魔力回復量は人によって違う。遅い人もいれば早い人もいる。
持続系の魔法には消費魔力とは別に持続した時間に合わせて自分の魔力が削られていく。
あまり意識はしないでも維持できるようだ。良かった。早速別の魔法も使って行こう。
……ちょっと楽しくなってきたかも。
こう言う地道な作業ってほんとに好きなんだよなぁ……。
「『パワーブースト』……おおっ」
これは分かりやすい。俗に言う”強化魔法”だ。凄く身体が軽く感じる。
この魔法も持続系の魔法だ。けれど『ランプライト』と違う点がある。
それは魔力を操作することで、度合いや場所を選べるという点。
この魔法を上手く使えれば『魔力操作』を手に入れることが出来る。是非欲しいスキルだ。
まずは全身に広がっている魔力を右手に集めるイメージを……。
……いや、俺魔力がどんなものかは考えたけど、実際どうなのか見たことも聞いたこともないや……。どうやって集めるんだろう。血と同じく巡っているとは設定を考えたものの、全く感じ取れない。
あんまり集中しすぎると光が消えそうだし……。む、難しい。
休みなく、2つの魔法を行使し続け、およそ3時間がたった。
《レベルが1上がりました。SPを4獲得。
称号、『見習い魔法使い』を獲得しました。
スキル、『魔法好き』を獲得しました》
よしよし。順調だ。
SPは初級スキルなら3。中級は6。上級は9。最上級は12で、レベルを1つ上げることが出来る。
取っておいて慎重に割り振っていかないとな……。特訓で上げようとすると強くなるまでに何年かかるか……。
『魔法好き』は魔力を5上げるスキル。『見習い魔法使い』は魔力を10上げる称号だ。どちらも初級で獲得方法を知っていて、魔法が使えれば簡単に入手することが出来る。
……それが難しいから全員獲得していないわけだけど。
その後も続けているとアレイ達が帰ってきて部屋の戸を叩いた。
「起きてるかー? 戻ったからご飯食べに行かないか〜?」
もうそんな時間か……。流石に『パワーブースト』を使ったまま食事など出来ないので、魔力操作の特訓は中断する。『ランプライト』は光をポーチの中に隠して、持続させる。
「ごめん。待たせた」
「大丈夫よ。食堂に行きましょ」
ササッと用意して部屋を出る。取る物が何も無いとはいえ、戸締りはちゃんとしないと。
向かうのはこの宿の1階にある食堂。そこで、日替わりのおまかせ定食を頼む。この宿は一週間以上泊まる客は夕食が無料サービスになるのだ。
「蒸し芋、キャベツのスープ、鶏の香辛料炒め……と」
「あら、お客さんよく分かったね」
「まぁ、うん。そうだ。エールを貰えるかな」
だってこのメニュー考えたの俺だもん。
「あいよ〜。お二人さんはどう?」
「僕は水で大丈夫」
「私も」
「エール一つっと……。ごゆっくり〜!」
すぐにエールがテーブルに運ばれる。日本のビールと余り変わらないが、今まで嗅いだことの無い甘い匂いがする。
まずはエールをグッと飲む。甘みが強く、炭酸が強い。疲れた体に染み渡る……美味い!
「……美味しそうに飲むのね」
「ん? 実際かなり美味しいから。この辺りじゃ確か1番美味しいというせっ……。こほん。美味しいって言う話だし」
「へぇ……。ここのエールってそんなに美味しかったんだ……」
「アカネは結構飲むほうなのか?」
「そこそこかな。あんまりキツイのは飲めないからこれくらいのを飲みながら楽しく話すのが好きだよ」
大体宅飲みだったけど……。
そんな話をしながら香辛料炒めを食べ、エールを流し込む。塩コショウがよく聞いた肉はエールによく合う!
そしてコショウで疲れた口には優しい味のスープ。コンソメスープに近いだろうか。
そのスープと一緒に蒸し芋を食べる。こちらはじゃがバターだな。バターも芋もこの村の手作りだからこそ出来る料理だ。バターなんてめちゃくちゃ高いしね……。
三人ともペロッと食べ終えて、部屋に戻る。俺は風呂ありの生活に慣れているせいか凄く風呂に入りたい気分だ。
一応部屋にはそこそこの大きさの桶とタオルが置いてあるがこれでは浸かることが出来ない。
暫くは体を拭くだけかな……。
翌朝。今日からは何も用事がない。特訓漬けだ。
そしてすっかり頭から抜けていたことがある。それは物語最大の分岐点。
リーズの死だ。
六日後。この宿を出る前日の夜。二人は襲撃に会う。複数人の手によって内密に。
証拠はアレイの記憶のみとなり、リーズは死に際にアレイに勇者としての力を託す。
王国騎士を目指すアレイにとってその事件は許せないものとなる。
もちろん主犯がそこら辺のゴロツキならば騎士になって取り締まるという方向に向いたかもしれないが、この事件の主犯は【剣のアルヴァニア】の次男であるカジットとその従者だ。
アレイはカジットを取り締まるためにと、王への謁見と裁判にまで辿り着く。だが、勇者とは言え、ただの村人であるアレイの発言力は無いに等しく、カジットになど勝てるはずもない。
この物語の王は愚王では無い。歴史に残る程の働きを見せる賢王。それ故にアレイがカジットに疑いをかけた反動は大きく、カジットによりアレイは逆に罪人にされ、追われることとなる。
アレイは思ってしまう。
騎士なんてこんなものかと。
これが人間かと。
この国に騎士などいないと。
こうしてアレイの国への復讐が始まる。
これは物語の核とも言える重要な部分だ。もし、俺がこの復讐を止めてしまえば、その先は全く知らない物語が待つ。
どうして止めるか止めないかで迷っているのかと言うと両方にリスクとメリットがあるからだ。
まず、止めない場合。
リスクは、復讐の巻き添えになるかもしれない事と、国から罪人指定される恐れがある事。
大きいのはこの二つだろう。
どちらも俺が帰り道を探すという目的に置いて、とんでもない障害になる。
一方、メリットは物語が変わらないから先読みできるという事だ。多少、変わるかもしれないけど、ほとんど変わらないと思う。
捕まえるために投入する兵士の数、強さ、包囲網の場所、各国の知識。全てが変わらないならアレイに加担すると鬼に金棒となる筈だ。
止めた場合。
メリットは2人が死なないこと。そして、国が敵対しない事。そして、やりようによっては高待遇もあるかもしれない。
デメリットは失敗した時、止めない時よりも反動が大きく、物語も変わるかもしれない。そうすると、リーズを失い物語も変わるという最悪な事態になる。
俺はどうにかして止めたいと思っている。だから魔法を練習しているわけだけど……。正直、まだ迷っている部分もある。このまま自分の書いた物語を変えていいのかと。
そんなものは作者の我儘だけれど、責任を持って書いた物語だ。変えたくないと思ってしまう。
現実として処理して助けるか。物語と処理して見捨てるか。
…………助けよう。自分の子供同然の2人。今こうして、ここに生きている。この世界は現実だ。
俺の目の前で2人が死ぬなんてことがあっちゃいけない。
助けなかったらきっと後悔してしまう。そんな気がする。それに、文字でアレイはあれだけ悲しい思いをしたんだし、今度は幸せになる番だろう。
俺が物語を変えて、幸福にしてやる。
そうと決まれば今日も特訓開始だ。『ランプライト』は寝ている間も消すことなく、持続できた。時間で言うと18時間程度だと思う。
スキルも寝ている間にレベルが3に上がっていた。
今日のメニューは昨日に引き続き、『パワーブースト』による魔力操作の練習!
集中して、魔力の流れを感じる。
この地味な作業を今日と次の日もずーっと続けた。
滞在四日目。
今日から、違う魔法の練習となるので、村から少し離れた草原にいる。脱、宿練習だ。
と言うのも、昨日、やっと『魔力操作』を獲得したからだ。これさえ手に入れられたら、流石にあの苦行はやりたくない。
因みに、スキル『魔法好き』がレヘルアップを重ね、最高レベルの5に達したのでスキル進化をして、『魔法使い』となり、現在はレベル2だ。
スキルレベルは初級〜中級が5。上級〜最上級が7。が最高レベルになる。
『魔法好き』のレベルMAX時で30『魔法使い』となった時に10加算され、40。レベル2なので更に10加算。
合計で50も魔力が上がっている。
次に獲得するスキルだが、『二重』と言うものと、出来れば各属性のかけだしスキルだ。
かけだしスキルとは『〜属性のかけだし』という称号のことで、持っているとその属性の発動時の消費魔力が10減ると言う少しお得な称号だ。
とりあえずかけだし称号は後。まずは『二重』からやりたい。
これは、攻撃系の魔法を”二つ以上を同時に”発動することで手に入る。このスキルを持ってる人は極端に少なくなる。冒険者で言うと上位の人が持っている位か。
実は何が難しいのかいまいち分かっていない。難易度は高めと言う設定だが、二つ放つだけ。
両手を前にかざして、初級定番の火属性魔法。『ファイアーボール』を使う。消費魔力は30。2つで60それに『二重』の負担を追加して70。ちょっと痛いな。
両手にそれぞれ魔法陣が浮かび上がり、ちゃんと発動する。
空に向けて打ったので、すぐに消滅していった。
《スキル、『二重』を獲得しました。
称号、『火属性のかけだし』を獲得しました》
「なんだ。少し心配したけど……っ。」
少しフラっと来た。
そうか。この打った後の不快感と虚脱感。急激に魔力を使ったから……。
中級以上の魔法を使ったとしてもこうなってしまうということかな。60ともなれば俺の魔力のほぼ3分の1。
何はともあれ、二つを獲得出来た。火属性なら魔力が満タンの状態でなら余裕で使えることだろう。多分。
・『二重』
二重発動する際の魔力を10補助する。
・『火属性のかけだし』
火属性攻撃魔法を使う時、魔力を5補助する。
うん。内容も変わらない。
ここからは、今日の目標も達成出来たし、使える魔法の確認と、かけだし称号を獲得するまで反復練習かな。
練習を終えて、宿に戻る。
「妙に上機嫌だけど何かあったの?」
リーズがそう聞いてくる。
リーズも毎日の日課である。アレイとの特訓を終えて帰ってきたらしい。
「ん? いや、少し特訓が上手く行っただけなんだ」
そう。なんと、かけだし称号を全て獲得できたのだ。
これはテンションが少し上がってしまう。
「アカネも特訓してたなら僕達とやれば良かったのに、明日はどう?」
「魔法なんだけど大丈夫?」
「ほんと!? 実は魔法相手にどこまでできるか試したかったんだ〜」
そう言えばこの辺りでは魔法と対峙させることは無かったっけ。そんな風に思ってたのか……。
……ん? そう言えば襲撃の際に使われるのも大半が魔法……。
それに耐性をつけることが出来れば、返り討ちにできるかもしれない。
そんなことを考えながら、特訓に付き合うことを了承し、夕飯に向かった。
滞在五日目。
昨日話した通り三人で、村から少し離れた平原に来た。
アレイの特訓と言えば剣。我流で、敵の攻撃を避けて、反撃するタイプの剣術。
同じ剣士や近接型の敵なら相性はいいが、魔法使いや弓兵との相性は最悪と言っていい。
なら、どう戦うのか。
流石にそこまで教えてしまうのでは怪しまれるし、自分で早く気づいて欲しい。
「俺は魔法で応戦すればいいのかな?」
「頼む! 木剣は当てないから!」
……確かに木剣が当たったら骨折しそうだ。レベル差15の勝負。
「行くぞ〜!」
「おーう」
アレイが真っ直ぐ突っ込んでくる。
そのアレイに俺はとある魔法を使う。
「『パラライズ』」
勢いよく走っていたアレイは、次第によろよろとし始め、しまいには膝をつき、木剣を地面に落とす。
「なん……ら……こ……」
「麻痺の魔法だよ。冒険者とか、盗賊とかがよく使ってる魔法かな。解く方法は意外と簡単で、『パワーブースト』を使うんだ。身体強化すると耐性が上がって、段々動けるようになる。最終的には効かない体に出来上がるから試して見て欲しいんだけど……どう? 剣だけじゃなくて魔法も同時に使って行けたら強くなると思うんだけど……」
こんな感じで特訓と言う名目で、襲撃の際に使われる魔法に慣れさせていく。
「リーズも覚えてみる……?」
「教えてくれるの!?」
「まぁ、一緒に行動してるし、初級魔法とかこれくらいはいいよ。アレイが麻痺を克服するまでちょっと暇だし」
「だって〜アレイ〜。アカネ借りるわね〜」
リーズにはまず、魔力を高くする為に俺がやっている『ランプライト』から教える。
そして、レベルが元々あるから同時進行でかけだし称号を集める事を課題に仕上げるつもりだ。
ちなみにアレイは1時間経ってやっと解くことが出来たが、上乗せで『パラライズ』とさらに『バインド』という拘束魔法で一日地面に突っ伏したまま終了した。
滞在7日目。襲撃の日の朝。
三日でアレイに何とか『麻痺耐性』を獲得させることが出来た。付け焼き刃ではあるが、無いよりはマシ……。だと思う。
昨日は耐性がついて、慣れたのかまともな試合となった。
その時に魔法の初見殺しを嫌という程叩き込んだので低級の魔法使いなど敵ではないだろう。
リーズは、『バインド』を覚えることが出来た。襲撃者の1人くらいは縛り上げることが出来ると思う。
一方俺はと言うと。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
アカネ Lv.5
体力:205 魔力:265
力:50
防御:40
俊敏:25
SP:25
・スキル
魔法使いLv.4、魔力操作Lv.2、生活魔法効率化Lv.2
・称号
魔法使い NEW(見習い魔法使いから進化しました)
全属性のかけだし、創造者、徹夜慣れ、二重、努力者
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
こんな感じだ。大分成長したと思う。レベルは置いて置くとして、強さでいえば初級冒険者位かな。
魔法の使い方を考えれば、カジットの従者数人を相手にしても勝てると思う。
さてと。SPを振り分けようと思う。
振るのは『魔法使い』だ。今の手持ちの中で、補正が高く、伸び代がかなり大きい。しかも初級スキル。コスパ最強だ。
早速『魔法使い』へ振り分ける。
《『魔法使い』が限界レベルになりました。進化します。『中級魔法使い』になりました》
さらにレベルを一気に3まで上げる。
・『中級魔法使い』Lv.3
ステータスの魔力に補正。+125
これで魔力は55上がって320となった。
ここまで増えてきたら『二重』ではなく『三重』もできそうだ。……いや。怖いからもう少し後にしよう。最初はリスクがあるから……。
部屋の扉が叩かれる。
今日もアレイ達と特訓の約束をしていた。
だけど、流石に今日ははしゃぎすぎる訳にはいかない。いざとなって魔力が無い! なんて事になったら最悪だ。
「おはよ」
「今日こそまともに勝負だっ!」
「そう簡単に魔法を克服出来ると思うなよ〜?
ふっふっふ〜」
「なんか一気に仲良くなったわね……」
アレイを茶化しながらいつも通りの平原に向かう。
そのあとの展開は言わずもがな、『二重』による攻撃と拘束でアレイは地面に突っ伏したまま日は沈んだ。
そんなに魔力を使って大丈夫なのかと自分でも思ったけど、俺の魔力回復速度は、分速10。
32分もあれば全て回復することが分かったし出し惜しみ無しでアレイを動かさないで体力を温存させた。
ご機嫌は少し斜めだけど。
そのご機嫌も夕食後ではすっかり治って、自室に戻って行った。
もちろん俺も戻る。さてここからは修羅場となる。
まずは『探索魔法』を使う。効果範囲は術者の魔力に比例する。俺の場合はおよそ直径20メートル。これだけあれば隣の部屋にいるアレイ達の場所と襲撃者の人数も把握出来るから十分。
分速消費魔力は5で減らないから安心だし、持続させる。
さぁ……。予定では数時間後だけど、いつでも来い……。
きた。真夜中。アレイ達が寝た後に数人の従者を連れてカジットが廊下を歩いている。
物語ではカジットを含め、4人だったが、増えてる……。今は宿の中に6人。外に1人。3人多い。これは俺の所に1人。もしくは2人来ると予想する。
『探索魔法』に気づいている様子はない。
気づいていないなら寝たふりをして待とう。
鍵がピッキングされている音が聞こえる。
やがて鍵が空いて、中に人が入ってくる。予想通り、足音からして2人……かな。
行動開始……!
「『サイレント』『フラッシュ』」
声が漏れないように部屋を防音にする。そして、強烈な光で目眩し。最後に仕上げの『パラライズ』と『バインド』。
予想以上に上手く行き、2人を速攻で無力化する。
次に証拠を確たる物とする為の魔法を使う。
その魔法とは『クリスタルビジョン』。幻影水晶に映像を閉じ込める魔法だ。上級魔法で消費魔力が150。分間消費が20とかなりえげつないけど、証拠の為に頑張るしかない。魔力ポーションも買ったし。
向こうはアレイに任せよう。暫くは傍観者だ。
写った映像をアレイの部屋の外で見ると丁度リーズを庇ってカジットと対峙している所だった。
どうやら『麻痺耐性』のお陰で動けるらしい。
「下民の分際で私を待たせるだけでなく、前に立ちはだかるか……」
完全にぶちギレているカジットの声。
アレイの部屋には『サイレント』が掛けられていて、俺の水晶からしか声は聞き取れない。
「聞けば『姫巫女』は死ねば新しい者が引き継ぐらしいではないか。お前の様な下民の屑はさっさと殺してしまって、新しい『姫巫女』を探し私の伴侶としよう。それがこの国。この世界の為だ!」
「あなたは騎士だろう! なぜこんなこと!」
「そうだとも。絶対的な力を持つ貴族の騎士。お前みたいな屑とは違う」
うぅむ。我ながら結構サイコパスに作ったものだ。
「アレイ……。今ここで誓って……。」
「なに……? リーズ」
「絶対一番の騎士になるって!それでこんな奴を捕まえて!」
「もちろん! こんな事をする騎士なんて騎士じゃない! 僕は王都へ行ってあなたを引きずり下ろす!」
……あ。何も言わないでください。このクサイセリフは若気の至りです。いや、今でもかっこいいと思うけど。
兎にも角にもここで、リーズはアレイを『勇者』に選んだ様だ。ステータスは全て100補正される。いいなぁ……。
「図に乗るな! お前ら殺せ!」
「「「はっ!」」」
カジットは剣士対策として全員、魔法使いの従者を用意していた。
そのもの達は『ファイアーボール』や『エアアロー』などの魔法を打つが、アレイは初見ではないので簡単に見切って少ない間合いでも魔法を見事に断ち切る。そして、従者の2人を鞘付きの剣で気絶させる。
リーズも『バインド』を使って従者の1人を縛る。
残るはカジットのみ。
「こんなことをしてただで済むと思うなよ……。それに隣の男もお前たちの連れなのだろう……? そちらにも従者を向かわせてある。殺されたくなければ……分かっているな……?」
「アカネを盾に……!」
あ。キタコレ。
物書きとしてこんな登場の好機を逃すわけにはいかない!!
勢いよく部屋を出て隣へ向かう。
「俺がどうかした? カジット・アルヴァニア? 俺の部屋に来た男2人は眠かったらしくて床に突っ伏してるから安心して欲しい」
「なっ……!」
「アカネ!」
「無事だったのね!」
完璧……!
「そうだ。アレイ。『勇者』獲得おめでとう。ずっとこれで覗いてたんだ」
部屋の端に浮かばせていた水晶を手元に引き寄せる。
「なに!? この部屋は妨害魔法を……」
「剣の練習ばっか……。いや、それもまともにしないでダラダラ生活していたからわからないと思うけど、これは『クリスタルビジョン』と言う上級魔法で、中級までの妨害魔法は無効化できる。というかそもそもこの部屋に掛っていたのは防音魔法の『サイレント』だし、魔法の勉強もした方がいいと思うよ」
説明も終わったし、録画を終了する。この映像は次に発動する時に再生される。
「そん……な……」
「アカネ……。実はすごい魔法使い……なんじゃ?」
「まだまだかけだしの魔法使いだって」
カジット達は、騎士に突き出すために、『パラライズ』に加えて縄で縛る。
外にいた見張りも即麻痺してもらって縄で縛った。
良かった。襲撃は何とか防ぐことが出来た。ここからどう進んでいくのか。どう書くか……。
久しぶりに魂が燃えるような高揚感。
新しい【朱の世界】の始まりだ。
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