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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第二章

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43話 迫り来る敵

駿府の今川義元が、大軍を率いて尾張を目指している――との急報が入った。


信長の家臣たちはすぐに清洲城の上段之間へ集まった。俺もどさくさに紛れて後ろの方で参加した。


今川軍は尾張国内に入り込み、すでに今川方に落とされていた沓掛城へ入城した模様であった。また今川の別動部隊が更に清洲に近い大高城内の今川軍に兵糧入れを行ったとの話も聞こえており、軍議は紛糾した。


「今川はかなりの大軍です。兵の数は2万5千との報告が入っております。対して、こちらは3,000」


「まともにぶつかっても勝ち目はございません。今川は上洛が目的との話もあります。ここは籠城して様子を見るのも手かと…」


「いや!籠城などしていては尾張の国内を蹂躙されるだけだ!すぐに出陣し、我らの力を見せつけるべきだ!」


様々な意見が飛び交う中、俺はずーっと考えていた。



…これってもしかして『桶狭間の戦い』じゃね?


ちなみに俺の知っている『桶狭間の戦い』の情報はたったこれだけだ。


①今川義元が大軍で攻めてきた

②対する織田軍は少数の兵しかいない

③しかし信長は桶狭間に居た今川義元の本陣に奇襲をかけて、義元を討ち大勝利した。


この中の①と②は現時点で既に符合している。


もしこれが本当に『桶狭間の戦い』ならば、きっと勝てるんだろうから籠城している場合じゃねーよな。けど、本当に『桶狭間の戦い』なのかは今の段階では自信が無く、断言ができない…。


今川義元が桶狭間に向かうかどうかが知りたいなぁ…と思った瞬間、閃く。

『ってか、実際に調べに行けばいいんじゃね?』


そこまで考えた時、信長が声を発した。


「ふむ。今日はもう遅い。皆、家に帰るがよい」


「「「え!?」」」


家臣の面々は驚いて、一瞬、上段之間は静寂に包まれた。


「しかし、殿? 今川は既に…」


「よいのだ。今日は解散だ」


信長は面倒くさそうにそう言い放ち、席を立った。家臣の面々は納得できないような顔をしつつも、信長がそう言うのでは仕方がないのだろう。各々周囲の状況を見つつ、帰り支度を始める。


ざわめく上段之間の後方から、俺はさりげなく信長に近づき、小声で話しかけた。


「殿。私はこれから今川の本陣の場所を探ってまいります。大軍とは言え、義元を守る本陣の人数は限られているはず。場所によっては我が軍でも十分に戦えるでしょう」


それを聞くと、信長はニヤリとした。


「任せる。俺は早ければ明日の正午には丹下砦か善照寺砦に入る。そこで本陣の情報を聞こう。励めよ、藤吉郎…」


「はい…」




俺はその足で足軽詰め所へ行き、残っていた小一郎・一若・彦二郎に今川の本陣を探りに行くことを伝える。もちろん三人にも手伝ってもらうつもりだ。


それぞれ一度家に戻ってもらい、村人っぽい格好に着替えてきてもらう。うんうん。さすが元村人達だ。村人姿が板についている。


「いいか、敵に会っても攻撃なんてしなくていいからな。あくまでもどこに本陣があるかを探るだけだ」


念のため出発前に三人に言い含める。


「おう」「わかった」「はい」


三人も神妙な顔で返事をする。


「よし、じゃあ出発だ」


四人で日の暮れた清洲の町を出発した。すでに大高城には今川の別動隊が入っている状況なので、まずはその手前にある善照寺砦へ向かことにした。


結構長い時間休まず歩いた。三刻ほど経っただろうか…。ようやく善照寺砦に着いた時はまだ夜明け前だった。


「兄ちゃん…。向こうが明るくなってる」


小一郎が南西の空を指差した。そちらを見ると確かに何かが赤く光っていた。


「あれは…何かが燃えているのか…?」


一若が言う。


「方角的には丸根砦、鷲津砦か…もしくは大高城か。戦が始まってるかもしれないな」


俺は誰に言うでもなく呟いた。三人も無言で同意する。


「…急ごう」


俺達四人は更に南下する。


今川義元の部隊は沓掛城から出て、恐らく大高城に向かうつもりだろうという情報だったので、善照寺砦から南へ向かえば今川の本隊か先発隊を見つけられる可能性が高い。


善照寺砦から南下すると次は中島砦がある。その中島砦の近くには小さな集落があった。夜明け前ではあったが、集落は騒がしかった。俺は目配せをして集落に近付く。


集落では人々が起きていて避難する準備をしているようだった。村人たち数人が大声で話している内容に耳を傾ける。


「大高城の方にも今川軍が向かっていったんだと」

「すごい大軍だったって、藤五郎が言ってたぞ」

「けど本隊はまだ沓掛城だろ?」

「たぶんな。けど、大脇村と桶狭間(オケハサマ)村に桶狭間の山に陣立てするから人足を出すように今川の使者が来たって」

「はー。じゃあ、あそこの山に今川の殿様が来る訳か…」

「藤五郎が酒を取りに来たのはそのせいか?」

「ああ、なんでも陣ができたら食料や酒も出すように言われたらしいぞ」

「そいつは難儀だな。この村の近くには来ないでほしいなぁ…」


おお!『オケハサマ』って『桶狭間』の事だよな? やっぱ、これビンゴじゃね? 村人の話を聞きながら、ちょっと興奮する。


しかし、桶狭間って山だったんだ。てっきり谷みたいな所だと思ってたわ…。


「みんな…聞いたか? 今聞いた話を念のため確認したい。『桶狭間の山』に行くが、足は大丈夫か?」


三人とも頷いたのを確認して次の行動に移る。


「よし、ちょっとここで待っててくれ」


そう言って俺は単独で、話をしている村人の近くへ近付き、声を掛けた。


「夜分に申し訳ございません…」


「!!」


村人たちは驚いて俺を見る。


「今、お話されていた『桶狭間の山』に我々も人足として召し出されたのですが、夜道で迷ってしまいまして…。申し訳ございませんが、道順を教えていただけませんでしょうか?」


「お、おお…。なんだ、驚いたな。てっきり今川兵でも出てきたかと思ったぞ」


「ああ…これは、驚かせてすみませんでした…」


警戒されないように丁寧な物腰で接するよう気を付ける。


「あんた達も大変だなぁ。ここからなら、ほれそこの手越川に沿って歩いていけば『桶狭間の山』に着くだろうよ」


「ああ、あんなところに川が…ありがとうございます。助かりました」


こうして、俺達は村人に教えられた通り、手越川に沿って『桶狭間の山』へ向かった。


しばらく歩くと、右手の高台の方にチラチラと火が灯っているのが見えた。


「あそこか?」


俺は三人を見回す。


「そうだろうな」


一若が声を潜めて答える。


ちょうどその頃、東の空が明るくなってきた。そろそろ夜明けか…。

周囲が次第に明るくなり、『桶狭間の山』に今川家の馬印が掲げてあるのが見えた。…ここが本陣で間違いないだろう…と確信する。


「彦二郎。お前、先に善照寺砦に戻って、殿に今川の本陣が『桶狭間の山』に作られているってことを報告してもらえるか。殿は『明日の正午には丹下砦か善照寺砦に入る』と言っていたから、もし善照寺砦に来てないようであれば、丹下砦まで戻ってみてくれ」


「…わかった」


そう言って彦二郎はすぐに手越川に沿って、今来た道を戻っていった。


「さてと、じゃあ俺達は本陣に潜入するぞ。いいか、桶狭間村から手伝いに来た村人風を装うんだぞ」


「おうよ、任せとけって」「頑張ります」


一若と小一郎は、余裕の表情で頷いた。


「よし、行こう」


俺の一言を合図に三人は『桶狭間の山』に登っていった――。




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