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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第二章

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34話 浅野家へ

次の日―。


午前中は城へ行き、貯まっていた仕事を片付けた。午後は外出する旨を同僚に伝え、そのまま清洲の町に出る。昨日の約束通り、浅野家(寧々の家)へ七郎左衛門を迎えに行くのだ。


浅野家(寧々の家)の前まで行くと、入り口に見慣れた少女が立っていた。俺のことを見つけると嬉しそうに駆け寄ってくる。寧々だった。


「藤吉郎様がいらっしゃるとお伺いしたので、お待ちしてました!」


おお…。なんか嬉しいんですけど。


「今日はわざわざ外へ行かずとも、我が家でおじ様とお話していってください」


寧々ちゃんが伏し目がちに少し恥ずかしそうに言う。


「え、でもご迷惑ではないですか?」


うわー、まつ毛長いな…この子。と、全然関係ない事を考えつつ、返答する。


「いえ。母も構わないと言っておりましたし、迷惑なんてことありませんから!ぜひ」

「そうですか…ではお言葉に甘えさせてもらってもいいですか」


こんなにお誘いしてくれるのなら、ありがたく寄らせてもらおう。寧々ちゃんはパッと顔を上げ、満面の笑みを浮かべた。…かわいいな、おい。


「では、どうぞこちらへ」


そう言って寧々ちゃんは座敷へ案内してくれる。座敷には七郎左衛門が居た。


「よう!藤吉郎。すまんな、寧々がどうしてもここで話ししていけっていうからさ。まあ、別に良いだろ?」

「ああ、俺は構わないけど」


「どうぞ、お座りください!今、お茶を持ってきますね!」


寧々ちゃんが俺に席を勧めてから、部屋を出ていく。その様子をじーっと見ていた七郎左衛門が俺の方を見て呟く。


「…あいつ。お前に気があるかもな。まだガキのくせに色気づきやがって」

「は?んな訳ないだろが」


一応、否定しておく。まあ、好意は持たれているのだろうけど、まだ恋愛とかそう言うことが分かる年じゃないだろ。


「ところで寧々ちゃんは何歳なんだ?」


随分しっかりしてるし、旭と歳は近いかもな。


「あいつは確か今は八歳か九歳かな?なんだ、興味持ったか?」


ぐは!旭よりも4~5歳も年下じゃないか!!イヤイヤないない。


「…んな訳ないだろが!」


と、即座に否定しておく。しかし、一瞬チラリと、光源氏という偉大な先人のことが頭をかすめる。…あかん! 青少年保護育成条例、遵守!


「で、七郎左衛門。お前、昨日の落札金額だが、良くあの品質の槍をあの値段で出せたもんだな。驚いたよ」


さりげなく話題を変える。


「ああ、あれね。はは、大赤字に決まってんじゃねーか」


七郎左衛門は事もなげに笑う。しかし、そう聞いてもそれほど驚きはしなかった。品質と価格のアンバランスさを見ると、その可能性もあるだろうと何となく察しは付いていた。


「しかし、なんでそこまでしたんだ?」


そこがイマイチわからなかったので聞いてみる。


「名を売ろうと思ったんだよ。一応、熱田でそこそこの商売は出来る様になったが、後ろ盾も無い俺が商売を更に大きくするにはもう一工夫いると思っててな。そんなときにお前がお誂え向きの案件持ち込んでくれたって訳だ。織田家に武器を納品してます、と言えば絶大な信用ができるだろ。今回はうまく殿さまにも名前と顔を売れたしな。藤吉郎様様だぜ」


「あっそ。まあ、こっちも良い槍を安く買えて助かったけどな。でもあの具足奉行のことだから今後も同じ金額で売れとか言ってくるかもしれねーぞ」


「ああ。もしそれでそのまま御用商人になれるんなら、槍はあの金額で売ってもいいと思ってるんだ。他で儲けりゃいいんだよ。他で」


へー、コイツやっぱり商才あるんだな。損して得とれっていうか、一種のロスリーダー戦略みたいな売り方を感覚的に使ってるんだ。ちょっと感心する。


「失礼します」


そう言って寧々ちゃんがお茶を運んできてくれた。


改めて見ると、随分寧々ちゃんは落ち着いてるなぁ。年齢から言うと小学校低学年くらいってことだろ、信じられん。やっぱ武士の家は躾とか厳しいのかな?少なくとも旭の方が言動は子供っぽいかもしれん。


「おじ様。今しがたこちらの書面が届きましたのでお持ちしました」


そういって寧々ちゃんが、手紙の様なものを七郎左衛門に渡す。七郎左衛門はすぐにその書面を一読すると、「ほれ」と俺にも渡してくれた。


目を通すと、それは先日信長が豪語していた『尾張国内の関所の関税免除の書状』であった。書状の最後には信長ではなく、尾張守護『斯波義銀』の花押が記されていた。


ああ、そう言うことか。その花押を見て信長の考えに得心する。

『尾張国内の関所の関税免除』については、自分が命令を出す訳では無くて尾張守護に命令を出させたということか。


『斯波義銀』…。花押を見つめながら複雑な気分に陥る。


俺が以前助けた岩竜丸が先日元服し、斯波義銀と名を改めたのだ。名ばかり守護として信長に利用されている様子がこの花押から垣間見えて少し心が痛む。俺が那古野城に連れて行ったからこうなってしまったのだろうか…。


…でも、殺されるよりは良いよな…と、なんとか自分を納得させる。


「これで、尾張国内の商売もかなりやり易くなるぜ。やっぱ、藤吉郎様様だな」


俺がなぜか黙り込んでしまったのを見て、七郎左衛門がわざと明るく言った。


「ああ、そうだな!感謝してくれたまえ。引き続き、よろしく頼むよ!」


俺も気を取り直して、わざとおどけて答える。寧々はそんな二人の様子を見て、クスクス笑っていた。


その後しばらく七郎左衛門と話をして、暗くなる前に浅野家を辞去した。


こうして、久しぶりにゆっくりと過ごせた一日は夕焼けと共に静かに暮れていった。


・・・・・・・・・・・


競争入札が終わってからは大きな事件もなく比較的穏やかな日が続いた。

前田又左衞門が算盤を教えろと言うので、仕事が終わった後は又左衞門に算盤の家庭教師をする日々が続いた。


おかげで又左衞門とはかなり仲良くなった。算盤の指導中、雑談をすることもあったのだが、その話の中で実は同じ年齢だったことが発覚し一気に二人の距離感が縮まったりもした。


「なんだ。じゃあ、俺に敬語で話す必要ないじゃないか。堅苦しいからやめろよな」


又左衞門のこの一言で、それ以降はお互いタメ口で話すようになった。


又左衞門はその見た目から目立ちたがり屋のウェイ系かと思っていたが、実際に話をしてみると「しっかりと出納管理が出来る様になりたい」とか「漢文を読める様になりたい」とか、実はかなり勉強熱心な奴だった。人って見た目に寄らないな~と思ったのはココだけの話…。




しかし、そんな平穏な日も長くは続かなかった。


その翌年、信長の正室『濃姫』の父で実質的な美濃の領主であった斎藤道三が、息子の斎藤義龍に攻められ戦死したのだ。


この事により尾張と美濃の同盟が崩れてしまい、そこを好機と見た尾張国内の信長の対抗勢力である『織田伊勢守家の織田信安』、『信長の弟の織田勘十郎信行』が表だって信長に敵対し始めたのである。



尾張国内が俄かに騒がしくなってきた―。






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