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転生からの・・・下剋上!!  作者: 緒方理
第二章

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24話 清洲へ

俺の初陣となった戦は、信長軍の勝利で終わった。


「織田信友」は多くの家臣を失い、ついに次の年(天文24年)、信長のおじである「織田信光」に謀殺された。こうして『織田大和守家(信友の家)』は断絶し、清洲城は信長のものとなったのである。


信長は那古野城から清洲城に移ることになり、俺達家来も皆清洲城下へ引っ越すことになった。


「あー、中々村に帰り辛くなっちゃったなぁ…」


引っ越し荷物を運びながら、ちょっと愚痴る。

清洲城と中々村の間には一色川が流れているせいもあり、那古野城ほど気軽に行き来できないのだ。


「仕方がないだろ。ま、出世すれば、家族を呼び寄せられるようになるからさ。しっかり働けってこった」


そう言って笑いながら、一若がバンバンと俺の背中を叩いた。


「ま、そうなんだけどさ…」


コイツなんだか随分大人になったなぁ…と、餓鬼の頃を思い出しながら一若を見る。


「それよりさ、お前。浅野様のお嬢さんとはその後どうなんだよ?」


急に声を潜めて一若が聞いてきた。


「は?べ…別に、どうもこうもないっての」


実はあの初陣の後、寧々にお礼をするという約束を守り、那古野城下の有名な甘味屋に寧々を連れ出したのだった(ちなみにこのデートコースについては一若に相談して決めた)。


寧々はとても喜んでくれ、その後も時々会って、一緒に買い物に行ったりもした。


「なーんだ。それだけ?お前、押しが弱いんじゃないのか?」

「な、何言ってんだ。寧々ちゃんはそういうんじゃねーんだよ」

「じゃあ、どーいうんだよ?」

「うるせー」


などとくだらないやりとりをしていたせいで、引っ越しの片付けは中々捗らなかった。



・・・・・・・・・・・・



次の日―。


清洲城へ初登城の日だ。

那古野城に居た頃と変わらず、一若と一緒に登城する。


一若の役職は『小者頭』だ。城に居る雑用係の『小者』を取りまとめる役目だ。自然、一若の周りには若い青年達が多く、一若の職場はいつも活気があった。


俺は毎朝一若と一緒に登城し、しばらく『小者』の青年達と話をすることを日課にしていた。色々な情報が入ってくるし、若い奴らと話すのはやはり楽しいのだ。


本当は俺の登城時間はもっと遅くていいのだが、このひとときの為に毎朝一若と長屋を出るのだった。


「藤吉郎さん、ちょっといいですか」

「ん?なんだ?」

「最近、足軽衆の方の槍の使い方が乱暴になったような気がするのですが…。以前よりも槍を折ってしまう人も多いし。仕入予算も限られているんで、数がどんどん少なくなっていっちゃって。足軽仲間の皆さんに注意するように言ってもらえないですか。俺らが言うと「手入れが悪い!」って逆に怒られるし…」

「へーそうなのか…。うん、ちょっと言ってみるよ」


こういった職場の相談も受けるし、コイバナをしたりする時もある。他愛ないけど大切な時間だ。


今日もそんな話をしているうちに、そろそろ仕事の時間になってきたので、足軽の詰め所へ移動する。


俺たち足軽はこの詰め所で今日の仕事や訓練の内容を足軽組頭に言い渡されるのだ。

何人かは既に詰め所に入っていたが、組頭はまだ来ていないようだった。



「なー。俺、最近良く槍を折ってしまうんだけどなんでかなぁ?」


さりげなく相談する風に、周りの仲間達にさっそく先程の話を切り出してみる。


「あ、そう言えば俺もこの間、折っちまったっけ…。手元が狂っちまったんだよな~」

「ああ。あれなんだよな、御借槍の長さが色々あってさ、その時によって渡される槍の長さが違う時があるから感覚が狂うっていうかさ。使い辛いよな」

「ああ、分かる分かる」


あ、そっか。そう言えば城にストックされている槍は二間・二間半・三間・三間半って色々種類があったっけ。俺は三間槍しか使ってないから特に気にならなかったけど…。一若が毎回三間槍を確保してくれてたからな…うわ、今度お礼しなきゃな。


「ああ、なるほどな。でも結局どの長さの槍が一番使いやすいかな?」


更に聞いてみる。


「俺は短い方が好きだな」

「いや、でも短いとやっぱり実戦の時に不利じゃないか?」

「そうだな、やっぱり集団戦だと結局長い方が有利だよ。取り回しのし易さは置いといて」

「けど、三間半は長過ぎだろ。槍先が下がるし、上手く扱えん」

「確かに。三間半は体がデカイやつは使いこなせるかもしれんが、普通は三間くらいが使い易いかな」


ほほう。やっぱり足軽戦には三間くらいが丁度いいってことか。他の陣営の御借槍は今もほぼ二間半槍で統一しているし、三間あれば今のところは十分ってことか。


しかし、これは意外にデカイ問題だぞ。できれば全部同じ長さに統一すべきだが・・・さてどうしようかな。


「おい、藤吉郎。何をぼぅっとしておるのだ?お前の今日の持ち場は上段之間だぞ。殿がご登城される前に持ち場についておけよ」

「は、はい!」


結局、解決策はその場では思いつかず、とりあえず今日の持ち場へと向かった。



「今日は上段之間の出入口の警護か」


上段之間とはその城の当主の仕事部屋みたいなもんで、信長はここで来客と謁見したり、家臣と打ち合わせをしたりしている。


念のため上段之間に誰も居ないかを確かめた後、入り口に立つ。



四半刻(30分)ほど立った頃、信長が何人かの家臣を引き連れて現れた。


「よお、藤吉郎!今日はお前が当番か?」

「はい」


いつも通り、信長は気さくに俺に話しかけてくる。


「そう言えばお前、この間の戦の時に又左衞門の事を助けたらしいじゃないか?なあ、又左衞門。この間話してたのはコイツのことだろ」


信長はそう言って後ろを振り返る。すると、家臣たちが並ぶ後ろの方から頭を出していた大柄な男が背伸びして、こちらを見た。


「ああ、そうです!そいつです!よう!この間は世話になったな!」


手を上げてそう言ったのは、あの派手な侍だった。


「あ、はい…」

「やっぱりな」


俺が答え、信長がニヤリとする。


「お前、槍も嗜むのか?なかなかの腕前だったと又左衞門から聞いたぞ?」

「は、はい…少し稽古をしてた時期はありました」

「ほほぅ…」


信長と会話をしつつも、後ろに立っている『鬼柴田』が気になる。このおっさん末森城に帰ったんじゃなかったのかよ?こんなところで立ち話が始まっちゃったもんだから、完全にイライラした顔をしている…怖っ。


「お前、戦の時はどの長さの槍を使った?御貸槍を使ったんだろ?」


信長が聞いてきた。


「はい…三間槍をお借りいたしましたが?」

「ふむ。使ってみてどうだった?」


あ、そう言えば、一若が長槍を作らせたのは信長だって言ってたような…。もしかして効果を知りたいのかな?…そう考え、思ったことを伝えてみる。


「はい。敵方が二間半の槍を使っておりましたので、足軽戦では非常に有利に戦いを進めることができました」

「うむうむ。そうであろう。やはり、三間や三間半の長槍をもっと増やすべきだな。あとで具足奉行に申し伝えよ!」


思い通りの答えだったのか、信長が機嫌の良い声で背後に控える誰かに指示をする。


「…しかしながら」


これは今しかない!と思って言葉を続ける。


「む?」


信長が再度こちらを見る。信長の目を見て、一気に意見を述べる。


「現在、御借槍は二間・二間半・三間・三間半の長さが混在している状況です。毎回長さの違う槍を使うことになる場合もあり、それは足軽衆の訓練の効果が上がらないばかりか、戦での敵との距離感を見誤る恐れがあります。御借槍は全て三間に統一すべきかと存じます」


信長がジッと俺を見る。



「き、貴様ぁ!!!!足軽の分際で殿へ意見するとは何事だっ!!!!!!!」



鬼柴田の咆哮が部屋中に響いた―。










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