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小話 寧々

――藤吉郎様が京の都へお戻りになられてから一月以上経った。


次にお帰りになるのはいつになるのだろう……。


藤吉郎様は織田家の家臣団の中でも特に殿に信頼されていて、出世頭なのだと父上が仰っていた。いつも大きな仕事を任されていて、それを皆が驚くような方法でやってのけるのだ、とも言っていた。


そんな優れた方の嫁である私が跡継ぎを産めないだなんて、藤吉郎様の足を引っ張っているようでとても申し訳なく思っていた。


だから、離縁されても仕方が無いと思っていた……。むしろ自分が身を引くべきだと思っていた。


けれど藤吉郎様が掛けてくれた言葉は想像もしていない言葉だった――。


「俺は子供が居なくても、寧々さんが近くに居てくれればそれで幸せなんです」


私自身を必要としてくれると言ってくれた。嫁としてでも、跡継ぎを生む母親としてでもなく、私自身を必要と言ってくれた。


藤吉郎様と出会えて、私はなんて幸せ者なんだろう。


もう子供が出来ないからと言ってクヨクヨするのはやめにしようと思う。子供が生めなくたって、他にもきっと私にしかできないことがあるはずだ。


別の何かでも良い。私ができることで藤吉郎様のお役に立てるようになろう。


何が出来るかしら?


藤吉郎様は、何か『理想とする世の中』をお持ちのようで、それを実現するために邁進しているようにも見える。私にも何かそのお手伝いができないかしら……。



――そうだ! 藤吉郎様は岐阜の『学業町』を作る時に、いずれは子供向けにも無料の『学校』とやらを作りたいと仰っていたっけ。


『出自を問わず、国中の子供達全てに教育を受けさせたい』って。それがこの日の本の国の為になるって。


このお手伝いなら出来るかもしれない――。


そうだわ。これからは『自分の子供』ということに(こだわ)らないで、国中の子供達を育てる気持ちを持とう。それがいずれは藤吉郎様の理想の世のお役にも立つはず。


うん! なんだかやる気が出てきた! まずは智様に相談してみようかしら。 費用については七郎左衛門の伯父様からお借りすれば大丈夫だろう。




……あら、いけない! 考え事をしていたらもうこんな時間だわ!! もうすぐお義母様もまつさんの所から帰っていらっしゃる頃かしら。


「キヌさん! キヌさん! そろそろお夕飯の準備を……」


あら? 急に立ち上がったらなんだか眩暈が……。気持ちが悪い……。


「はーい……。 まあ! 寧々様!! お顔が真っ青!! 大丈夫ですか!?」


「……ええ。ごめんなさい……急に立ち上がったら眩暈が……」


「と、とにかく! 今、寝床を準備いたしますから、少しお休みください!!」


「ええ、ありがとう……」


いやだわ。せっかくやる気になった所だったのに、急に具合が悪くなるなんて……。まずは体力をつけなるところから始めないと、だわ……。



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