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夢の国  作者: 虎月
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終、現と夢

ふと気付くと、私は寂れた遊園地の前に立っていた。

陽炎の見える暑い中、蝉時雨にぽつんと広がる遊園地。


そうだ。漸く思い出した。

彼女は、まだ見つかっていないのだ。


あれは、私が引っ越してすぐの事だった。

彼女が行方不明になったのだ。

そして、彼女が最後に居た場所が、この遊園地。

それを切っ掛けとしてか、遊園地は廃園となってしまったのだ。


「……巴」


ずっと一緒だと言ったのに。

大人になったら、一緒に来ようとも言ったのに。

私は、何一つ約束を果たせていなかった。


「私、大人になったよ」


一歩、足を踏み出す。

封鎖されている遊園地の入り口に手をかければ、まるで案内するかのように封鎖していた鎖が落ちた。


「巴」


遊園地のドリームキャッスル。

きっと、そこに巴は居るのだと、奇妙な確信があった。

汗を流しながら辿り着いたドリームキャッスルは、外とは違い、寒いとも言える程涼しかった。


「ねぇ、巴。会いに来たよ」


ドリームキャッスルの中を迷いに迷い、そして見つけた隠し扉。

巴が居るのは、きっとこの向こう側。

臆することなく、私は扉を開けた。


「……巴」


中は黴と埃、そして蜘蛛の巣に覆われていた。

部屋の中にあるのは、鉄の処女やラック等の、名だたる拷問器具ばかり。

そして、奥には小さな灰色のような、白い塊があった。


「見付けたよ、巴」


虫の死骸や埃と黴を払い、私はその小さな髑髏(されこうべ)を抱き上げた。

どんなに怖かっただろうか。辛かっただろうか。

変わり果てた親友に、私は寄り添った。

もう、何処にも行かなくていい。

幻影だって構わない。

巴と私は、ずっと一緒にいるのだ。

この遊園地で、永遠の夢の中で、共に。

誰にも邪魔されない、あの世界で。


嗚呼、幻が見える。

巴が、笑ってこっちへ手を差し伸べている。

そっと、私は目を閉じた。

読んでいただきありがとうございました。

全くホラーじゃねぇなおい。


断じて百合ではありません。

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