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四、観覧車
気付けば、空が白んできていた。
薄明るい中、観覧車は静かに回る。
生きた人間と、死んだ人間を乗せて。
「……最後まで一緒に居てくれてありがとうね」
「もう、終わりなの」
「うん」
巴の寂しげな表情は、その言葉が嘘ではないと告げていた。
胸が苦しかった。
出来ることなら、もっと共に居たいのに。
「……巴」
「なぁに?」
「大好きだよ。死んでても、変わらずに」
そう言うと、巴は笑ってこちらへ寄りかかってきた。
繋いだ手は、死者だとは信じられない程に今はちゃんと暖かい。
それが、とても悲しかった。
こんなに暖かいのに、彼女は死者なのだ。
決して共に居ることは出来ない。
ならば、これは夢か、それとも幻なのか。
だんだんと明るくなっていく空を見ながら、二人は何も喋らずに寄り添っていた。
「……私も大好きだよ」
そして、夜が開けた。
観覧車は動きを止め、その中にはもう、誰もいない。
遊園地も全て動きを止め、打ち捨てられた建物や遊具だけが残された。