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三、ミラーハウス
一面が鏡の迷路の中、私だけが映し出されている。
「騙してたみたいでごめんね」
巴が、寂しげに笑う。
ちゃんとそこにいるのに、巴は映し出されていない。
やはり、巴は生きた人間ではなかったのだと納得したが、感じたのは恐怖ではなく、私の中で、誰かが泣き叫んでいるような悲しさだった。
私は黙って首を横に振る。
そうだ。巴は私の友人だった。
何もこんな時に思い出さなくても良かったじゃないか、と心中で呟く。
「死んでても、巴は私の親友だよ」
そう言うと、巴は悲しげに笑った。
「……ありがとうね」
そう言うと、巴は迷路を先導して進み、迷い戸惑いながら私は着いて行く。
出口で巴は笑ってこう言った。
「最後に、一緒に観覧車に乗りたいな」
私は頷き、暑い日差しの中へと確りと手を繋いで出ていった。