動物子供
「これはゴリラに育てられた子供です」
政府の人間が、食事作法を教えられている子供を指差しながら言った。
「これはチーター、これはライオンに育てられた子供です」
「本当に育てられたんですか? 動物が人間を育てるなんて、信じられませんよ」
「それが可能なんですよ。実際、狼に育てられた子供もいましたし、どうすれば育てるか法則性も分かりました」
政府の人間は得意げに説明している。
しかし、子供の姿を見たら、少し可哀想に思えてきた。
「動物に育てさせて、何か意味あるんですか? 無駄なような気がしましたが……」
「とんでもない! このおかげで、ゴリラに育てられた子供は筋力が。チーターに育てられた子供は脚の速さが。ライオンに育てられた子供は仲間以外に対する攻撃性が増しました。スーパー人間ですよ。それに、人の言葉を覚えさせたら動物との意思の疎通方法を知ることができます。この前まで動物と話していたんですから」
これにはさすがに驚いた。
動物と話すことができるなんて、人類の進歩は目覚ましいな。
「すごいじゃないですか!」
「そうでしょう? まぁここまで辿り着くのに子供が食べられたりなど、何万人と犠牲になりましたがね」




