序章ー脈動
【ドクンッ】
心臓の脈動の様に世界が動いた。
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深夜の二時。
咽の渇きで起きた僕は、冷蔵庫の前で立ち止まる。
確かに感じた。
世界が脈動を感じた。
そのままの姿勢で、じっと動かず静かに辺りの気配を窺う。
(地震か?かなり大きく感じたぞ。)
だが、暫く経った今でも特に何も起こらない。
「気のせいか・・・」
自分を落ち着かせる為に敢えて口に出してみる。
自分が何をする為にココにいるのかを思い出して、冷蔵庫の中から炭酸飲料を取り出し、一気に飲み干した。
咽を通る弾ける刺激が、現実感を持たせてくれる。
あと数時間の眠りを求めて、自分の部屋に向かった。
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夜中に起きてしまったためだろうか。
いつもより眠い。
そんな事を考えながら、電車の座席に座りウトウトする。
今日は、ラッキーだ。
隣には、よく見掛ける可愛い女の子が座ってて、良い匂いがする。
それでも眠気に耐えられずに一気に無意識下に引き込まれそうになった時
【ドクンッ】
夜中に感じた脈動を再び感じた。
一気に眠気が覚め、辺りを見回すが周りの人は勿論のこと、隣の女の子でさえケータイを弄るのに夢中になっている。
(やっぱり気のせい?)
そうは思っても脈動をリアルに感じてしまい、鼓動が早くなり落ち着かない。
(くそっ、なんだっていうんだ。)
隣の女の子が気にならない程にイヤな感覚だけが、僕に残った。
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【ドクンッ】
最初に脈動を感じてから、もう6回目。
流石に少し慣れてしまった。
それでも気持ちの悪い感覚に違いない。
学校から帰っても落ち着かずに座ったり立ったり、寝たり起きたりと無駄な動きを繰り返していた。
そして、世界が変わる瞬間が訪れた。