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シークレット・ゲーム  作者: 岩神 シキ
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第一話 ログイン

「………ここ、何処だ?」



半壊したビル。

空を一面灰色に染め上げる雲。

燃え尽きた後の様な、黒い煤の目立つ建物。


 目の前には、見覚えのない景色が広がっていた。


 いや、実際には見た事があるような感じもする。

 さっきまで歩いていた道もあるし、毎日通学路を歩いている時に見る大橋もそこにある。


 ……いや、やはり違う。

 この前建てられたビルが、どこを見渡しても見つからない。


 辺りを見回していると、いつも通っている昔ながらの商店街が目に入った。

 活気があり、毎日食材を買いに来ている場所な為、俺にとっては良く目に着いた。


 とにかく、今の現状が良く分からないから、俺は商店街に向かって歩く。

 あそこに行けば何かと分かるだろう。

そう考え、右手のスマートフォンを握りしめ、何故か重く感じる足を一歩一歩動かして行く。


 ––––––けれど、そこには今は笑い声どころか、足音一つすら無かった。


 その上、驚くほどそこら中の店は破壊されていた。

 店のドア外れ、アスファルトの地面には大きな亀裂が入り、ガラスの屋根は殆ど割れて屋根の役割を成していない。


 この風景はまるで、荒廃した世紀末だ。

そんなのマンガでしか見た事無いけれど、こんな光景は正しく世紀末というジャンルだ。


 いったい、ここで何が起きたのか。


 ボロボロな商店街を抜けると、その時あることに気付いた。

 ……というか、何で今まで気が付かなかっただろうか。


 

「人が……いない」



 その事実は、この身体の周りの温度を一層寒く感じさせる。

 そんなはずは無い。

 その事実を強く否定し、人を探す為にまた歩き始める。


 しばらく歩きながら辺りを見渡すと、建物に立てかけてあるひび割れた鏡が眼に入った。

 そこに映るのは、不思議な格好をした俺。


 周りを調べていた為に気がつかなかったが、上は西洋風な黒い刺繍の入った白いコートと、白ジーンズを着用していた。

 コートには金属でできた肩当が付いていた。


 ここの風景とは不釣り合いな、如何にもファンタジー世界の服みたいな格好をしていたのだ。


 ……正直、コスプレみたいで恥ずかしい。

 けれど、ここには人は居ないからそこまで恥ずかしがる必要は無いというのは分かってる。

 だが、流石にこれは……ちょっとアレだな。



「てか、服まで変わってるってどういうことだ?」



 自分の服装を見つめながら考えていると、突然スマートフォンが白く光り出す。


 ––––––その画面には『ログイン完了』という文字が映し出されていた。













 遡ることたった十五分前––––––



 俺、如月きさらぎ 悠人ゆうとは、高校生になった記念に、今日、親にスマートフォンを買って貰った。


 その後は親と分かれ、一人で家に向かって歩いていく。その道中、どんなゲームアプリがあるかについて調べようとしていた。



「さて、どんなのがあるかな…って、なにこれ?」



 アプリを探そうとした途端、突然メールを受信する。


メールを確認すると、それはあるゲームの勧誘だった。

 ––––––そのゲーム名は、「シークレット・ワールド」


 内容は、「最高のゲームクオリティ!」などの宣伝文句や、「すぐにゲームを始めれば特典として武器・防具を貰える」、というのが書かれている。


ここだけ見れば、結構面白そうなゲームアプリに思えるが、何分なにぶん聞いたことがない。

パズ○ラやモ○ストなら分かるが、シークレット・ワールドなんて、見たことも聴いた事もない。



「………怪しい」



 なんか明らかに詐欺っぽいと思いながらも調べてみると、案外、すぐに表示が出てきた。ネットって便利だな。

 無料な上、利用者からの評価が高い。説明欄を見る限りクオリティが高いのは間違いないらしい。


 利用している人も多いから、少しは面白そうだという気持ちと、スマホを買って貰って多少浮かれいた気持ちとが相まって、つい勢いでダウンロードしてしまう。

 ………それが馬鹿な行動とは知らずに。


 ゲームを起動すると、真っ白な液晶画面の真ん中に「game start」の表示が浮かび上がる。


 迷わずタップすると、画面が目がくらむほど光り出す。そして––––––



「な、眩し……て、なにこれ!?」



 ––––––突然、魔法陣的な物が俺の足元に出現する

 逃げようにも、足が抑え付けられているように動かない。


 魔法陣は回りながら上昇しだし、そのまま俺は呆気なく取り込まれていった。











 そして、今に至る訳だ。



「………はぁ。本当何なんだよ、ここ?」



 見慣れているようで見慣れない、そんな不思議な世界でただ呆然と立ち尽くしていた。


 見ている限り、さっきまでいた元の世界?とは違う世界にいる感じがする。

 それに、変な形の機械や、車輪の回らない何処か近未来的な丸い形をした車などを見ると、この世界は根本的に元の世界とは違うとも思えてくる。


 もう少し調べれば何か分かるのではないかと思ったが、全て探索するのは骨が折れそうだ。

 と言うか、広い。

途轍もなく広過ぎる。

 骨が折れる前に心が折れそうだ。


……疲れて来たな。

仕方ない。少しばかり休むか。


そう思い、腰を下ろした瞬間––––––



 ドオォォォォォン



「ッ!?」



 そんな爆発音が、この街一帯の静寂を消し飛ばすように鳴り響く。

 すると、同時に遠くのビルの上半分が音を立てて崩れ始めた。


 そしてその衝撃により、今度は地面が地震のように揺れる。

 ただでさえ静かだったために、轟音が響いたせいで耳がキーンと鳴り始める。

 何が起きたのかは分からなかったが、これだけは言える。


 ……この世界にも人は存在する可能性がある、と。


 根拠がないから絶対とは言えないが、今の爆発は人意的に起こしたような気がする。

 けれど、自然に起きたかもしれないから、結局のところ人が存在する可能性はゼロに近い。


 それに、この爆発を起こした張本人が存在するのはそれはそれとして危検な気がする。

 ……よし、逃げよう。

 安全の事を考え、とりあえず避難しようとすると、また非現実的な現象が起こる。



「眩し……目が、目がぁぁ!?」



 いきなり前方が眩い程の白い光を放ち、その光の所為で目がまた見えなくなってしまった。

 ……どうやら、この世界は人の視力を潰しに来ているらしい。



「くそ、何だよこれ………ドア?」



 いきなり何も無い空間から、いきなり白く発光した四角い物体が眼前に出現する。

 見る限り、ドアノブがあるからこれはドアと見て間違い無いはずだ。


 ……正直思うのだが、道路の真ん中に小綺麗なドアがあるのは何だかとてもシュールに感じる。

この世紀末な世界観にはとても場違いだ。



「はぁ、次から次へと……今度は何なんだよ?」



 そう呟きつつ、どんな物がその先に有るのか確かめる為に、ドアノブに手を掛ける。

 ドアを開くと、そこにはまたも不思議な世界が広がっていた。


 今いる衝撃的な空間とは打って変わり、透き通るような青い水がガラスの様に透明な床に広がっていた。

 その水面には、雲一つ無い変わりに太陽が浮かんでいる綺麗な青空を映し出している。


まるで海の上に立っているかの様な幻想的な風景が、このドアを境にして存在していた。


 そんな世界に、ただぽつんと。

西洋風な椅子と円形のテーブル。

そして女性が一人、そこに座っていた。


 椅子は二つあり、片方の椅子に女性が座っている。

 髪は白髪のストレート、服装は髪色と同じ色をしており、金の刺繍を施してある純白のワンピースを着用している。


 その姿は、語彙力の足りない俺では言い表わせないが、とても美しいと思えた。

 しばらくすると女性が微笑み、口を動かす。



「………久しぶりね、ユウト」






「………は?」



 ––––––その言葉の意味は、その時の俺は全然分からなかった。

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