少女の追想 2
目が覚めた時、そこにはあり得ない光景が広がっていた。
「……⁉︎」
緊張で、喉が閉まってしまったのか、うまく声が出ない。
ここは何処。なんで、なんでこんなことになっているの?
心の中で問いかけたところで答えてくれる人などどこにもいなかった。
目の前に広がるのは、身体を切り刻まれ無残な姿になった両親と、ぐちゃぐちゃに乱れた家の中だった。
そして、自分の目の前には一つ、血の付いたナイフが置かれている。
「な……なに、これ……」
頭を必死に働かせる、が、現実を受け入れられないという思いもあるのか、あまりうまく働かなかった。
「だから、ハッピーエンドだけじゃないって言っただろ?」
薄暗い部屋の奥に、一人の人物がいた。
顔ははっきりと見えないが、声でわかる。
「ル、ルディ……?」
語尾が疑問系になってしまったのは、その主であってほしくないという願望なのだろうか、そうでないのか。
それすらもわからないくらいロッティの心は乱れていた。
「この"御伽噺"は、夢物語なんかじゃないんだよ」
唐突に、その人物は言う。そして、月明かりに照らされた場所へと歩く。
「何言って……」
「バッドエンドさ」
顔がはっきりと見えた。その顔は見間違えることなどない。森の中で話をしたルディだ。
意識がなくなる前、ルディが独り言のように言った言葉を思い出す。
『…………ハッピーエンドだけじゃない……』
そうすると、こうなることをルディはあらかじめ知っていたのだろうか。だとすると、これは
「意味がわからない……なんなの……?これ、ルディがやったの……?」
「……そうだ」
ルディの返事が来た途端、ロッティの頭に血が上った。
「なんで⁉︎私たちがあなたに何したっていうの⁉︎どうして……」
攻めるように、ルディを追求していく。
「俺が殺した。だけど、正確には違う」
「どういうこと……」
殺したのに、ちがう?
「……シャルロッテとの約束があるんだ。詳しく言うとロッティをこちら側へ引きずり込んでしまう。ロッティ、君を、悲しませてしまう。それだけはしたくないんだ」
会話がかみ合わない。
「ルディ?意味が……意味がわからないよ?なんでお母さんがでてくるの⁉︎約束って何⁉︎本当に……本当にルディがやったの……?夢なら、悪い夢なら早く覚めてよ!」
現実を受け入れられなかった。頭が、身体がそれを拒否している。泣き叫ぶように相手の返事も待たず怒鳴り散らすロッティを、ルディは静かに見つめていた。
「……俺が殺し、俺が殺さなかった」
「返事になってないでしょ!さっきから!殺したのはあなたなのかを聞いているの!ねぇ……嘘でしょ……嘘って、全部夢だって言って……お願い……」
ついに泣き叫ぶこともできず、ただう頭を抱えて蹲ってしまった。
ルディが殺したの?でも、じゃあ殺してないってどういうこと。
理解できないことがぐるぐると頭の中を巡る。
なぜ。なぜ殺されなければならなかったのか。
「ロッティ。君が、君がもし真実を知りたいのなら"御伽噺"を調べるといい。そして、俺を憎めばいい。いや、憎め、恨め。そして……俺を殺せ」
最後の言葉を、力強く、ルディは言う
「ロッティ……俺を、止めてくれ……」
月明かりに照らされたルディの頬を、ひとすじのひかりが落ちていくように見えた。そして、こちらへ近づいてくる。
「ルディ……?」
近づいてくる彼の顔を見上げる。するとルディは身体を屈め、ロッティを見つめた。その顔は今にも泣き出しそうな子供のように儚かった。
「守るから……」
「え……」
「俺が守るから……」
ルディがロッティの身体を包みこんだ。
何もない少年が、何もかも失った少女を包み込む。
彼女にはそれで十分だった。
そして、また世界が暗転する。
ロッティの過去。
このあと、彼女はどうしたのか。
まだ続きますが、よろしくお願いします!