少女の追想 1
***
その日は、気持ちいいくらいの青空だった。
「ロッティ!」
キッチンの方から自分を呼ぶ声が聞こえる。
ロッティは自室のベッドの上で、お気に入りの本にふけっているところだった。
あぁ、今いいところなのに……。
「なーに?」
とりあえず返事をしてから、読みかけの本に栞を挟み、ベッドから起き上がる。本を片手に母のいるキッチンへと向かい声をかける。
「お母さん、なぁに?」
ロッティが来たのを確認してから、母はバスケットをロッティに差し出しながら言う。
「お使いに行ってきてくれないかしら。お母さん今手が離せなくて」
たしかに、母の後ろには作りかけの鍋や料理が置いてある。
「えぇ……」
読んでいる本の続きが気になるのに……。
だが、母の頼みを断るわけにはいかず、ロッティはお使いに行くことにした。
家は村のはずれにあり、買い物に行くにも村まで行くのに一苦労だ。
「んじゃ、行ってくるね」
手に持っていた本を机の上に置き、掛けてあったお気に入りの赤いフードのついた上着を羽織り外へ出て行った。
外に出ると、家の前に一人の少年が立っているのを見つけた。
「あ、ロッティ」
少年はロッティが家から出てきたのを見ると、陽気にこちらへと駆けてきた。
その少年を、ロッティは知っている。
「ルディ、また来ていたの。家に上がればいいのに」
同い年だと思う背格好に、ロッティと似たようなブロンドの髪。ルディと呼ばれた少年は細い首を横に振る。
「いや、いいんだ。ところで、今から買い物かい?」
「そうよ。お母さんのお使いに行くの。……一緒に行く?」
「いや、俺は遠慮しておくよ」
「そう。じゃあ、私行ってくるわね」
「あぁ。気をつけて」
たわいもない挨拶を交わし、ロッティは村へと向かった。
村にある市場はかなり賑わっていた。
「やぁロッティ。買い物に来たのかい?えらいねぇ」
市場にいたおばさんが、優しく声をかけてくれる。
「そういえば、最近シャルロッテの体調はどうなの?」
「今は薬を飲まなくても元気にしているよ。たまにひどくなるみたいだけど、最近は大丈夫よ」
ロッティの母、シャルロッテは昔から体が弱かった。
街医者にもよくかかり、処方される薬を毎日、何種類も飲んでいたくらいだ。
しかし、最近はロッティの言う通り体調は良好。薬も今は必要ない。
「そう、それはよかったわねぇ。ところで、何を買いに来たの?」
おばさんはニコニコしながら聞いてくる。
「このメモに書いてあるものよ。どこが安いかしら?」
ロッティはそう言い、バスケットの中に入っていた買い物メモをおばさんに見せる。
「んー……そうねぇ、あの角に店を出しているところで買いなさいな。私からって言えばまけてもらえるわよ」
言いながらおばさんは右の通路を指差す。
「あと、この辺は私の家にあるから少しあげるわ」
「え⁉︎いいの?」
「ロッティもシャルロッテも頑張り屋さんだからね。おばさんは二人に協力しちゃう」
「ありがとう!」
ニコニコしながら頭を撫でてくれるおばさんに、ロッティの顔がほころんだ。
「じゃあ、先にお店に行ってくるね!」
「えぇ。買い物が済んだら私の家へおいで」
「うん!」
そう言い、ロッティは思う。いい人たちに囲まれて、私はなんて幸せなんだろう、と。
おばさんと一旦別れ、紹介してもらった店へと向かった。
そこの店主はやさしく、おばさんの紹介ということもありかなりまけてもらえた。
おばさんの家で残りのお使いも済ませ、さらに手作りのお菓子までいただいた。
あとは、家に帰って夕飯までに、本の続きを読もう。あの主人公の少女は、これからどうなるのだろう。
小さい頃、母が読み聞かせてくれたような気がするが、その内容はあまり覚えていない。
物語について考えながら帰路につくロッティだったが、途中、行きにもあったルディがいた。
「ロッティ……少し話をしよう」
ルディは真剣味溢れる顔でそう言うと、私の隣に立ち歩き始めた。
「どうしたの?」
「うん……」
聞いてもルディはあまりはっきりした返事はしなかった。が、しばらくしてから口を開いた。
「……ロッティは、おとぎ話を信じるか?」
「おとぎ話?……まぁ、実際にあったら素敵だと思うわ」
今読んでいる本もおとぎ話の類だ。それを好んで読むロッティにとって、おとぎ話とは憧れの夢の世界なのだ。
「そうか、そうだよな……」
隣を歩くルディは、そう言うと、少しだけ視線を下げた。
「なに?突然、そんな話をして……」
「いや、俺はおとぎ話が、あまり好きじゃないから……」
苦笑まじりにそう言うルディ。おとぎ話が好きなロッティにとっては聞き捨てならなかった。
「どうして?素敵じゃないの」
一歩前にでて、一緒に歩くルディの前にでる。
「最後はハッピーエンドなのよ?あぁ、いいお話だったって思いながら本を閉じるの」
「…………ハッピーエンドだけじゃない……」
ルディは独り言のように呟くと、歩みを止めた。
「え?」
その声は小さく、ロッティには聞き取れなかった。
「ロッティ、君は、俺が守るから。大丈夫だ」
「なに言って」
「大丈夫」
ロッティが言い終わるのも待たずにルディは短く答え、ロッティの鳩尾を殴った。
「⁉︎」
「ごめん。ロッティ」
そこで、ロッティの意識は途絶えた。
第3話?です!
少女、ロッティの回想シーンでした!
まだ少し続きますが……おつきあいください!
少し日が空いてしまいましたが、続きはもう少しはやく投稿できたらいいなぁ……と。(笑)
続きも宜しくおねがいします