黒猫連れの剣士
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黒猫を連れた剣士がやってきたと、村の人々は噂をしていた。剣士自体が街にやってくることは珍しくないが、黒猫連れとなると別だ。
黒猫連れの剣士は、周りの奇異の目線に何も言わず酒場に入っていく。
酒場には何人かの客が剣士を確認してから、ひそひそと話し始めた。
「アレが本当に黒猫連れなのか?」
「成りすましかもな……」
そんな声にも耳を傾けず、剣士はカウンターの方へ向かう。その後ろを、漆黒の色をした猫がしなやかについていく。
カウンターには客はなく、店主が手持ち無沙汰に立っていた。
「店主、この店で一番うまい酒を頼むよ」
カウンターに手をつき、注文を頼む。が、
「悪いが、ガキに売る酒はねぇ」
剣士の見た目は店主の言う通り子供だった。年齢は十五〜十六歳くらいだろうか。髪は少年のように滑らかな黒の短髪で、背格好もどう見ても成人ではなかった。
剣士だと分かるのは、背中に剣を背負い、さらに腰にも二本剣を帯刀しているからだ。
「弱ったな……見た目で判断されちまうんじゃあ何も言えないや……」
剣士は酒をあきらめ、店を出て行こうと踵を返して歩き出す。しかし、それを遮るように三人の巨体な男たちが剣士の前に立ちふさがる。
「お前……本当に"黒猫連れ"か?」
巨体の一人が剣士に問う。剣士は何も答えずに男たちを避けて外へ出ようとする。
「ガキ、質問に答えろ」
「……」
「テメェ……!」
三人のうちの一人が、何も答えない剣士に襲いかかった。
巨体に比べると小さい剣士の胸ぐらを掴みあげ、持ち上げる。しかし、それでも剣士は何も言わず、ただ巨体の男を黙って見つめているだけだ。
「…………はぁ……」
不意にどこからかため息が聞こえた。
「質問くらい、答えてあげたっていいじゃない。怒っちゃったわよ。この大男」
声は女のものだった。だけれど、この酒場に女はいない。
「……黙ってろよティノ。口を利いていいなんて誰も言ってないだろ」
黙り続けていた剣士が口を開いた。どこからか聞こえてくる女と会話をしているようだ。
「あー、はいはい。でも、いい加減殴られるかもよ」
「誰とベラベラ話してんだぁ!」
女の言う通り、男は痺れを切らし剣士を持ち上げていない方の手を振りかざす。
しかし、一向に剣士は男の言葉には反応せず、ティノと呼ばれる女の声にしか返事をしなかった。
「無視してんじゃねぇよガキがぁあ!」
巨体な男がその手を剣士に振り落とそうとした瞬間、ふいに持ち上げられている剣士の身体が動く。
思い切り足を振り上げ、巨体の男の顎へと蹴りをかます。
「ぐほぁ⁉︎」
急な剣士の反撃に驚き、顎にまともな攻撃を食らってしまった男は奇声をあげ、掴んでいた手を離してしまう。
空中で蹴りを出し、そのまま投げ出されたにも関わらず、剣士は宙で一回転し、何事もなかったかのように地に足をつけた。
「テメェ‼︎よくもやりやがったな⁉︎」
残る二人が襲いかかってくる、が剣士はそれを難なく避け、店の外へと歩き始める。話を無視され、挙げ句の果てには繰り出した攻撃さえも躱された男たちの怒りはピークに達していた。
「……ティノ」
だが、剣士はその一言だけを言うと先ほどと同じように店の外へと出て行った。
「最後はアタシ任せなのね〜、ほんと」
すると、誰もいなかった場所に、突如、黒い露出の多い服を着、長い髪を後ろに束ねた女が現れた。いや、誰もいなかったわけではないのだ。そこにいたのは、剣士と一緒にやってきた黒猫だった。
「ウ、ウソだろ……?猫が……猫が人間に……⁉︎」
動揺しまくる男たちの前へ、ティノと呼ばれていた猫……否、女性が歩み寄る。
「まぁ、そういうわけだから、ごめんね♪」
そう言い、ティノは巨体な男たちの腕を片腕づつ掴むと、両方を関節の反対側へと捻る。
「ぐあぁあああ⁉︎」
それだけで、残り二人も奇声をあげ膝をついた。
「大の大人が、情けないなぁ……」
崩れ落ちた男たちを見下しながら剣士の後をついていくティノだが、数歩歩いたところでその姿がもとの黒猫へと戻った。
そして、黒猫連れは店を去った。
店内にいた客も、騒ぎを駆けつけてやってきた野次馬たちもその光景に唖然としていた。
酒場をでたところに、黒猫を待っていたのか剣士が壁に寄りかかっていた。黒猫が出てきたのを確認して、剣士は歩き始める。
「ティノ……もう少し目立たないようにできないのか」
後をついてくる黒猫……ティノに対して剣士が周りの野次馬を見渡しながら言う。
「にゃ〜」
その問いに答えたくないのか、YESというサインなのか、ティノはわざと鳴いた。
「……こういう時ばっかり猫かぶりか」
ティノはもう一度鳴くと、スタスタと剣士を抜いて歩いていった。
「お、おい!お前……」
やられていた男のうち一人が店の中からその巨体を乗り出し、街を去ろうとする剣士達に声をかける。
「お前……黒猫連れのレグルス……」
「……俺の名はツバキ。お前たちが思っている奴じゃないよ」
ツバキと名乗った剣士は、それだけを言い店を後にした。
店に残されたのは、酒を飲むことを忘れてしまっている客たちと、やられたままの男たちだけだった。
***
「みつけた」
野次馬の中に、一人の少女がいた。
少女は短く呟くと酒場を去った剣士を追いかける。
「みつけた。みつけた……!」
鼓動が早くなるのを感じる。
「噂が本当なら……私は……」
剣士を追いかける足がしだいに早くなる。
気がつくと、少女はもう駆け出していた。
「"御伽噺"を終わらせてくれる人……やっと……!」
村を出てしばらくした森の道に、剣士と黒猫の姿をとらえた。
確信がつくまでは、こっそりあとをつけようと、少女は木の後ろに隠れながら、剣士達の背中を見つめた。
稚拙な文章第2です。
主人公とその取り巻き、そして今回のkey personの女の子登場!
今後がどうなるのか\\\\٩( 'ω' )'ω' )و ////
黒猫のティノちゃんは一体どういう役回りなのか
今後もよろしくお願いします!