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鴉、誤解される。

兄さんが帰ってきていないことを

確認した上で、ソレを取り出した。


慣れた動作でそのアプリを起動。


無機質な呼び出し画像をボーッと

眺めていた。


手にあるモバイルは

四堂との連絡手段として彼から

渡されたもので出世払いで良いからと

貸し付けて貰ったものだった。


その言葉の裏にはお金を持っていない

俺に気を使って事だろうとは容易に

見当がついたけれど。


兄さんに隠れて使用してるのも

四堂からそうしろと言われたからだった。



無論その理由は聞いた、が


“多分お前とこんな風に連絡を取ってるの

あんまりイイ気はしないと思うから”


とか言う。


兄さんはそんな事、気にしないよって

言ったのに四堂はそう思ってるのは

お前だけだと笑いながら言うから、

特別隠すつもりは無かったのに

ついつい言いそびれて現在に至っている。




『――Hello,あ、レイ?

……ちょ、O now not……』




どうやら誰かと一緒らしく

通話口を押えているようにしながら

四堂が話しているようだ。


「忙しいなら別に良いんだ」


『いや……構わ……ッ、プッ』



「……!?」



唐突に切られた電話。


その直前、笑い声と

“This is mine”って聞こえた。




――女の子の声で。







『悪い、直ぐかけ直せなくて』


四堂からの電話がかかってきたのは

それから約一時間後。


「あーうん、でも急ぎじゃなかったし、

その、えと何時でも良かったのに」


『そうなんだ?』


あの声は女の子だろ?

桐江さんは?もうやめたの?


聞いて良いのか悪いのか

判断がつかなくてその間、

四堂の言葉は上の空。


全然頭に入ってこなかった。



『レイ、どうした?』


「いや、やっぱ良いんだ。

また改めて連絡するから」



そもそも俺は四堂に何を言うつもり

だったんだろうか?


自分の事?


学校の話だっけ?


それとも……それとも?


思考がぼやけてよく思い出せない。


どこかあのまま繋がらなくて良かったと

思ってる自分がいる。



『……変なヤツ』


笑う声が遠くに感じる。



通信が切れて尚、ケータイを持ったまま

画面を凝視している自分に気づく。



……なんだ、そうなんだ。



桐江さんが好きとか悩んでいたのに。

やっぱ一時的なモノだったのか。


そういえば桐江さんの話したのって

何時のことだろう?


とっくに吹っ切れていたとか

全く気が付かなかった。


そうだよな、フツー男なんか好きになんか

ならないし……そうなんだよ……な。



「ハハ……心配して損した」



良かったな、四堂。




――本当に。









三日後、四堂から再び連絡が入った。



『どう、落ち着いた?』


「え?」


『この間、お前おかしかったから』


「俺は何時もおかしいよ」


『本当珍しいな、全くレイらしくない』


『言ってみたら?何か助言出来るかもしれない。

親友だろ?こういう時こそ頼って欲しい』



「……悩み特にない、から」


『了解。

じゃ悩みが出来たらって事で』



「うん……ゴメン」



きっと嘘だとわかっているのに、

四堂はいつだって無理強いをせず、

こうやって必ず引いてくれる。


自分が何を悩んでいるのか

何を言おうとしていたか

ハッキリしない現状の今、


それはとても有難かった。





「……!兄さん!?」



ふと視線を上にやるといつの間に

帰ってきたのか

兄さんが扉の横に立っていた。


「お、おかえ……」


「ただいま。

一応、何度も声かけたぜ?

扉開いてたし声聞こえたから、

悪い……邪魔したな」



「待っ、四堂ゴメン、明日かけ直す!」


『OK』


踵を返して部屋を出ていく兄を追う。


「俺に構わず電話続けろよ」


「兄さん、これは!」


持っていないはずの端末を所持してる

俺に兄さんの声は冷たい。


いや、単に俺が黙っていたことに

対してやましい気持ちでそう聞こえる

のだとしても。


「どうせ送り主から口止めでもされて

いたんだろう?

なぁ、それよりメシ食わせて」


「…………。」


事も無げに言われたそれは、

とうに知っていたという口ぶりだった。


「っすみません、ちゃんと言おうと

思っていました。

タイミングを逸しただけで隠すつもりとか」



「何でそんな必死に言い訳をする?

別にどうでも良いじゃん、そんなの。

お前の年くらいになると

兄弟より友達が良いさ。

俺に逐一報告する義務なんかねぇよ」


「え!?」


どうでも良く無い、

誤解されたくない。


「――何がですか?」


「大事にしとけって事、ソイツだろ?

お前にとっていま一番失いたくない奴」



「それは――!」



目の前の貴方だ!

あの初めて話してくれたあの日から

今の今まで、変わっていない。



「……兄さんです。

四堂は大事な友達だけど

兄さんは誰とも比較にはならない

俺の中でいつも一番なんです」



「………………。」



なのに、



兄さんはそんな俺をただ無言で

見返すだけだった。



もう一つの作品を同時進行で始めました。

本当はイメイラ待ちだったのですが

向こうが遅れているので(いつもの事♪)

先に開始します。

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