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鴉、涙する。

俺はあの日、一生分の運を

使い果たしたのかもしれない。



だから、



もうそれ以上望むのは

身の程知らずなのだと何度思ったろう。





それでも夢見ることを止めれない。








「もうあの人を追うのやめたら?」


「こればかりは

お前の言うことでもきけない」



手に入らないと思うから想いが募る。


近すぎて諦めるきっかけが掴めない。





「……そんなに好きか?」


「ああ、自分でもどうかと思う程好きだ。

俺にはあの人しかいらない」



目の前の親友と話してると

まるで自問自答してるみたいだなと思う。



「どこが好きなんだ?」


「全部」




俺達は似ている。


好きになっていはいけない人を

好きになってる所も

その相手から相手にされていない

その点も。









母親が死んだのは俺が幼稚園だった時。


病名も死因も良くは知らない。


元々身体が弱く、あまり一緒に

遊んだ事なくて唯一ベットで

絵本を読んでもらって

いたような気がするのが僅かに

覚えてるおぼろげな母親の記憶だった。



そして父親は多分その辺りから

変わった気がする。


ハッキリとは断言できないけど

多分、そんな感じだ。


母親と一緒の時の父親の顔は

笑ってる表情しか思い出さないから。




俺は父が怖かった。


当時、お酒の存在を知らなかった俺は

急に変貌する父がどうしてなのか

分からなくて夜になるのが

ひたすら嫌だった。


昼間、どんなに優しくても

夜になり、何かを飲みだした頃

段々別の人のように暴れだしては

俺はいつも殴られた。


時々、祖母達が来て

泣きながら父を止めていたけど、

その時だけで二人っきりになると

また同じことの繰り返し。





どうして俺は殴られるんだろう?



お父さんは俺のことが嫌いなの?



“ごめんさい”と何度、

口にしても許してくれないのは

まだ足りないから?



昼のお父さんと夜のお父さんは

どうして違うの?



他のお父さんもこうやって

夜は子供を殴ってるの?




どうして?どうして!?





怖くて……ただ、怖くて。


昼間、笑いかけてくる父に

笑い返せないほど、その恐怖は

常に付き纏う。



だけどそれとは裏腹に、


何処かで醒めている自分もいて

きっと気が済んだら終わるだろう、

今日は少しでも少ないと良いなとか、

あの嫌な臭いのする飲み物が

この世から無くなれば俺を殴らなく

なるんだろうかと。


今にして思えば

子供ながらに必死に現実逃避を

図っていたのかもしれない。




いつしか俺は何時も

ビクビクしていて父の顔色を

窺う子供になっていた。


そういう態度が身に付くにつれ

人との接触を持つのが苦手になり

気がつけば友達と呼べる人も誰も

いなくなってしまった。



子供に暴力を振るう父に

何度か祖母が俺を

引き取るとか、違う場所に預けるとか

そんな話になる度、父は俺を抱きしめて

何処にもやらないと泣いていた。



抱きしめて泣いていた父を

見て、俺も泣いていた。



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