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鴉、学級委員長になる。

「え??」



黒板に投票結果が表示されていても

まだ信じられない。


俺が?まさか―――



学期始めで各委員会を選挙で。

どこでもやる恒例の行事だけど


今回ばかりは状況が違う。



「俺なんか無理だよ」


思わず立ち上がって

必死に言うのに、



「良いじゃん、やりなよー」


「そそ、多数決だしぃ」


「真面目だから一番合ってんじゃん」



全然取り合ってくれないし、結局


「という事で石川君が

学級委員長で決まり。

頑張ってね、じゃ皆、拍手~」


「ええっ?待って」


担任の号令を合図に

クラス中で拍手がワァーと起こり

俺の抗議は虚しくかき消されてしまった。







「へぇ、学級委員長様か。凄いじゃん」


「全然、凄くないです。

俺なんて無理だって言ったんですけど、

皆きいてくれなくて」


「そうか?皆から適任って

そう言われたんだろ?俺もそう思う。

やるまえから諦めんなよ。

お前なら出来るって、零一」


それまで明日学校に行って

担任の先生にどう辞退しようかと

言い訳ばかり考えていたのに

まるで嘘のようにわだかまりが消えた。


兄さんが期待してくれるなら

頑張ってみよう、そう思えるから

不思議だ。


「――取り敢えず、頑張ってみます」


ヨシ、と頭をポンポンと軽く叩かれた。


兄は励ます時、よくこうやって頭を軽く

手を乗せる動作をする。

その手の感覚と温かさが堪らなく心地

良かった。



その夜、三人での食卓で兄が

俺の学級委員長の話に触れたけど

母は曖昧な相槌を頷くだけ。


あまりにも予想通りの反応で

今更傷つくこともない。


母が俺に興味ないのは

出会った頃から変わらないから。



「そんな事より、朝輝アンタ来年

受験でしょう?どするの?」


「またその話か。

言ったろ?俺、高校でたら就職するって」


とんだヤブヘビだと

ボソリと言ったのが聞こえた。


「駄目よ!今時大学出てないと

就職なんてそうそう無いでしょ」


「俺は食っていければそれで良いんだよ」


「お金なら大学に行けるくらいは

何とかできるんだから、行きなさい。

大体、高校の時だって推薦受けとけば

特待で行けたのに何で行かなかったのよ」


「終わった話、蒸し返すなって。

バスケに飽きてたんだよ、元々

高校まで必死になってやろうとは

思ってなかったからと、

中学の三者面談の時、聞いてたろ。


そもそも将来それで食っていける訳でなし

丁度やめ時だったんだ」


「だからって大学まで――」



「ハイハイ、おわりおわり~

あ、っと零一。

そういえば勉強みる約束だっけ?

食ったら部屋来いよな」


まだ言い足りない母をよそに

兄は話を強引に区切った。



「え?あ、はい」



そんな約束した覚えはない。


が、兄がこの場を濁す口実だと

分かって急いでご飯をかき込む。



「母さん、食器は後で洗います!」


返事のない母を残して俺は兄を追って

急いで二階へ上がった。



「あ、あの……」


一応ああ言われた手前、勉強道具を

持って兄の部屋を訪れてみたものの、


「お前、勉強するんだったら机使えよ」


その言葉の主はベッドに寝そべって

雑誌を読んでいる。


やっぱりあの場を抜ける為のダシに

使われたんだと確認が取れたけど、

折角だし何処でも勉強は出来るからと

宿題を始めることにした。



「……兄さん」


「んー?」


「大学行かないんですか?」


「ああ、面倒臭いしな。

早く働いて金稼ぎたいんだよなぁ」


「どうして?」


「早く独り立ちして

この家、出たいんだよ」



(え……?)


驚いて兄を振り向く。


が、変わらず雑誌を読んでいる

兄の顔は見えない。



(出ていく?兄さんが?)



自分がいま酷く動揺しているのが

分かる。



“家を出る”



頭の中でグルグルその言葉が

回り続けていた。






「――お前も来るか?一緒に」





気付くといつの前にか

それまで雑誌で隠れていた目が

俺を捉えていた。


軽口とか冗談とかそういう類では無く

真面目に俺の反応を確かめているような

言い方だった。



「え……?」




でも今度は別の意味で驚いて

答えられなかった。


明日続きをUP予定。

次回が長いので分割するかもしれません。

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