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最弱の王子様  作者:
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王子様との出会い

より豊かな土地を求めて、国同士の争いが絶えない中、決して領土拡大のための争いを行わず、自国を守るためにのみ武力を行使する国―オリオン。


もっとも、領土拡大を行わないというよりは、行う必要がないといったほうが正確だ。


多くの国は、長年続く争いのせいで荒れてしまった土地を補うべく、新たに豊かな大地を獲得しようと必死になっている。


しかし、オリオンの土地は、領土の拡大など必要ないほど、今のままで十分に潤っている。


オリオンの土地は、争いでどんなにダメージを受けても、不思議とすぐに回復し、まるで何事もなかったかのように豊かな作物が実るのだ。



-----***-----




レオン・ナイトレーは、一か月前まで、王族直属騎士団、第七部隊で隊長を務めていた。


オリオンの貴族の中でも、上位にあげられる名家、ナイトレー家の三男として生まれ、強い魔力と、優れた剣術センスを持ち合わせたおかげで、23歳にして騎士団の隊長にまで登りつめた。


自分で言うのもどうかと思うが、出世街道まっしぐらだった。


…がしかし、それはあくまで一カ月前までの話だ。


一か月前のあの日、レオンはある事件を起こした。


それはもう、これまでの功績など一瞬で吹き飛んでしまう、どうしようもないほどの。


良くて国外追放、悪くて死刑といった処置を覚悟し、厳重な監視のもと、自宅で謹慎生活を送ること数週間。


しかし、昨日告げられたレオンの処分は、今年15歳になるオリオン第5王子、ハイネ・オリオン、通称“最弱の王子様”の専属騎士になることだった。





オリオン第5王子、ハイネ・オリオン。彼が最弱と呼ばれる由縁は二つある。


その一、ひどく体が弱い。


別に、不治の病におかされているといったわけではなく、王子はとにかくよく体調を崩す。


しかも、治るまでの期間が長い。さらに言えば、健康な期間が極端に短い。


体調を崩しては数カ月寝込み、元気になったという知らせを聞いたかと思えば、しばらくするとまた体調を崩したという知らせが入る。


彼が元気でいる期間は、一年のうちに半年あればいいほうではないだろうか。


そのニ、魔力がいっさいない。


オリオンの国王であるゼウス・オリオンの子供は、ハイネ以外、全員が強い魔力の持ち主だ。


中でも、第一王子と第一王女の力は、“オリオンの闘神”と讃えられるほどすさまじく、これまでの戦いで数々の功績を残している。


他の兄姉たちも、この二人ほどではないにしろ、それぞれ強い魔力を持っており、常に戦いの場で活躍している。


しかし、ハイネにだけは、どういうわけかいっさいの魔力が備わっていないのだそうだ。



そんなわけで、ついた名前が“最弱の王子様”。


「お待ちしておりました、ナイトレー様。どうぞこちらへ、王子のお部屋までご案内させていただきます。」


王子との顔合わせのため城へ出向くと、門で一人の少女に声をかけられた。


歳は、17,8といったところだろうか。水色の髪を三つあみでおさげにした少女は、ノエルといい、王子の世話役をしているとのことだった。


「ノエル、ハイネ王子は体調を崩されていると聞いていたんだが、もう元気になられたのか?」


「はい。数日前までは、起き上がるのもつらそうなご様子だったのですが、今日はお顔の色も良くて、だいぶお元気そうです。お医者様に、“まだ絶対安静に!”とは言われているんですが。」


そう言ってはにかむノエルからは、王子が元気になってくれて本当に嬉しいという思いが伝わってくる。


ハイネは、王宮内の人間とあまりうまくいっていないという噂を耳にするが、どうやらノエルとは友好な関係にあるようだ。


「でもハイネ様、ちょっと目を離すとすぐに無理をなさるんですよ。だから今日も、心配してシリウス様とスピカ様がお見舞いにいらっしゃっていて…」


「ちょっと待て。」


「はい?」


「誰と誰が来てるって?」


「ですから、シリウス様とスピカ様が。」


「………………。」


シリウス様とスピカ様がお見舞いに来ている。


それはすなわち、あの二人が今ここに来ている、ということだ。


オリオン第一王子、シリウス・オリオン、第一王女、スピカ・オリオンが。


今日は、ハイネとの顔合わせだけで、正式に騎士として仕えるのはまだ先ということだったので、軽い気持ちでいたのだが、急に事のハードルが上がってしまった。


まさか、オリオンの二人の闘神に会うことになろうとは。


心の準備をしようにも、時すでに遅し。王子の部屋はもう目の前だ。


「ハイネ様、ナイトレー様がお見えになりました。」


ノエルが、控え目なノックと共に、部屋に向かって声をかけた次の瞬間、勢いよく扉が開かれた。


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