第一話 Xが変わり異世界転生?!因果律 贖罪 愛 開花
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これは完全にフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。
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真っ白な背景に三匹の龍がお互いの尾に噛みつき輪になっている
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光をも吸い込み逃がさない嵐のような漆黒の闇の中
男性の怒号
子供の泣き声
女性の何かを守るように抵抗するような叫び声
子供の泣き声は頑張って泣かないように我慢する声へ
いつ終わるか分からない怒号と抵抗するような叫びと泣かないように抗うような泣き声
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目の前は薄暗い部屋の天井
心臓の鼓動
再び目を閉じる
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カキィーン!
青い青い空へ吸い込まれる白球
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マウンド上でガックリと肩を落とす背番号1のピッチャー
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嬉しそうに左腕を挙げながらダイヤモンドを回る背番号1の体格に恵まれている長身の選手
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満員のスタンドから青い空へ
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今にも嵐がきて豪雨が降り出しそうなドス黒い曇り空
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佐藤
教室の外は暗雲立ち込めている
教室の中も暗い
腰まである艶のある黒いロングヘア、140センチぐらいの小柄で細身で童顔、一見子供に見える女性は、気だるげな雰囲気を醸し出しどこか疲れた口調で
「どうも。新監督の田中万里愛だ。よろしく」
そう言った後、敬礼した
パッと見170センチぐらいでヒョロヒョロに見える体格、金髪混じりの白髪、前髪でほぼ目が隠れていて表情が分かりにくい男性は猫背を少し伸ばし
「…はじめまして…新コーチの鈴木です…よろしくお願いします…」
とボソボソと言った後、最敬礼した
田中は満面の笑顔になったが、淡々とした口調で
「それでは、早速なのですが…皆さん…」
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雷光と轟く雷鳴
雷の影響か学校は停電し教室の電気が消える
薄暗くなってしまったので田中の表情は見えないが淡々とした口調で話は続いていた
「…し合っていただきます」
更に激しい稲光と轟き続ける雷鳴
一瞬笑っているようにも見えた
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学校の階段
佐藤は階段を上がっている
そこに田中が通りかかる
段違いで田中の方が佐藤より高い位置にいる
佐藤は階段を登り切る前に立ち止まって挨拶をした
田中は口に棒付きの飴をタバコのように咥え飄々とした口調で
「オォ!佐藤くん!ちょっとちょっと…」
伏目がちな佐藤は田中と目を合わせないが普通に受け応えた
「はい。何でしょう?」
田中は周りを気にするそぶりを見せながら一枚の紙を見せながらコソコソ話出した
「この問題の式、よく解けたな?キミ、やっぱり頭良いな!この式解けるんだから他も余裕なはずだが?」
佐藤はその紙から目線を外さず特に感情も無く
「頭良く無いですよ…。特に好きな教科も無いですし突出して成績良い教科もないですし…」
田中は優しい眼差しで見つめ佐藤の頭をヨシヨシしながら
「ご謙遜しなさんな!キミは頭良いよ!この式解けるなんて!いやーフィルター問題出しといて良かったー!フェルミクエスチョン的な!うんうん!」
テンション高めで一人で嬉しがっていた
佐藤は特に引くそぶりもなく
「ありがとうございます。ただのまぐれですよまぐれ」
田中は高かったテンションから冷静になり佐藤と目を合わせる
「…そのまぐれを出せたのがある種の証明なのだよ…それにまぐれで解けたとしたら余計にすごい事だ…謙遜せず誇りたまえ…」
そう言うと田中はまたテンション上げ満面の笑みで
「いやー!良い収穫ありましたわー!ま、頑張りたまえ!未来ある若者よ!!結果出したらパンケーキでも食べさせてあげるよ!生クリームは鬼盛りサービスだ!」
と言いながら誇らしげに去っていった
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佐藤は田中が去って遠のいていくのを見ながら
(ちょっと素出してしまったかもな…しくったかも…もう少し喜んでおけば良かったか…それにしてもテスト頑張りすぎてしまったか…なかなか座学のテストで100%出さないようにするのムズイな…また前みたいに常に頑張り続けるのシンドイから気をつけないとな…嵐起きるのもメンドイしまた起きたら過ぎ去るの耐え忍ぶしかないからな…)
佐藤はヨシヨシされた頭を触り
(…それにしても、なんだろ?なんだか懐かしさ感じたな…なぜだ?…ヨシヨシされて褒められたのちょっと嬉しかったな…頑張るのも悪く無いかもな…って高校生なんだけどな….)
佐藤は廊下の窓から青空を見上げた
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放課後のグラウンド
鈴木は佐藤に近寄りボソボソと
「あの式解いたんだって…?」
佐藤は鈴木の肩あたりを見ながら
「はい。ただのマグレです」
鈴木はいつもと違い猫背ではなく背筋が伸び誇らしげに見え、左手で佐藤の頭を軽くヨシヨシし嬉しそうに
「アレはマグレじゃ解けないよ。」
そう言うとすぐに手を引っ込めいつもの猫背のおっさんに戻り校舎へ向かって行った
佐藤はその後ろ姿を見ながらヨシヨシされた頭に手を置き
(…なんだ?…まただ…またなんだか懐かしく感じる…チラッと顔見たらなんだか優しい笑みを浮かべていたような…それにあの眼差し…)
佐藤は校舎に付いている時計を見る
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校舎に付いている丸くて白い時計の黒い秒針が進んでいる
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真っ白な背景に三匹の龍がお互いの尾に噛みついている輪が時計回りで動き出す
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続く