嚆矢濫觴 -参-
最初に口を開いたのは鍛冶屋の男。
「おい、なんでこんな所に呼んだんだ・・・」
俺はオブラートに包まずその問に答える。
「単刀直入に言うが、この中にさっきの遺体で見つかった男を殺した奴がいる」
それを聞いた少女以外の三人は驚き、中でも農家の男は慌てた様子で言う。
「ちょ・・・ちょっと待ってくれ!?じゃあこの中に殺した奴がいるなら俺も危ないのか!?」
「待て、話を聞いてくれ」
慌てふためき逃げようとする農家。男の前に立ち、元の位置に戻る様指示するが青ざめた顔で無理矢理に押し通ろうとするのでやむを得ず力ずくで抑え込み、地面に伏せさせ無力化する。
その様子を見た少女は近寄って来て、俺にかけた催眠術で同じ様に彼も拘束される。
「君、腕がたつんだ」と関心する少女。 まあ警察だからなと思いつつ、農家を立ち上がらせ再び古屋の奥へと押しやり、俺は話を続ける。
「実は犯人の予想は大体出来てるが念の為に確認したい事があるから今から訊問をする」
その言葉にハンターは手を挙げたので俺は質問を促した。
「なぁ、まさかここにいるニコ様も容疑に上げられてるのか?」
「ニコ様?そう言えばその名前一度聞いたな」
ハンターは視線を少女に移し、俺に示す。
彼女の名前だったらしい。様と付けられる程にはどうやらお偉いらしいが、何となく俺が捕まる時や少女に差し入れがあった感じや周りの空気感があったので察しはしていた。
「そうだな、第一発見者はこの子だからな」
「それだけの理由か?ニコ様程の方が態々そんな自らの名を汚す行為されると思わないが」
「どれだけ偉いか知らんが、容疑者の可能性を立場だけが理由で消す事は無い」
ハンターと呼ばれる男は少し不服そうにするが当の本人であるニコと呼ばれる少女はえらく余裕の表情。
まあ俺もこの子がやったとは思っていないが、一応可能性が無いわけでは無い。
「ところで、"ハンター"というのが俺はよく分からないが・・・何をしているんだ?」
それを聞いた4人は驚いた様子でいたが、ハンターは少し何を言っているんだと言いたげの顔で答えてくれた。
「この地に生息するモンスターを狩って、そのモンスターから取れる素材を売って生きているってのが大まかな職だ。 俺は他国から最近この村周辺のモンスターを狩って村への被害を抑えるようにこの村から雇われているから少し事情が違うが」
「モンスター?」と聞き慣れない言葉に聞き返してしまうとハンターは「ああ」と簡単な返事をする。
よく分からないが恐らく生態維持や害獣駆除の狩猟会と言ったところなのだろうか。
「ナイフを扱うのが上手いと聞いたが」
「ああ、モンスターの皮や肉を剥ぐのに使う」
ハンターは背中のホルダーから実際にそのナイフを取り出す、一般家庭にある包丁より少し大きく、血でかなり錆びていた。
「そのモンスター・・・を殺すのに使うのか?」
「いや、俺は大体はこれだな」
そう言うと彼は腰に差していたブーメランも取り出し俺に見せてきた。 あまりの馬鹿馬鹿しさに俺は黙っていられる訳もなく。
「お前俺の事馬鹿にしてるのか?」
「え?はぁ?」と唐突な物言いにハンターは驚き声が漏れ出ていた。
「ブーメランで動物を殺せる訳ないだろ、そのナイフの方がよっぽど殺傷力あるだろ」
「いや・・・魔力を使えば結構強いし、遠距離で安全圏から倒すのが俺のやり方だからな・・・」
気になる単語が幾つか出るが今は殺人に集中するか・・・。
静かに近寄るニコと呼ばれる少女は俺にしゃがむ様に手で指示を出し、俺は言う通りに屈んでやると耳元で静かに言う。
「あの人が犯人と怪しんでいるの?」
「多分違う」
「だけどモンスターを殺し慣れているなら犯行も容易でしょ、この村に倒す事を目的とした生業をしてる人も少ない訳で・・・」
「人とそれ以外では違う・・・。だとしてもだ、態々殺す時に急所を2箇所斬るのは素人の可能性が高い・・・それにだ・・・」
そう言えば最初、この少女に推理を話した時"随分と殺す事に慣れた人間"と言っていたが何を持ってそう思ったんだ?
せっかく近くまで来たのだから聞いてみるか。
「なあ、お前なんで"殺す事に慣れた人間"だと思ったんだ?」と尋ねると少女は答える。
「切り口が綺麗だった」
「切り口が綺麗?」
「どれだけ切れ味の良い剣でも素人が振れば切り口が変になるけど、あの遺体の切り傷はかなり綺麗だった」
そういう理由だったのか、成程確かに素人だろうが人間の急所なんて調べれば簡単だ。だが切り方には歴が出る。
切る場所にフォーカスしていたが切り口の深さから刃物を断定は出来ても切り口が綺麗かまで見ていなかった。
手練であるなら・・・それなら急所を2箇所切った理由をどう説明する?
俺は立ち上がりしばらく考えているとさっきまで黙っていた農家は俺に向かって言う。
「な・・・なあ本当にこの中に犯人はいるのか?」
「そうだな、いるのは確かだが決定打が欲しいって所だ」
「それって俺達に聞いた"刃物を使い慣れている"って所か?」と農家は震えながら言う。
「まあそれもある」
それを聞いた農家は怒鳴った。
「ふざけるな!!刃物なんか使おうと思えば誰でも使えるだろ!それに殺されたロイは何で殺されたのかも分からないだろ!!」
「ロイって言うのか殺された男性の名前は、俺も冷静じゃなかったからな、基本的な捜査が出来てなかったから助かる」
「ああそうさ!!あいつは恨まれるような奴じゃない!!外国から仕入れもしてる上に商売上手な良い武器屋だ!」
「そうか、そのロイって人の人隣は少し分かった」
少し叫んで落ち着いたのか農家は座り込んで項垂れていた。 気を使っても仕方が無い。
俺は彼に尋ねた。
「あんたはナイフが上手く扱えるって聞いたが?」
「ナイフ?あぁ・・・曲芸だよ、飲みの場で良くナイフを5本使ってジャグリングして見せてるからね」
「そういう理由か・・・、であんたは?鍛冶屋のあんた」
鍛冶屋は手作りのタバコを取り出し指から小さな炎を放ち火をつけ吹かしながら答える。
「まあ鍛冶屋だから、基本武器は一通り使えるさ」
指から炎、手品も出来る程余裕か。
俺としてもあまりこの事件長引かせたくない、なんせ犯人扱いで処罰も俺が受ける羽目になるのだから、出来れば早めに犯人でない事を証明として真犯人を見つけなければならない。
我ながら強引な理由で決めつけた三人、主張を聞いても未だピンと来ない。
俺は咄嗟に思いついた悪足掻きを実行する事にした。




