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異世界公安第六課 異能特殊事件対策係   作者: 一二三 イロハ
甲子 《 設立 》
8/10

嚆矢濫觴 -弐-

少女は再び不思議な腕の振るい方を俺に見せると金縛りの様に固まった両腕は自由に動かせる様になる。

催眠術なのだろうか?


少女はピッタリと張り付くように俺を見張るが俺は遺体を横目に周囲の人々の視線に何より少女の目も気になってしまい口に出す。


「なあ、あんまりこんなの見ない方が良いと思うんだが」

「そう言って逃げるつもり?無駄、私から逃れられると思うなら諦めた方がいい」

「随分な言い草だな」


一警察としてはやはりこういった遺体を関わりの無い人間にまじまじ見せるのはどうかと思うがどうも見慣れた様な感じでいる人々に少し狂気を覚える。

こんな状況下に晒され冷静では無かったが、文化や国は違うにしてもさっきから言葉が通じている違和感。 何か自分が想像し得ぬ特殊な状況には違いないが今はこの一件の犯行を調べる事を優先した。


これが解決し、疑いが晴れれば情報も集めやすい。

そんな事件とは関係無い事を考えていると、不意を着くように横から少女の横槍が入る。


「さっきから遺体を見てるがそれで何か分かった?」

「なんでそれをお前に話す必要があるんだ」

「一応言うけど、こう見えて結構私上級職だから」


だからなんだと言いたいがそれは顔に出ていたのか少女は俺の頭を引っぱたく。

痛くは無いがなんでこんな年端もない少女に叩かれ言う事を聞いているのかあまりの不条理に少し怒りを覚えるが、今の俺の立場を考えるとあまり下手な行動は取れない。

この村の人々に慕われているのか度々何かしらの差し入れを貰っている。 お嬢様なのか?とりあえず今は歯向かわないに越したことはない。


「遺体を良く見るに前から首と胸元に刃物で切られた箇所がある。恐らく身内の犯行かもな」

「何故?」

「切り付けられた外傷を見るに刃物は短い。それを近距離でましてや正面から受けてるからだ」

「短い?近距離?何故そこまで分かる?」

「まあよく目にしてきたからな。 お前が持ってる様な身丈ほどある剣で切られれば遠目からでももっと傷口は深いし広がる。

わざわざ遠目から急所を的確に切り付けるのは考えられないし、何より逃げるだろ距離もあれば、それを正面から綺麗に受けた傷って事は害者は相手に油断してる。逃げたなら背中からやられるだろ?背中にそれらしい傷がないって事はそういう事だ」


少女は相槌を打ちながら真剣に俺の話を聞き、実際に彼女も遺体をまじまじと見ていた。 そして話し終えた俺の目を見て次の言葉を待っている。

仕方なく俺は続けて言う。


「短いナイフ、正面から受けた傷、そして重要なのは傷の数」

「傷の数?」

「首と胸だけなんだよ切り傷が、しかも急所に的確にだ。 胸に刺すなら恐らく保険のトドメだろうが・・・。

明確に殺意があるがかなり冷静だ。私怨なら大体の場合はもっと相手を刺したり切ったり過剰に痛めつける」

「つまりこの人を殺した人間は随分と殺す事に慣れた人間で、身内ということ?だけど、正面からというなら拘束して及んだ可能性もある」

「まあ考えられなくもないが腕や足に拘束された跡が無いからまあ有り得無いだろ」

「バインド系統の魔法は?」

「バイ・・・何を言ってんだ?」


バインド?なんだそれ?魔法?何を言ってるんだ。

さも当然に口にする"魔法"、子供の言う事なので真に受けるのも馬鹿馬鹿しい。

俺の推理を話し終えた後、少女は意気揚揚と俺に向け言う。


「これで犯人が絞れた訳だけど、そこからどうやって犯人を特定するの?」


少しワクワクとした表情、まるでこの殺人事件を楽しんでいる様に見え不謹慎だと思うが、少女を説教している暇は今ない。

しかし俺が本当に犯人だった時どうするんだと思いつつ俺はため息混じりに答えた。


「身内の線ならこの村の人間で絞れる。それにかなり殺す事に躊躇が無く手際が良い、死後そんなに時間が経ってないから凶器も見つかるだろ」


少女は関心を示しながら俺の言葉に頷きながら聞く。

大人しく聞いているなと思ったそばで、少女は俺の身体を隅々触りなにかを探している。


「何してんだ」

「いや、武器を探している」

「俺は殺してない」

「とりあえず持ち物を出して」


俺は仕方なく言われるがまま、持っている物を全てその場に広げた。 勿論腰に付けた拳銃付きのホルスターは外さず。


「スマホ、警察手帳、サイフ。後は飴を数個とレシートだ」

「怪しい鉄の板に何か書いている手形に半折の革の入れ物・・・あとは長い紙と包み紙・・・本当にこれだけ?」


1つ1つ物珍しそうに確認作業を行う、現代に置いてどれもそんなに珍しがるものでも無いが子供からすれば確かにとても身近な物でも無いか・・・。

いや、それよりこの少女が身に纏う鎧や剣の方が俺からすれば珍しいが・・・。


何とも言えぬ違和感がずっとあるまま、じっくりと見られている俺の持ち物を「もういいだろ」と取り上げ全てしまうと少女は残念そうに言う。


「不思議な物を持ち歩いているけど、身を守れそうな物が1つもない事が逆に怪しい」

「ここが何処かは知らないが、俺の住んでいる所では武器を持つ人間の方が極小数だ」

「そうか・・・、まあ良い。それらしき武器が無いなら殺したのは君じゃないな」

「凶器を捨てた可能性もあるけどな、さっきも言ったが他人が近寄れる間合いの傷じゃないからそれでも俺が犯人の線は薄い」

「随分と頭が回る」

「まあそういう仕事してたからな」


話を切り良く終え、次に俺は村の人間への聞き込みを始める。

幸いにもここに住む人間は10人と居ない。 細かな聞き込みはせず大雑把に俺は人物の特定に勤しむ。


「ここの人間で武器・・・、特に短剣を扱える人間は多いか?」


この質問を村人全員にするとその中から出て来たのは鍛冶屋の男と農家、そしてハンターと呼ばれていた三人の男が名指しで上がってきた。

隣に付かず離れずいた少女はその様子をただひたすら見守っていたが、少女は遺体の第一発見者。


もれなく武器を持ち合わせている。 怪しくない訳が無いが恐らくこの子では無いだろうと思いつつ加え計4人・・・。


俺は使われていない古屋を勝手に借り、その4人を中に半ば無理矢理入れ、入口の前に立ち訊問を開始する。

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