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異世界公安第六課 異能特殊事件対策係   作者: 一二三 イロハ
プロトタイプ
4/10

3

少女"ニコ"による唐突な誘いに上手く言葉は出ない。

現状を飲み込む事で精一杯なのだから。

少女は言葉に詰まる俺を見て首を傾げる。


「返答は?」

「そうだな・・・、君は何者なのかも俺は知らない」

「だから返事が出来ない?成程。しかし悪い話では無い、それは保証しよう」

「と言われてもだ・・・。名前を聞いただけでは分からない」


どれだけ自信を持って言っているのか分からないが、少女の言葉。見るからに子供であるこの子の話を鵜呑みにするのもどうかと思うが・・・。

現状を見るに嘘をついている風ではない。


「結構名が通っているつもりなんだけれど、異国から来た人間にソレを伝えても分からないのは無理も無い。 私は大都市"カンデラ"に置ける王勅命の先鋭護衛の一人、"祓う剣(しろ)"の称号の名のもとに仕えている」


堂々と腰に差した身丈ほどの大剣を軽々と舞うように振るい少女は凛とした表情で語る。が意味が分からない。


「はあ?」

「カンデラはかなり名のある都市で、その都市の王に命じられ直属の護衛に選ばれている。腕前もそこそこに名は通っているから、私のサインを書けば大抵の融通は効いてしまう」

「幼いのに随分信用を置かれてるんだな」


その一言にムッとした表情へと変わり少女は腰に差し直した剣に再び手をかけた。


「無礼じゃないか?見た目で人を判断するのは? 私はドワーフ、これでも周りよりは背丈は高い方」


ドワーフ・・・分からないが何かの括りなのは分かる。周りという言葉から種族や地域の名称か。


「歳は?」と尋ねると少女はため息をつく。


「しののめ、だった?あなたの国では初対面の女性に歳を聞くのは普通?」

「職業柄特別では無い」

「随分とデリカシーの無い商いだったらしい」

「ほっといてくれ」

「どちらにせよ、幼いと思われるのも中々に癪だから最低でも年相応の扱いを受けたい。 答えよう、25だ」

「俺より歳下じゃねえか」


見た目に反し幼くは無い、明らかに成人のそれでは無い風貌で紛らわしい。


「この歳で国の重役を守る位置にある職を手にするのはまあ若いとは言われるが。古い考えのやつは歳を重んじ胡座をかくから困っている。邪魔な思想」

「悪かったな」

「さて、自己紹介はこれでお互い済んだ・・・と言えるかな?それでどうする?私の元で働くか?」


この彼女の言葉が事実であるなら、今何の情報も資金も無いよりマシになるのは明白だが、あまりにも今は情報が無い。

それは何が正しく何が正しく無いのかも、本来なら聞き込み信ぴょう性を持って判断したい所ではある。


答えに困りしばらく考え混みながら窓の外を眺めると、もう既に夜へと変わり、街の街頭だけが光を灯している時刻。

ニコも窓の外を眺め言う。


「今日はもう遅い、とりあえず近くで一泊するとしよう。ここは簡易的に借りた一室、ちゃんと眠れる宿屋へ案内する」


早速と言わんばかりに彼女は扉を開くが、俺はその場から離れられなかった。

多分だが、今持っている所持金は5万8千円。

恐らくこの通貨も無意味だろう。


「どうした?」とその場から動かぬ俺に彼女は尋ねる。

金が無いと口に出すのが中々に恥ずかしい所もあって俺は直ぐにその返答に答える事が出来なかった。

だが察しのいい彼女は言う。


「ここは好意で借りた小屋、こんな所で寝泊まりも出来るわけもない。しかし見知らぬ地で野宿は耐え難い。なら大人しく宿屋に泊まる他無いが、金が無い。という所かな?」


その通り過ぎるほどにその通りだ。"円"恐らく共通通過ではない。


「安心して良い、金なら私が出す。これは今回の騒動を止めた前借りの給料という事で」

「入ると決めていないのに羽振りがいいな」

「入らなければ貸し付けるまでだから」


小屋を離れてから、特に会話をする訳でもなく、2人街を練り歩いていると一件の建物へと迷うこと無くニコは入る。


迎え口で彼女を見るや否やすぐさま頭を下げる店主らしき人物、何やら他愛も無い談笑をした後に店主は鍵を一つ手渡し、さも当たり前のように彼女は階段を上がっていく。


「おい、金は?」と俺は彼女に尋ねると店主は俺に言う。


「ニコ様からお金を頂くなど出来ません。あの方においで頂いた事こそが何よりの価値なのですから」


仕込まれたかの様な待遇の良さと彼女への尊敬はある意味怪しくも見えるがその答えは彼女が後に語る。

俺は彼女の後を追うと、二階の一室へと入っていく。


「俺の部屋は?」

「ん?私と同室だけど」

「なんで一緒の部屋なんだ」

「この部屋しか借りれないから。とにかく入って」


彼女の言うままに俺は部屋の中へと入ると中々に広い部屋だが寝床である大きなベッドは一つしか用意されていない。


「床で寝ろって事か」

「ベッドで寝れば良い」

「なんで2人でベッドで寝るんだよ、おかしいだろ」

「1つしか無いし仕方ない、それに一人部屋で

急遽二人入るんだから文句も言えない」

「ちょっと待て、そもそも金払ってないんだろ?貸し付ける必要無いだろ」

「金は払ってないが、私の名があればこの宿はしばらく儲かる。ある意味対価ではある」

「何言ってんだ」

「言ったでしょ?私は結構名が通っているって、有名人が借りた宿屋はしばらくは繁盛する」


少し傲慢な気もするが、まああながち間違いでは無い。それは結局自分がいた国・・・というか世界でも同じ現象は起きる。


少しばかり親近感が沸くそんな現象に不思議と安心感を覚えた。


「さて、せっかくだからあなたの話を聞かせてもらおうかな?」


彼女は武装していた鎧を脱ぎ下着姿でベッドに胡座をかきながら言った。

なんともはしたないが見た目はただの少女なので気にもとめない。


「俺の話?」

「異国の人間の話はいつ聞いても面白いしね」

「退屈しのぎにされるのも癪だな」

「まあそうお固くならずとも話していれば私から何か答えられることがあるかもしれない」

「そうだな・・・」


俺は持ち物をとりあえず床に広げニコに見せた。


警察手帳、財布、スマホ、レシートにビニール袋。

後はズボンに付けた拳銃の入ったホルダーだがこればかりは手放せず、手に持って見せた。

彼女はどれにも興味しんしんで目を輝かせ見ていた。

特にビニール袋に拳銃。


「面白いなこの透明の袋」

「そこに一番食いつくのか」

「軽く破けにくい、薄い上にそれに透明。凄い技術」


恐らくスマホが一番食いつくだろうと予想したが、考えても見れば、充電の無いスマホ等ただの鉄の板。それは科学の叡智を集結させた物だと知る由もない。


「この手帳は?」

「自身の身分を証明する為の物だ」

「文字は読めんがそれはカッコイイな、この黒く半折の小物入れとその中の紙やカードは?」

「財布か?お金入れだ。その紙は俺の国の通貨」

「通貨?名前は」

「円」

「聞いた事無い、少なくとも近辺の国で使われる共通の通貨ではない」

「まあ小さい島国の通貨ではあるからマイナーかもな。ここでの通過の名前は?」

「"セレクス"。ところでこのカードは?占いの類い?」

「キャッシュカード。あとはポイントカード」

「何だそれは?」

「1から説明すると面倒臭いな」

「面白い?」

「そんなに、便利ではある」

「この鉄の板は?」


次々に来る質問だがどれもこれも日本に繋がる関連の言葉も技術もそれらしき話も出てこない

。確信に迫る話も無く、俺はこの世界が別の世界であると認識を改め受け入れる覚悟を決める。


「鉄の板だ」

「何か隠してないか?」

「隠す意味があまり無いだろ。俺は自分の国に帰れる情報が欲しいんだ」

「・・・そうか。 まあ隠す、隠さないとなるとまた終わりの無い会話になるからやめにしよう」

「だな」

「あとはその腰に差したやつは・・・なに?あの男にそれを一定の間合いから向けた所を見るに飛び道具?」

「拳銃だ。この国にも同じ武器は無いのか?」

「無くは無いけど、初めて見る形。片手に収まるし何よりコンパクトなのが良いけど、威力は?」

「この国の基準じゃ分からんが俺のいた所ではそこそこだと思う」

「打ってみて」

「簡単に撃つバカがいるか、跳弾したらどうするんだ」


その返答に彼女はつまらなさそうにそっぽ向きベッドに寝転ぶ。 そして急に電池が切れたかのようにそのまま彼女は寝入ってしまった。

一方的ではあるものの互いに気になる話をすればキリがない、清々しい程に自分勝手に話を切ってくれた方がその日は都合が良い。


正直色々あり過ぎて疲れた。このまま床で眠るか。


ふと目覚めた時、元の場所に戻れていないだろうか。 なんて密かに思いながら俺は目を閉じ眠りにつく事にした。

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