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プロローグ



大陸暦一〇一六年・花冠月(春)。


アレストリア王国・王都カヴァレイン。

王宮の大広間。金と緋の絢爛な装飾の中で、一人の青年が静かに跪いていた。

彼の名はレオン=イグレイン。アレストリア王国の第三王子にして、

王位継承権第三位。

「レオンよ、これが本当にお前の意志なのか?」

父王の問いに、青年は迷いなく答えた。

「はい、陛下。私は王位に興味がありません。

人を治めるよりも、人と共に生きたいのです」

その言葉に宮廷は騒然とした。だがレオンは動じなかった。

ただ静かに、己の選んだ道を見据えていた。

それから数日後、彼は王宮を離れ、そこから旅を通じて、旅の終着点として自大陸である南部の辺境――

ルーベンス村の小さな館の領主となり、数年暮らすことになった。

権力を捨て、肩書を捨て、それでも彼には支えてくれる者がいた。

六人のメイドたち。

彼女たちもまた、行き場を失った者たちだった。

――こうして一人の王子は、王都を去った。

その背中を見送った宮廷の人々は、七年後に訪れる嵐を、まだ誰一人として予想してはいなかった。

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