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まさか陰キャの僕が退学しようとしていたS級美少女の心の拠り所になるなんて  作者: 穂村大樹


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第21話 「告白じゃありませんよ?」

「す、好きっていうのは友達としてとかバイト仲間としてってこと?」

「いえ、恋愛的な意味で。ライクではなくラブです」


 こっ、この子、頭おかしくない!?


 学校ですれ違ったりしてはいるかもしれないけど、四季屋君と中ノ瀬さんがまともに関わったのは今日が初めてのはず。

 それなのに、告白するだなんてどういう思考回路してるの?


 告白ってそう簡単にできるものじゃないよね?


「ちょっ、ちょっと待って。中ノ瀬さんって四季屋君とまともに話すの今日が初めてなんじゃないの?」

「まともに話すのは初めてですね」

「じゃっ、じゃあなんで四季屋君のことが好きなのよ!?」

「……四季屋さんはいつも私を助けてくれるんです」


「どういうこと?」と、首を傾げながら訊く私に向かって中ノ瀬さんは話し始めた。


「私、陰キャなのに胸だけ大きくて、それでよくクラスメイトの女の子からイタズラされてたんです。イタズラっていうか、もうイジメですね。机に油性ペンで爆乳って書かれたり、上履きにおっぱいのイラスト描かれたり、お手洗いから帰ってきたら机の上に牛乳の紙パックが置かれてたり」

「……え、なんかしんみり話してるけどこれって笑っちゃいけない話よね多分」

「自分で話してても笑っちゃいそうになるので、笑ってもらって構いません。これが笑い話にできるようになったのは四季屋さんが私を助けてくれたからなんです」

「助けてくれた?」

「はい。放課後、誰もいなくなった教室に落書きを消しに行こうとしたら私の代わりに落書きを消してくれてた人の姿が見えて……それが四季屋さんだったんです」

「……え? 四季屋君が?」


 四季屋君の方に視線を向けると、四季屋君はバツが悪そうに視線を逸らした。


「……はい。それも一回じゃなく毎日のように。四季屋さんと関わったことは無かったですけど、そんなことされたら好きにならないわけなくないですか?」


 …………ああもうっ。

 この男ときたら本当に……。


 私のときもそうだったけど、何なのよその困ってる人を見たら放っておけない性格は。

 その行動をクラスで王子様的存在の爽やかイケメンがとってるなら理解できるんだけど、陰キャで人との関わりを得意としていない四季屋君がとっているとなれば『はいそうですか』と理解できるものではなくなる。


 私だって未だに不思議に思ってるもの。何で四季屋君が私の退学を止めてくれたのかって。


 ……四季屋君の行動は称賛されるべき行動なはずなのに、なんでこんな嫌な気持ちになるの?

 なんで四季屋君の善意が私以外の誰かに向けられていることにこんなにモヤモヤしないといけないの?


 私に四季屋君が誰かに善意を向けるのを止める権利なんて無いはずなのに--。


「しっきーってそういうこと無意識にやってそうだよね。普通は打算的に考えて行動するものだけど」

「見返り求めて人を助けるヤツなんてそういないだろ」

「いやいやーそれが世の中なんですよ。まあしっきーがそう思ってるならそのままのしっきーでいてくれたらいいと思うけど」

「言われなくても変わるつもりはない」

「それよりどうするの? 告白されたからには返事をしないといけないと思うんだけど」


 ……そうだ。

 告白をしたということは、中ノ瀬さんは四季屋君からの返事に期待しているということになる。

 普通の友達として仲良くしているだけでは飽き足らず、一歩先の関係に進みたくて告白したんだ。


 中ノ瀬さん、ちっちゃくて可愛いし、いや大きいんだけど、もしかしたらおっけーしちゃうかも?


 そうなったら私……。


「返事って言われても、今日初めて関わったのにそんなの--」

「--え? 今のは告白じゃありませんよ?」

「「「……告白じゃない?」」」


 またも、五百部君以外の私たち三人の声は綺麗に揃い目を見合わせた。


「えっ、今のってどう考えても告白だったよね? 告白じゃないってどういうこと? 嘘だったってこと?」

「いえ、私が四季屋さんのことを好きという事実を話しただけで、告白はしていません。だって全く関わりも無くてまだ四季屋さんに私がどんな人物かをわかってもらってないのに告白したって絶対振られるじゃないですか。だから今のは告白じゃないので返事はいりません」


 ……いやそれはその通りなんだけどね? 私たちだってそう思ってるから告白をしたことに驚いているんだし。


 ただ、それならわざわざ四季屋君への気持ちをこの場で話す必要なくない?

 まあ話さない理由も無い……のか? 


 ダメだ、中ノ瀬さんの言動が異常過ぎてよくわからなくなってきた。


「うーん……確かに理屈は通ってるだけに反論しづらいね……」

「いつか私が四季屋さんに告白できる私になったら告白しようって思ってます。だから四季屋さん、私のことちゃんと見ててくださいね」


 四季屋君は中ノ瀬さんから向けられた屈託のない笑顔に視線を逸らした。


 四季屋君、困ると視線を逸らすクセがあるわね。


 結局この日は中ノ瀬さんが自分の気持ちを四季屋君に伝えただけで終わったけど、私にとってはあまりにも強大(胸大)な敵が現れることとなってしまった。

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