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十四話 風呂

空きましたが、頑張ります!次回から教育へと入って行きます。

「フィル、風呂いくぞ」


「え、風呂?」


夜ご飯を食べ終えてすぐリアはそう言ってタオルと着替えと靴を俺に投げたのだ。落とさないように受け取り、彼女は玄関のドアノブを握る。


「うちも君も、流石に風呂入らないとまずいだろ。残念だがこの家に風呂はない。この街で皆が共有して使うやつがあるから、そこ行くぞ」


「わかりました」


俺は受け取った着替えを見てみる。この街の人が着てる服とそこまで遜色ない。さっき会ったファーラの色違いのようなものだろう。

リアは俺が出たのを確認するとドアをしめ、彼女もタオルと服を持ちながら外に出る。自然の虫の鳴き声と、静かな会話が聞こえる夜のリバルバ。街は所々光っているが、電気も結構貴重なはずだ。贅沢は言えないのだろう。


「風呂場はあっちだ。覚えとけよ」


「はい。それにしても、こんな服をもらえるなんて。ありがとうございます」


「いいって。うちが遠征中にどっかの場所で拾った新品のやつだからな」


他愛もない会話をしながら、大きな風呂場の施設へとやってきた。ここでは機械と人の知恵で水を温めて風呂を運営しているのだという。外から見れば、自然に少し覆われた古びた施設だが、中は綺麗な感じだ。

この街の人々も、この風呂を楽しんでいるようだ。電気が灯るこの場所に憩いの場として多くの人が来ているのか。


「よし、着いたな。うちは女なんであっち。フィルは向こうの男湯な」


「はい。それでは」


「先に上がったらここで待っとけよー」


そう言い残しリアは風呂場へと向かっていった。俺も男湯の方に入る。脱衣所では何人かの男性がすでに上がっていていたり、またこれから入るという人がいた。俺はその人たちをかき分け開いているロッカーを見つけ、服を脱ぎ始める。


「…はぁ」


自分の体を見る。殴打の跡がまだ残っている。少し青染みて、痣になっていた。肩を落としつつも、タオルを持って風呂へと向かう。

中はあまり大きな風呂場ではないが、この街では希少なお湯だ。俺はその前に、自身の体を簡単に洗いつつ、上からお湯をかけた。


「ふぅ…」


暖かい水が体を駆け巡る。最高に気持ちよかった。


「おい」


「ぅうわぁ!?」


突然横から男の声がかかった。聞いたことある声だ。そこにいたのは素っ裸かのファーラだったのだ。


「ファーラ…さん?」


「てめぇ、名前は?」


「えぇ…?」


教えたじゃないか、というのを俺は喉の寸前で堪え、ぎこちない笑顔で答えた。


「フィルです」


「フィルか」


ファーラはじっくり俺の体を見て、また鼻で笑う。


「やっぱりひょろひょろだな」


「…」


確かにファーラはかなり鍛えられた体だ。少し傷も見受けられるが、いわば戦ってきた勇敢な証でもある。


「やっぱ俺にはわからねぇ。なんでてめぇがコルリアさんに引き取られたのがな」


「…」


「けっ」


そう言い残し、彼は風呂に入った。ただただ一方的に言われたが、特に言い返す言葉もないし必要もないと考え俺はまた湯をかけた。

その後俺も風呂に入る。あまり広くないので、彼とはすこし距離が近い。真四角の風呂の塀に、ファーラは豪快に両肘をかけ湯を味わっているようだ。

他の人達が互いに話してる中、ファーラは俺の方に声をかけた。


「おい」


「ん?」


「てめぇはなにすんだ」


「な、何って?」


「この街でてめぇはどんなことすんだって聞いてんだ。戦闘員か?」


「それは、まだ決めてないです」


「そうかよ」


そうしてまた数秒の間。それを破ったのは彼だった。


「コルリアさんの口ぶり的に戦闘員になるんだと思っていたが、どうやらそうでもなさそうだな。ま、どうあれ俺もてめぇも救われた身だ。恩人にはなにかしらしてやるってのが仁義だろ」


「それは、確かにそうですけど」


「ま、てめぇなりの恩の返し方ってのをすればいいんじゃねえの」


ファーラは立ち上がり、俺がさっきまでいた体を流す方へ行った。結局何が言いたいのか、上手くまとまっていなかったように見えるが、結論「何をするんだ」ということだろう。

俺は戦闘のセンスをリアに買われているようだが、実際戦ったことはない。それにリアの戦闘を見れば見るほど俺が戦えるとは思えなかった。

湯に反射する自身の顔を眺めた。

長い紺色の髪がお湯に浮かぶ。後ろ髪は普段結んでいたが、今は解いている。髪に伝う水が、頬を伝い、湯に落ちる。波紋が広がり、水面がぐちゃぐちゃになる。


「…上がるか」


俺は重い体を湯から上げ、体を拭きながら脱衣所へ向かった。




「…あ、来た。結構長い湯だったな」


「すみません。久しぶりのお風呂で」


「そっか。その服やっぱり似合ってるな。そんじゃ帰るか」


俺はそうしてリアと一緒に家へと戻っていったのだ。


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