学校へ
僕は、道路を必死に疾走していた。息も切れて、足も痛いのに。だが、僕は走る。なぜなら。
「脱ぐなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あはははははははははは!!」
「待ってよぉぉぉぉ!!」
……リサが道路を疾走しながら服を脱ごうとしているからである。頭がどうにかなってしまったのであろう行動をさっきから見せ付けられているが、脱ぐのは流石に危険だ。まだ人通りは少ないが、もう少ししたら多くなるだろう。しかも、このまま行ったら学園についてしまう。それだけは避けたい。
「………………」
「ん?」
僕がそんな事をかんがえていると、急にリサの叫びが止んだ。だが、走り続けたままだ。
(これは、頭直ったかな?)
僕が、そんな甘い考えを抱いていると。
「………………」
「ちょ、リサ!!脱ぐなっ、脱ぐなぁぁぁぁぁぁ!!」
ほっとしたというか悲しいというか。残念なことに僕の方向からは見えないが、リサは服をはだけさせていた。その証拠に、道行く一人の男性の顔が、紅く染まっている。
「……っ!?」
「リサ!!」
すると、運がいいことにリサが道端の石につまずいて転んだ。これはチャンスだと思い、僕はすぐに駆け寄る。腕を掴み、逃がさないようにする。だが、当のリサは。
「………………」
「……気絶してる?」
白目剥いてるや。口も大きく開けて変な顔をしている――って、これは本格的にやばいんじゃないかっ!?
「ちょっ、ど、どうしよう!!」
もちろん僕は今まで平凡に生きてきたわけだから、少女が白目向いて倒れられるという状況に出会ったわけも無く。あたふたとしていると。
「んー……んむぅ……」
「……へ?」
心地よさそうな寝息。僕が下を向くと、リサは目をつぶり気持ちよさそうに眠っていた。これではあたふたとしていた僕がバカみたいで。一つため息をついてから、
「……帰ろう」
帰宅することにした。
「ただいまー」
「霧哉ぁ?どうだったー?」
僕はだるそうに玄関のドアを開け、同じくだるそうに靴を脱ぐ。平日の朝、学校に行く前から疲れるなんて体験は一度もしたことがなかった。
僕はリサを抱えてリビングに入った。
「ふぅ……」
僕はリビングに入るなり、ソファへと腰を下ろしてため息をついた。
「んで、どうだったのよ」
「疲れたよ」
「もっと具体的に教えて」
「もう学校だから、帰ったらね」
「何よそれ」
姉さんが不満な顔をする。僕は疲れた上にこの後学校というめんどくささと気だるさに包まれて、話を続けようとはしなかった。すると姉さんは渋々引き下がってくれて、内心ホッとする。
「じゃ、あたしは仕事行くわ」
「うん……」
疲れたから、見送りする気にもならない。僕は手だけ振って、ソファの上で横になる。
リサは床に寝ている。いちいちソファに上げてやるのもめんどくさく感じたから、そのままだ。
ああ、このまま眠ってしまいそう――
「――っと、危ない」
僕はそう呟いて体を起こす。さっきも言ったように、今日は平日だ。さっきまで走り回っていたからなんとなくそんな気にはならないが、残念なことに今日は学校だった。
「………………」
僕は、黙って制服の袖に腕を通す。リビングには布が擦れる音と、リサの寝息だけが響いている。
着替え終わり、鞄を持って玄関へ。のそのそと靴を履く。時間的には結構やばいのだが、今日くらいはいいだろう。
「行って来ます」
僕は、リサがいるリビングに向けて、挨拶をした。
どうも鵺ですっ。
いつも読んでくださっている皆さん、ありがとうございます。
いつも更新が遅れてしまってすいませんっ(汗)
ですが、これからも書いていきたいと思います。
宣伝なんかも、よろしくお願いしますねっ☆
それでは次話で。