崩れていく
「……その時私は、お腹が減って、何も、できなかった、のです」
リサが、神妙な顔をして、語りだす。雰囲気を出したいのだろうか、区切り区切りで話している。最後の区切り方は、何かおかしいと思うが。
僕は、少し真剣に、リサの話に耳を傾ける。
「ふらふらと歩いていたその時……!」
「その時……?」
生唾は飲まないが、ちょっとしたオーバーリアクション。顔を前に突き出して、聞く。リサは、その反応に満足がいったみたいで、ふふん、と鼻を鳴らした。リサは間を空けてから、口を開いた。
「公園を見つけたのです……!!」
「普通だね……!!」
ダメだ。聞いて損した。なぜ公園を見つけた事くらいで、もったいぶったりしたのだろうか。ただ単に、雰囲気重視で語っているだけなのかもしれない。実はそんなに衝撃的じゃない話だったりとか、するんではなかろうか。そんなオチは嫌だ。だが僕は、そのままの姿勢で、聞き続けることにした。
「そして、公園に入ると……!?」
「入ると……!?」
今度はオーバーリアクションもなしで、神妙さをあらわしているのは、声色だけだ。どうせ次もつまらな――
「ティ○レックスがいたのです……」
「それ普通じゃないよ!!」
――くは、なかった。むしろ、この街の危険を感じ取ってしまった気がする。早く引越しをした方がいいのではないだろうか。
「冗談は置いといてですね」
「冗談だったんだ!?」
騙された。またまた聞いて損した。というか、この街の心配をして損した。平和そのものじゃないか。いや、ティガ○ックスがいると聞いて、信じた僕がバカだったのかもしれない。
僕は、ため息を一つついて、リサの話を聞く。
「すると草むらから、何やらいい匂いがしたのです」
「喋り方戻したね」
「ほっといてください」
怒られてしまった。聞き手は僕なのに。
「そして近づいていくと……!!」
僕は、普通に返す。
「どうしたの?」
「………………」
ジト目で睨まれてしまった。それほどリサにとっては、声色が重要だ、と。雰囲気が重要だ、と。だが、僕は無視して、リサが話し出すのを待つ。リサは、うー、と唸ってから、また喋りだした。
「もういいです……。とりあえず、そこにあめちゃんが落ちていたのです」
「遠くから、あめの匂いがわかる人は凄いと思うんだ」
犬並みの嗅覚ではないだろうか。
「どうでもいい事は置いといてですね」
「僕はどうでもよくない気がするけど」
ギネスブックとかに載せれるくらい凄い事だと思う。草むらの匂いなんてわかるわけないだろう。
「そして、そのあめちゃんを食べて、倒れてしまったというわけです」
「君バカだね」
「人様の事をバカとは何ですか。常識はずれな人ですねぇっ」
「君にだけは言われたくないよ!!」
草むらに落ちている、意味不明で危険なあめちゃんを拾い食いなんて、小さい子でもしないだろう。いくら飢えていても、それはしないだろう。
「そして数時間後、起きた直後に、あなたと出会ったわけです」
リサは上を見上げて、さも完璧に語り終えたかのように、清々しい顔をしている。僕は、全体的にダメな話だと思ったが。
「特に涙は流してないけど」
「あなたが非情なだけです」
「ひどい言い分だね」
「まぁ、そんなどうでもいい話は置いといて」
「今、自分でどうでもいいって言ったよね!?」
「気のせいです」
「はぁ……」
この子と一緒にいると、とても疲れていく気がする。もう、関わらない方が絶対にいい。僕は、リサを帰らせることにした。
「うん、わかった。わかったから、早く僕の家から出て行――」
「ということでここに住まわせてください」
「――って、って言おうとしたのに!!」
「だって住むところないんですもん」
「君の家は?」
「ありません」
無いわけない。もしそうなら、今までどうやって生きてきたのだろうか。というか、女の子を住まわせるなんて、姉さんが許してくれないだろう。
「嘘はよくないよ」
「魔界から来たばっかりで、右も左もわからない状態なんですよ」
「……魔界?」
……この時点から、僕の人生は崩れていくわけだけども。
こんにちは、鵺です。
この小説の更新がとてつもなく遅くて、申し訳ありませんっ……。
頑張っているのですが、他のことをしている時間もありまして、こんなにも経ってしまった……というわけです。
すいません……。
これから、また書き始めていきます!!
それでは、次話で。