その少女は
夜中の三時。
姉さんの説教から開放された僕は。
また、正座していた。
「だから、あなたは“魔王”なのですっ!!」
ビシィィィ!!
そんな擬音が聞こえてくるような動作。
僕を指差すその少女は、とても可愛い。
……さて、さかのぼること数時間。
僕は、そっと自分の部屋の扉を開ける。
というのも、まだ寝ているかもしれないからだ。
誰がって?公園で気絶した少女です。
「起きてますかぁー……?」
僕は、小さい声で聞く。
扉を開けると、そこには。
部屋の中心で立ち尽くしている、少女。
青毛。さっきの子だ。
「……あの」
「きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわっ!!」
急に声を張り上げるもんだから、びっくりした。
しかも今は夜中だ。
近所迷惑にも程がある。
「ちょっと―――」
「キタキタキタキタ!来ましたよ!!ついに“魔王”の近くです!!魔力がハンパないのです!!どこですか!?どこにいるんですか出てきてください!!」
うるさい。
どれだけ声が大きいんだ。
さっきからわけのわからないことを言っていて、ホントに何もかもわけがわからない。
僕は耳を押さえて言う。
「うるさい―――!!」
僕が言った途端。
その少女がこちらを振り向いた。
それと同時に。
「あなたが“魔王”です!!」
「……は?」
何を言っているのかわからない。
アニメの見過ぎだろうか。
魔王?架空の存在だ。
「あの、言っている意味がわからないんだけど」
「だから、あなたが“魔王”なのです!!」
「だから、その意味がわからないっていってんだけど!」
「でも、あなたは“魔王”です!!」
「だーかーらー、それが意味不明だって!!」
「意味不明でも、あなたは“魔王”なのですっ!!!」
「だーかーらー!!!」
これの繰り返しで、数時間を潰した。
んで、今に至る。
「わかりましたか?」
「いえ、まったく」
わかるわけがない。
「だから、あなたは、“魔王”なのです」
またそのセリフ。
何回聞いただろうか。
軽く百は超えるのでは。
「……そもそも、その“魔王”ってなんなの?」
ゲームとかだと、なんかラスボスとかだったりするけど。
ここは現実だ。
ゲームでもなんでもない。
「魔力がとてーも、とてーも高い人の事を言うのです」
「僕はそんな力持ってないけど」
魔法なんか使えない。
MPといったようなゲージも視界の左下には現れてない。
そもそも、魔力なんてものが存在するはずがないのだ。
「あなたからは、魔力をたくさん感じるのですっ。それに、私を助けてくださいました」
「いや、助けるのは当然で」
僕のせいで倒れたのだし。
助けるのは当然。
もし僕のせいじゃなかったとしても、見つけたら助けていただろう。
「これはおじいちゃんのお言葉です。『優しい人は“魔王”だ』と」
それは、この世界の優しい人全員が“魔王”だということなのだろうか。
“魔王”が溢れるこの世界。
……そんなのは嫌だ。
恐ろし過ぎるだろう。
「だから、あなたは“魔王”ですっ」
「……あー、うん。わかった。わかったから、名前教えてくれると嬉しい」
僕は賢い選択を選ぶことにした。
これは相手に話を合わせないと、話が進まない。
せめて名前を聞くだけでも。
「認めてくれるのですかっ!?」
「もう、それでいいから名前」
「やったー、ですっ!!」
その少女が手を広げて喜んでいる。
容姿は僕ら高校生と変わらないようなそれなのだが、仕草がいちいち子供っぽい。
狙っているのだろうか。
「名前教えてよ……」
「ん?私の名前ですか?私の名前はリサですっ!!」
リサ。理沙。理佐。利沙。李左。
なんかいろいろあるから例はこれ以上挙げない。
無駄に頭を使うだけだ。
とりあえず、漢字なんてどーだっていいだろう。
「……んで、リサはなんであんなとこいたの?」
「…………どこですか?」
忘れていやがる。
頭を打ち付けたせいだろうか。
記憶が吹っ飛んだりしているのかもしれない。
「だから、公園の草むら」
「……ああ!!」
「やっと思い出したか……」
どうやら記憶喪失ではなかったらしい。
もし自分のせいで記憶喪失とかになられでもしたら、後味が悪い。
そこは、良かったと言うべきなんだろう。
「これは涙無しには聞けない物語なのです」
「簡潔に頼むよ」
「虫さん見つけたから遊んでた」
「………………」
簡潔に、とは言ったが、僕が聞いたのは“過程”だ。
なぜあんな所にいたのか、と聞いたはずなんだけど。
「……もうちょっと詳しく教えてもらえると嬉しいんだけど」
「あなたが簡潔に、と言ったんじゃありませんか」
「何も結果だけ話してくれとは言ってないよ……」
「まぁいいです。では、もう少しだけ詳しく」
そう言って、リサは目を細くし、上を見上げる。
「……あれは3年前の事でし――」
「あくまでも、簡単にだよ。君の過去とか知りたいわけじゃないから」
「…………………」
リサが、あからさまにショックを受けている。
そんな姿をかわいそうだと思う僕も心の中にはいたが、早く寝たい僕の方が強かった。
多分弱い僕は、心の隅で足を抱えて縮こまっているであろう。
「とりあえず、今日の昼頃からの話をしてくれるかな」
「……わかりました」
リサは、不服そうな顔を作り、ムスっ、としている。
だが、そんな機嫌もすぐに直り、語り始める。
「……あれは、昼頃の話でした」
「知ってるよ」
「………………」
リサがジトーっとした目で僕の方を見てくる。
僕は何も変な事は言ってないはずだ。
「いきなり話の出鼻を折らないでください」
「……あぁ、ごめんごめん。続けて」
「……あれは、昼頃の話でした」
突っ込みそうになる僕の心を押さえ込み、リサの話をに耳を傾ける。
リサが、語り始めた。
こんにちはっ。鵺です。
読んでくださっているみなさん、どうもありがとうございます。
……といっても、まだ人数は少ないのですが。
それでも、感謝感謝です。
さて、最近他の人達の小説が気になり始めました。
そして、昨日ざっと見てみたんです。
“巫女”で検索
↓
自分のを探す
↓
やっとの思いで見つける
↓
それまでに結構な時間がかかった事を確認
↓
絶望
泣いてました。
親にいじめを受けているのかと勘違いされました。
はい、まだ新参者なので読んでもらえないのは当たり前ですが、もっといろんな人に読んでもらえるように、努力していきたいですっ。
では、また次話で。