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友に相談②


恥ずかしさで口ごもりながら、なんとかアランにキスされた日のことを話した。

「素敵、素敵!アランはフローラが好きだったのね!」


うぅん。カミラの言葉に首を傾げる。

「好き、とは言われてないんだよね。しかもその瞬間までよく蔑むような目で見られてたし…」


「それは本人も言っているようにルイスがいたから遠慮してたんじゃない?それか照れ隠し?」

照れ隠しであんなに冷たい態度になるだろうか…これまでのアランの表情を思い出すと納得がいかない。


「でも大変だったのは次の日からで、すきあらば、か、かわいいとか言ってきて。なにより表情と態度が急変しすぎて…」

照れと困惑が入り混じる複雑な気持ちをカミラに伝える。


キスの翌日、こちらは当然意識せざるおえない状況でびくびくしながら職員室で過ごしていた。


すると後ろから

「意識してんの?かわいい」

とアランにささやかれ、耳が赤くなった。


慌てて振り返るとやつは飄々とした、いつも通りの顔で仕事に戻り、余裕なのだ。

おかしくない?普通向こうこそ好きなら意識するでしょ。


それ以降毎日のように、何かにつけてかわいいと言われる。

それに今までと違って、蔑むような視線がなくなり、むしろ優しい目で見られるのでそわそわと落ち着かない。


「かわいいなんてルイスにもまともに言われたことないのに。毎日毎日、なんていうか軽い!本当に思ってたら逆にあんな簡単に言う?」

首をぶんぶんと左右に振りながら訴える。


「たしかにアランてクールな印象だし、言っているところは想像できないけど。でもその分思っていないと言わないタイプだと思うけどな。今まで我慢してた分、発散しているんじゃない?」

カミラが真剣な顔をして言う。


そう言われるとぐっと言葉に詰まる。

我慢はわからないが、学生時代から今の職場を含めた印象で言うと、アランは自分がモテる自覚がある分、相手に勘違いさせないように女子とは一定の距離を保っているところがある。


「でも上げて、突き落とすつもりなのかも。昔から私に当たり強いし…」

女子全般にそっけない態度だが、私に対してはしゃべる代わりに異常に当たりが強かったように思う。

いつからだったか覚えていないが…


「いがみ合ってた気はする」

とカミラもうなずく。

「でしょ。でも引き金を引いたのは私じゃなかった気がするんだけどなぁ」


「でもさ。さすがに人の気持ちをもて遊ぶようなことはしないんじゃない」

たしかにアランは私に冷たいが長い付き合いから言うと、そんなひどいことをするような人間ではない気がする。


思案顔になった私を見て、カミラが少し息を吐く。

「けどルイスとは似ても似つかないもんね。タイプではないか。共通項は頭がいいことくらいじゃない?」


そう言われて思い出すのは私よりほんの少しだけ高いルイスの姿。

ぼさっとした頭にメガネをかけていた。

たしかにスラリと背が高く、どう見てもイケメンのアランとは雰囲気がちがう。


ルイスを好きになったきっかけってなんだっけ…

高等部2年で同じクラスになって、それからすぐ好き好きアピールを私がしていた気がするけど、なんだかはっきり思い出せない。


「男性をかわいいと思ったら沼だって言うじゃない。ルイスはかわいかったから」

頭はいいけど、魔法はぜんぜん強くなくて、ちょっと頼りない弟みたいだったルイスを頭に思い浮かべる。

その点アランは勉強だけでなく、魔法の成績も1番だったし、みんなに頼られる側だった。


カミラが私の言葉に首を傾げる。

「その言葉って本来ギャップを感じた時に使う気がするけどね。男らしい人のある側面をみてかわいい、愛おしいと思ったら沼、みたいな」

「そうなのかなぁ」


短く息を吐く。

「調子に乗っていたと言われればそれまでなんだけど、ルイスと別れるなんて想像したことがなくて。ここ最近はアランのことで落ち込む間もなかったけど、新しい恋をする自分っていうのがピンとこないんだよね」


「調子に乗っていたわけではないでしょ。でもたしかに私も今日聞くまで思いもしなかったし、それはわかるよ」

カミラが悲しそうに眉を下げる。

二人で少ししんみりしてしまう。


しかしカミラが空気を変えるようにパンと手を叩いた。

その音につられて、下り気味だった顔をあげる。


「いずれにしてもさ、何か新しいことに目を向けた方が気が晴れるのは間違いないよ!アランと付き合うかは置いといても、デートしてみたら?」

「デート…」


「うん。まぁフローラとアラン美男美女でお似合いだし、くっついたらうれしいけどね」

ニコッとカミラが笑う。

それにつられて私も笑った。


カミラの言う通り、なにか前向きに取り組んだ方がいいかもしれない。

「よし!誘ってみるよ!」

「そのいきよ!がんばれ!」

えいえいおーと昼下がりのカフェでカミラと二人拳を突き上げた。


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