友に相談①
休日の午後。机を挟み、学生時代からの友人カミラとカフェで向かい合っている。
「信じられない!ルイスのくせにこんなかわいいフローラを振ったの?!」
凄い剣幕でカミラが机をドンと叩く。
紅茶が入ったコップが少しはねる。
それを押さえながら
「ありがとう。そんな風に言ってくれて」
とお礼を言う。
「ほんと許せない。いつの話?」
お怒り気味のカミラが興奮状態で質問してくる。
自分のことのように怒ってくれる友達がいるのはありがたいことだなぁ、とこんな時だが考えてしまう。
「えっと、2週間前」
「2週間?!なんでもっとはやく連絡してくれなかったの?」
カミラに悲しそうな顔で言われて、口ごもる。
「それがいろいろあって…」
「そうよね、2年だもんね。人と話せないぐらい落ち込むよね。私が失恋した時フローラが翌朝までずっとついててくれて、本当にうれしかったからさ。つい、私もと思って」
カミラが眉尻を下げる。
学生の時カミラが彼氏と別れた時は二人で公園で朝まで語り合った。
懐かしさに目を細める。
そんな私の手をぎゅっと握りしめ、
「今からでも遅くない!私が支えるからね!でも失恋に1番効くのは結局新しい恋かも」
「新しい恋…」
握られた手を見つめ、つぶやく。
カミラが力強くうなずく。
「そう。失恋てさ、あなたじゃダメって否定された気持ちになるじゃん。だから結局あなたがいいって選んでくれる人が現れるのが1番心が元気になるんだよ」
「私も今の彼と付き合ってから本当に毎日幸せだよ。職場が一緒だから仕事に行くのも楽しいし。フローラの学校だと…」
カミラが考える。なんとなく手に汗をかいてきた。
「アランぐらいか、年が近いのは」
深い意味はなかったと思うのだが、少し予想していた言葉に咳き込む。
「なに、どうしたの?そんなにいや?アランすっごく人気者だったじゃない」
カミラが目をしばしばさせる。
「そりゃ、フローラはルイス一筋だったから目に入ってなかったかもしれないけど。学年一魔法も強くて、頭も良くて、なによりかっこいいし」
いや、むしろフローラとアランていがみ合ってたっけ?とカミラが首をかしげる。
「というかそもそも、フローラってルイスのどこがよかったんだっけ?」
すごい勢いでしゃべり続けるカミラの今更の確認に笑ってしまう。
「いろいろあるけど頭がいいところ、だったかな」
と答える。
「だよね、だよね!ルイスの取り柄てそこじゃん。でも3年になってからアランに抜かされてたし、そう思うとアラン、いいじゃん」
と目を輝かせる。
興奮気味のカミラの勢いに押されつつ、反論する。
「いや、別に学力で決めてるわけじゃ…頭いい人って努力しているし、話題が豊富で面白いことが多いというか…」
「でもアランも当てはまるよね」
その言葉には反論しようがなく、こくりとうなずく。
「いや、待てよ。あれだけモテてたしアランて彼女いる?」
「いないと思う…」
いないと言っていたし、さすがに今の状況ではいないと思う。
「どうしたの?あ、そんなにアランいや?」
やっと私の様子がおかしいことに気づいたカミラが不安気に言う。
「そうじゃなくて、実は…」
「実は?」
謎にアラン押しが始まり、言いづらくなってしまったが、今日ほんとうは相談したかったのは失恋よりこちらの話である。
なぜならカミラに相談が遅れたのは失恋のショックではなく、新たに浮上した話に私自身が戸惑い、混乱し、それどころではなかったのである。
「アランに、その、アプローチ?されてて」
自分でも今の状況をうまく飲み込めておらず、首をかしげながら言う。
目をぱちくりさせたカミラが一拍おいて
「えぇぇー!」
と声をあげた。




