95話 食べた事の無い食事!!
「ここのスイーツが美味しいと有名らしい」
「す、すいーつ?」
里理が言う言葉の意味が解らずセデルは聞き返す。
「デザート……甘いものだよ、それが美味しいとの評判だ。シェリーさんは来たことがあるらしい……。ブログにも載ってた」
里理が言うと、セデルは再び首を捻る。
「そう言えば……最近、シェリーさんを見かけませんね……」
理恵は思い出したかのように二人に聞くと、ケーラは苦笑いをして里理は溜め息を吐く。
「シェリーさんは関西旅行中だよ。ユニバーサルナントカジャパン……だっけ? そこに塚ファン達と旅行に出たんだよ。君は一緒に住んでいるのに知らないのか?」
「里理様、シェリー様は奥様に内密で行かれましたから……」
ケーラが頬を掻きながら言う。理恵は愕然とする。
「な、何で私には内緒なんですか……」
ケーラは困った顔して答える。
「奥様は……そういった場所に行かれたことが無いと聞いていたものですから……言い辛い……らしかったそうです……」
そんな事にも気を使わせてしまっているのかと理恵は思いながら聞いており、答えに戸惑う事しか出来なかった。
「そんなことより中に入ろう。私も食べてみたいんだよ、カッチャンが創るものより美味しいのか比べたくてね」
里理は自動ドアを潜り、中へと入っていく。セデルは恐る恐るあとに付いていくが、何度通っても自動ドアには慣れなかった。
そして、書いてある文字も読めないばかりか、里理達以外の人が喋る言葉が分からず、ただ、戸惑う事しか出来なかった。
四人は席に案内され椅子に座る。
「セデルさん、好きなものを頼みなよ」
里理は言うが、セデルには文字が読めない。どれが何なのか全く分からず困った顔して理恵を見る。理恵はそれに気が付いて一つ一つ訳していくが、自分も食べたことが無いものばかり……説明に困っていた。
「理恵ちゃん、これはね……」
里理が補足して説明をする。
「セデルさんは魚を食べたことがあるかい?」
「魚は高級料理で滅多に食べることが出来ませんよ……」
「成る程ね、セデルさんが住んでいる場所は、海から離れている場所にあるんだな」
里理はそう言って店員を呼び、適当に頼み始める。
「あれだね、寿司屋にした方が良かったかもね」
理恵に微笑みかけながら言うが、理恵は顔を引き攣らせていた。
「ん? 嫌いなものでもあった?」
「わ、私もお寿司は食べた事が無いや……。あは、あはは……」
理恵は、笑いながら顔を引き攣らせていた。
その頃、ノエル達は……。
「これでも喰らえ!」
掌より炎が現れノエルは敵兵に投げつける。レミーやリーズはビームサーベルで敵を薙ぎ払い、ガルボとルノールはビームガンで敵を撃ち殺して行く。アルスは魔法で壁を作り、一人も逃がさぬようにビームサーベルで敵を斬り払って先へと進んでいく。
「おい、お前達! 敵は戦意を喪失している! 止めるんだ!」
涼介は叫んで止めるように呼び掛けるが、誰一人として動きを止めない。
「な、何だって言うんだ……。まさか克己の命令通りにするのか!」
涼介は急いで街へと戻っていく。暫くして……ノエル達は一人残らず殺し、街へと帰っていった。
「克己! お前は何を命令しているんだよ!」
「敵を逃がすな、全員殺せ……だよ」
「ば、バカ野郎! 相手にだって家族がいるかもしれないだろ! 何を考えているんだ!」
「バカはお前だ。甘っちょろい事、言っているんじゃない! お前の目的を言えよ! お前はこの街を守ると依頼を受けたんだろ、相手には悪いが今回は見せしめだ。俺だっていい気分はしない。それに自衛隊だっているんだ……涼介は戦国自衛隊って知っているか?」
「知らねーよ……」
「自衛隊が戦国時代にタイムスリップする話だよ、そこで自衛隊はどうなったか……」
「それとこれが何の関係がある! タイムスリップの話は関係ないだろ!」
「圧倒的な武器をもってしても、結局は自衛隊が負けるって話してんだよ! この状況が似ているから自衛隊はピリピリしているんだ! だから大丈夫だって俺は示した! 後ろには俺達が控えている、だから普通に仕事をすれば良いって!」
「だからって皆殺しは無いだろ!」
「ここで一人も戻らなければ相手は偵察に来る、そしてここが無事な事を知ってもう一回攻めてくるさ……そしたら自衛隊が撃退して帝国は撤退するはずだ」
「王国側はどうするんだよ」
「帝国が攻めてきているのは知っているはず……。どっかで偵察しに来ているはずだ。もう攻めてこないよ。こっちの圧倒的な力を見たんだから。もし攻めてきても、ここに居る自衛隊が撃退できるはずだ……それに油田は本物だったよ」
「……と言う事は……」
「あぁ、増援が来るって事だ。後はネットワークが上手くいっているはずだから、電波塔を作って道を舗装したりする必要がある……この街は経済的に潤うって事だよ」
「そ、そうか……だがな、克己……こういうやり方は気に入らない……次は止めてくれ」
「考えとくよ……」
涼介は克己の胸倉を放し、部屋から出て行く。
「馬鹿正直な奴だな……だから良い奴なんだけど……。おっと、涼介には話の続きがあったんだった……」
克己はそう言って涼介の後を追いかけていく。
圧倒的な勝利を手に凱旋したノエル達は、嬉しそうに克己を探していた。
「ガルボ、そっちに克己様は居た?」
「いないよぉ。ノエルもしっかり探してよ~」
「探しているじゃん! アルスのチビ助が探してないんだよ」
「探しているじゃん! 何でノエルはいつも私に突っかかるわけ! 喧嘩を売ってるの! そうなら買うよ!!」
二人は睨み合い直ぐにでも殴り掛かりそうな雰囲気になっていた。
「おいおい、止めろよ……可愛い顔した女の子が道端で殴り合いとかさ……」
二人は克己だと思い確認してみたら、それは涼介であり、皆がガッカリするのであった。
「何でそんな反応するんだよ……お前らは……」
「だって涼介さんは千春たちがいるじゃないですか。私達のご主人様は克己様で有り、愛しい人でもあります。……涼介さんでは程遠いですね……」
ノエルは馬鹿にしたように言うと、涼介は溜め息を吐いた。
「ハイハイ、そうだね。克己の方が格好良いよ……。頭も良いしね」
「涼介さん……何かあったんですか?」
アルスが気になり聞いてみる。
「ちょっと克己とね……納得ができなかったんだよ。俺には……」
「今回の件ですか? 涼介さんの依頼主はカラントさんであり、この街ですよね? 仕方ないのではないでしょうか」
「そんな簡単に割りきれないんだよ、俺は……」
「そうなんですか……残念ですね」
「ざ、残念って……」
涼介はアルスの言葉に驚く。
「だって街の平和を勝ち取るには克己様の作戦が有効だと思いますし、意気消沈している自衛隊に任せるわけにもいきません。まずは圧倒的な力を示すのが当たり前ですよ。戦略的に」
アルスが言い終えると、ノエルが続けて言う。
「それに、自衛隊だって次は安心して戦いに行けますし、街の人は自衛隊に尊敬のまなざしを送る事になるでしょう。涼介さんは考えが甘いですよ。やるときは徹底的にやらないといけません」
ノエルが言い終える。涼介は言い返そうとするが、ルノールが続けて言う。
「作戦らしい作戦を立てる事が出来ない自衛隊と涼介さんに責任があるんじゃないんですか? 誰だってこんな嫌な役はやりたくありませんよ。私達だって嫌な役なんですから……。誰かが割に合わない作戦を立てて遂行させないと、この街は全滅するだけですよ? 克己様が協力してくれないとこの街は全滅……あのお姫様だってどうなっていたか分からないですから」
ここまで言われてしまうと涼介は何も言い返せなくなっていた。
「涼介さんはこの街で依頼を受けましたが、克己様の依頼も受けていることを忘れてはいけませよ? 克己様は何も言いませんが、私達は違います。私達は涼介さんと友達ではありませんから……それに、涼介さん……私達と戦って勝てると思っていますか? 克己様のように私達は優しくはありませんよ……」
リーズは冷たい目で涼介を見る。涼介は全員の眼を見ると、皆同じようにいつでも戦闘可能状態だった。
「ば、馬鹿言うなよ……一人でも厄介なのに……六人を相手になんか出来るはずないだろ……お前ら克己のためなら何でもするのを止めろよ……」
「それを千春に言ってから私達に言ってくれますか? 涼介さん」
ノエルが言い終えると、後ろから克己がやって来た。
「涼介、さっきは悪かったな……次はもっとましな作戦を考えるよ」
克己が涼介に言うと、ノエル達は涼介を睨む。
「克己……お前はどんな教育をしているんだよ……」
「は? 何のことだ?」
「別に良いよ、俺も悪かったよ……」
「いやいや、次は気を付けるよ……でだ、この後だが……」
「この後?」
「そうだよ、ぶっちゃけて言うと、自衛隊ではドラゴンに勝てないそれはお前も知っている事だろ?」
「そうだな……」
「でだ、俺達が仕方なしに討伐に行く。そして自衛隊の手柄にしてやるしかないだろ?」
「どうして手柄をやるんだよ……」
「その方が都合良いだろ? 何かあったら俺達を頼らざる得ない状況になる。都合が良い事に馬鹿が一匹いるしな」
「馬鹿?」
「アルスが種を蒔いた。それが芽を出したんだよ……」
克己が言うと、アルスがニヤリと笑う。
「ま、まさか……」
「そうだよ、市原一尉を操ってドラゴンと戦わせる。まぁ、特殊作戦群だから勝手には動かせないと思うけどね」
涼介は呆れながら克己を見ていた。
その後、克己の予測通りになり、帝国と王国側は撤退を始める。街の人たちは喜びの雄たけびを上げ、盛大にパーティを始めた。数日後にやって来た自衛隊は盛大に歓迎され、街の人たちは自衛隊の基地を街に作るよう要請し、街の管理を自衛隊に任せる事にした。その分、報酬を出す代わりに安価で石油を提供したのであった。
「これで街は大丈夫だろう。次は……次の場所ってどこだっけ?」
克己が涼介に聞くと、涼介は首を傾げる。
「理恵たちは帰って来ないし……取り敢えず一回家に帰るか……状況の確認も必要だし……アルス、頼めるか?」
「承知致しました!」
アルスが魔法を唱えようとすると、涼介は先に戻ってくれと言う。
「悪い、小春達と一緒に戻るからお前らだけで戻ってくれないか?」
涼介が言うと、克己は頷きアルスは魔法を唱えて涼介の前から姿を消す。
「さて、金を回収しに行くかな……」
涼介は嬉しそうな顔してカラントのいるお店へと向かった。
克己達は家に到着するなり理恵に電話をかける。だが、電話には中々出ない。克己は少し心配そうな顔をする。
「ノエル……電話に出ないよ……」
克己は泣きそうな顔してノエルを見るが、ノエルは答えることが出来ない。
「い、行き違いに……」
振り絞って出した答えだが、ノエル自身が正解とは思えずにいた。
克己達がオロオロしていると、携帯に着信が入る。克己は慌てて携帯を手に取り確認すると、理恵からの折り返しであった。
克己は急いで電話に出る。
『もしもし克己さん?』
「理恵、モシモシ? じゃないよ! 心配したんだからね! 今どこにいるの!」
『あは、あはは……え、えっと……こ、後楽園……遊園地……です……』
「そ、そんなところで何をやってんの! 握手でもしてんの!」
『あの、そ、その……す、直ぐに帰りますから!』
理恵は慌てて電話を切り、ハミルの顔を見る。ハミルはアイスクリームを舐めており、理恵の視線に気が付いていなかった。
「ハミルさん! い、急いで帰るよ!! 克己さんが怒ってる!!」
「え!! わ、分かりました!!」
ハミルは慌てて魔法を唱えようとしたら、里理が引きとめる。
「二人とも待つんだ、車があるだろ……置いて行くわけにはいかないから車の場所まで戻るよ」
里理が言うと、理恵は慌てて車まで走っていき、里理は溜め息を吐いて克己に電話をするのであった。
里理達は車へと戻り、ハミルが魔法を唱え克己宅まで戻る。理恵は慌てて車から飛び出し、家の中へと入っていく。その光景に里理は少し羨ましそうな目で見ていた。
「お、遅くなりました!」
理恵は息を切らしながら克己の前に現れる。
「この数日間、何をしていたんだよ……。心配するだろ……」
「ご、ごめんなさい」
理恵はひたすら頭を下げる。克己は小さく溜め息を吐き、理恵の頭を撫でる。
「里理ちゃんから話を聞いているから良いものを……」
「さ、里理さんが?」
「状況を説明してくれたよ、理恵も協力してくれようと思っていてくれたのは嬉しいよ」
「あ、あはは……」
理恵は照れ臭そうに笑い、克己を見つめる。
「次は俺の番だ」
克己はそう言って理恵の頭を軽く撫でると、家に入ってきたセデルを見る。
「セデルさん、あんたの希望を叶えるよ」




