60話 次のステージへ!!
森田は異世界側の基地に戻り数ヶ月が経つ。人間が魔物に恐れていた時代が終わりを告げ、平和に生活ができるようになっていた。その理由は、克己が魔王と取り決めをした事により、克己達がいる大陸では魔物が襲ってこなくなったのである。克己と魔王が決めた条約では魔物は農業を営み、生計をたてることにして、取り引き相手は日本だけではなく、海外でも売られる人気ブランドになっていた。
克己と魔王が話し合いを幾度も重ねるうちに、とんでもない事が発覚した。それは放射能が除去できる魔法があったと言うことだった。これを立証すべく、克己と魔王は東京電力立ち会いのもと、とある施設で実験をした。
放射能は見事に除去され、人が住めないと言われていた町は一瞬にして人が住める所へと変わってしまった。
また、原発に使われているプルトニウム等は、魔王の魔法により消滅出来る事もわかり、日本は魔王と独占契約を結ぶこととなった。魔王は日本から日本円を貰うのと、農業のノウハウを学び、魔物達に伝える事によって人間を襲う必要もなくなり、魔物は平和に生活を送ることができるようになった。また、通常の生活でコアも生成されることも分かったので、より一層人間を襲う必要がなくなったのである。
だが、問題もある。魔物と人間が戦闘をしないため、レベルが上がらないと言う事態に陥ったのである。これには魔王も、克己も頭を悩ませるのだが、魔王が洞窟を支配する魔王に相談したところ、協力をしてくれるとの事だった。
これにより、レベルの問題はクリアされ、自衛隊に平和が訪れたのだった。
森田は訓練に明け暮れる日々が続く。
「三曹、お前は確か二十四歳になったよな?」
「は、はい、先日誕生日を迎え、二十四歳になりましたが……どうしたんですか?」
森田は宮川の隊に所属しており、訓練終了時に言ってきた。
「じゃあ、今日は付き合え! 明日は休みだからな、隊の皆で飲みに行くぞ! これは命令だ!」
「本当に二尉はお酒が好きですね……」
「店はどこにするんですか?」
聴いてきたのは緑川二士だ。彼女は医療系のWACであり、年齢は森田よりも一つ上の二十四歳。
「たまにはパルコにある、克己さんの店に行くか!」
宮川がそう言うと皆は喜びながらバスへと向かって、克己の店へと向かった。
「そう言えば三曹、克己さんとは会ってないのか?」
宮川が何気なく質問をすると、森田は動揺して言葉がどもる。
「な、何を言うんですか! わ、私と克己さんは……そ、そんな関係ではありませんよ!」
「だけど休みの日は毎回、あの店に足を運んでいるのだろ?」
「そ、それは……て、店長さん達と知り合いだからですよ!」
森田は休みの日になる度、パルコの街にある克己の店へと足を運んでいた。それは、克己の顔を一目でも見たいがためだったが、あの日以来、克己おろか、奴隷の皆とも会うことはなかった。唯一会うとしたら、里理だけだった。里理は翌日、森田を尋ね謝罪をした。里理は克己に結婚解消を言い渡されたそうで、落ち込んでいた。
「そう……ですか……。克己さんと別れたのですか……」
「うん、別れたと言うより、捨てられたと言った方が一番シックリ来るかもね……。一緒に住むことは赦してくれたけど、それ以外は……」
「か、克己さんは戻ってきたのですか?」
「戻って来たよ、話をして直ぐに出かけてしまったけど……。下手したら……」
「へ、下手したら? な、何かあったのですか?」
「いや、君には関係のないことだった……。忘れてくれ」
森田は忘れられるはずないだろうと思いながら話を聞いていた。
「おい、森田! 何をボケっとしている! 街に着いたぞ!」
里理とのやり取りを思い出しているうちにバスは街に着いたようで、森田は宮川に体を揺すられていた。
バスから降りて、暫く歩くと克己の経営している店に到着し、森田達は個室に案内された。
「こんな場所があったんだ……」
森田は驚きながら個室の中を見ていた。
「やあ、森田ちゃん。いらっしゃい」
里理が奥からやって来た。
「お邪魔しています、里理さん」
宮川達は誰だか分からないという顔して森田を見たので、里理を紹介した。
「あぁ、話は聞いた事があるよ、モフモフ好きの二尉がいるって……。夢は叶ったかい?」
宮川は慌てながら否定し、里理には言わないでくれと懇願する。
皆はそれを見て笑っていたが、森田は店の中を見回していた。
「森田ちゃん、残念だけど、カッチャンはいないよ。出かけているからね」
「ま、また出かけているんですか……何時頃戻られるのですか?」
「さぁ? ここ最近は連絡を寄こさないからね……分からないよ」
「わ、私が来ているのは……知っているんですか?」
「勿論、報告をしているよ」
「ど、どんな反応をしているんですか?」
「さぁ、書類のみでの報告だからね……私は彼がいない間この店を任されているだけだし……私も最後にあったのは先月の話さ、店長は涼介君とは半年も会っていないんだよ」
「りょ、涼介さんもいないんですか……」
「カッチャンと一緒に出掛けているからね……『あっち』に行ったのはアルスとノエル、ハミル、ルノール、そして涼介君の五人だけだから……」
「そうなんですか……」
森田は俯くと、後ろから宮川に怒鳴られる。
「三曹! 注文しろ! 始めるぞ!」
「は、はい! すいません!」
「何かあったら呼んでくれよ、私は事務所の中に居るから」
里理はそう言って事務所の奥へと戻り、厨房の奴隷たちに何か適当に持って行くように命令した。
森田が克己の顔を見るのはそれから数か月後になる。それも本人に会うのではなく、映像の中で見かけるだけだった。
『成田さん、CO2問題をどうにかしてほしいと総理に言われたそうですが……』
「話が早いですね……。どこでそんな話を仕入れてくるんですか?」
『そんな事より本当ですか!!』
「まぁ、そんな話はありましたね」
『ど、どうするつもりですか!』
「そのうちお話しますよ、政府と……」
そう言ってニュースは終わる。森田は克己が変わっていないと思い、その日の訓練は張り切って行う事が出来た。克己が自分の近くにいる……それだけで幸せだった。
それから数週間が過ぎた頃、森田は指令室へと呼ばれた。
「森田三曹、よく来たな……」
「はっ!!」
森田は少し緊張しながら敬礼をする。森田のほかには伊藤、緑川、宮川が呼ばれていた。
「指令、今日はどういった用件でしょうか!」
「うむ、お前達には特別任務を行ってもらう」
「と、特別任務……ですか?」
「あぁ、今回のミッションは危険との話だ……ここでの戦闘経験が豊富なお前達に任せるのが一番の得策だと思ってな」
「き、危険……なのですか?」
「私はそう聞いている」
「聞いていると言う事は……」
「荷物を纏めたら異世界側の入り口に向へ! 説明はそこで行う、以上!!」
四人は敬礼をして急いで指令室から出ると、溜め息を吐いた。
「特別任務とかマジ勘弁して欲しいよ……」
宮川は天を仰ぎながら言う。
「どんな任務なんでしょうか……」
緑川が宮川に聞くが、宮川は首を横に振る。
「危険と……言っていましたね……この大陸で危険な場所っていうと、洞窟でしょうか……」
伊藤が森田に話しかける。
「可能性は無きにしも非ず……ね……嫌だな……パルコの街に行けないのは……」
「愛しの君に会えないからか?」
「そ、そんなじゃありませんよ……それに……あの日からまったく会えていませんし……」
森田は俯きながら言う。
「まぁ、そんな事はどうでも良いが、早く準備して入り口側に行くぞ」
宮川がそう言うと、三人は急いで自分達の部屋に戻り、荷物を纏め始めると上官が部屋にやってきて遺書を書く様に言う。
「い、遺書……ですか……」
『そうだ、書きたくなければ書かなくて良いが、何が起こるか分からないからな……』
「そ、そんな危険な場所なんですか……?」
『我々はそう聞いている、出来たら持って来い! 書かなくても報告だけはしろ』
上官はそう言って部屋を出ていき、森田は筆をとり遺書を書き始めた。
最後に克己に向けて一筆書き、同じ封筒に入れて上官に渡した。
『随分と袋が厚いな……。語る事が多かったのか』
「まぁ、そうですね……。できれば恥ずかしいので死にたくないです」
『皆そうだろ……普通は』
そんな話をして森田達は入り口へと向かった。
入り口付近に近づくと、人影が見えてきた。
「二尉、人影が見えます! もしかして彼らが指令の言っていた人達ではないでしょうか?」
「多分そうだな……。六人程いるな……」
宮川達は徐々に近づいていくと見た事のあるシルエットで、森田や宮川は驚きの声を上げた。
「か、克己さん!!」
森田は大声を上げて克己を呼ぶ。
「ん? あ……森田ちゃん? ……そうか、そりゃそうだよな……」
克己はそう呟き、軽く手を振る。森田は全力ダッシュで克己に飛びつき、克己を押し倒す。
「何処に行っていたんですか! 心配したじゃないですか! あんな別れ方で納得できるはずは無いでしょ! 私を置いて行かないで下さいよ!! どうして一言言ってくれないんですか!! 私は貴方が……!!」
押し倒された克己は胸を何度も何度も叩かれるが、その力は弱く、胸には涙による跡がついている。
「私は……私は……貴方が……分かっているくせに……どうして意地悪をするんですか……」
「君が俺を拒んだんでしょ? 好きだけど一緒にはいられない、片思いで十分……そう言ったのは君だよ」
「だって!! それは……」
克己は胸を叩く森田の手を掴み、押しのけ立ち上がる。
「別にそんな話を聞きたくって俺は君達を呼んだ訳じゃないよ。森田ちゃん……君達は『現地調査』をするメンバーに選ばれた……と言う事だね? あ、二尉……話は何処まで聞いているんですか?」
森田の方を見ていた克己は冷たく言い放ち、宮川に問いかける。
「お、お久しぶりです……克己さん」
「お久しぶりです、宮川二尉。元気そうで何よりだ……また宜しくお願いします」
克己は宮川と握手を交わし微笑んだ。
「で、話は何処まで聞いていますか? ここに来るだけですかね?」
「はい、そうです。危険……くらいしか言われていませんね……」
「成る程……相変わらずいい加減な事ばかり……。まったく……」
克己はチラリと森田を見て、直ぐに宮川の方を見る。森田は何故自分の見てくれないのかと泣きながら考えていた。
緑川は伊藤に質問する。
「伊藤さん、何故三曹は……」
「三曹の恋人が克己さんなんですよ……」
「本当にそうなの? ……三曹だけが思っているように見えるけど……」
緑川は首を傾げながら伊藤に言うと、伊藤は自信なさそうに「そのはずです……」と言った。
「じゃあ、概要を説明します。俺たちは数か月の間、他の異世界を調査してきました。正直危険すぎる異世界が多く、俺たち日本人には無理だろうと思われる異世界が多かったです。ですが、つい最近発見された異世界では日本人が生活出来そうな場所でしたので、今回自衛隊を交えて調査する事になったんです。これは地球のCO2改善のために調査してきたものなのでそれを忘れないで下さい。また、原住民もいるようなので、そこも注意して下さい。自衛隊が必要かどうかというのは考えないで下さい。正直、自衛隊は必要がありませんが、一般の人が馴染めるかの調査なので連れていくだけです。怪我は自己責任でお願いしますね? 遺書も書いてきましたよね?」
「か、克己さん……どうしたんですか? な、なんか雰囲気が違いますよ?」
宮川が戸惑いながら言う。
「別に……勘違いされると困るからですよ。現状で分かっているのはレベルが無いと言う事……身体能力はここのレベルに反映された能力が備わっていると言う事だけです」
「なら私の魔法も使えると言う事ですか?」
「そうなるね、伊藤さんのレベルが上がっている場合に限るけどね。あのレベルだったら使用できないっていわれてなかった?」
「あれから少しだけレベルが上がり、使い方を教えて頂ければ使用できるかと……」
「成る程、状況によっては教えるよ。もう一個の扉が入り口になっていますからそっちへ移動します。アルス、ハミル」
二人は返事をして、テレポートを唱え、もう一つの入り口に到着した。
「じゃあ、行きますから気を引き締めて下さいね?」
自衛隊組は緊張しながら頷き、銃を構えて中へと入って行くが、森田は躊躇していた。
「森田さん? 大丈夫ですか?」
アルスが心配そうに聞く。
「か、克己さんが……」
「大丈夫ですよ、いつも気にしていましたから……今は新しい場所へ行くのですから集中しないといけません。克己様は森田さんを守るのに集中しないといけませんから……さぁ、行きましょう」
「う、うん……」
森田はアルスに連れられて入り口を潜って行った。
「こ、ここは……ジャングル?」
「そうっぽいね、大丈夫かい? 森田ちゃん」
克己が話しかけ、森田は緊張する。
「だ、大丈夫です……」
「そう、ならいいや。二尉、先へ進みましょう……」
「え?」
克己が前と比べて素っ気なさ過ぎて森田は困惑をする。
「克己、この間の場所とは異なり魔物はいなさそうだな……」
涼介が周りを見渡しながら言う。
「場所選びを失敗したかな?」
「この場所じゃなく、もう二か所前だとコアが有ったろ? そこにした方が良かったんじゃね?」
「自衛隊が勝てるか分からない場所だったろ? ちょっと難しいな……。お進めはできない」
克己はそう言って、草木を掻き分けながら歩いていくと、不思議な動物を発見した。
「あ、あれって……兎? だよな……目が3つあるように見えるが……」
「殺っちまおう、バラした方が早い……」
涼介はそう言って、何処で手に入れたか分からないスナイパーライフルを取り出し構える
「ど、どっから手に入れたんですか……、それ」
伊藤が呆れながら言うと、克己が答えた。
「鍛冶屋で作らせたやつ。問題ない、テスト済みだよ」
自衛隊組は何が大丈夫なのか分からず首を捻る。涼介がライフルを放ち、見事に相手を仕留めた。
「OK、問題ない……仕留めた筈だ」
涼介が言うと、全員で死骸の方へと歩いていく。
「確かに目が3つあるな……」
涼介が死骸の頭を確認し、ナイフで体を捌いていく。
「体内は普通の動物と変わらない……。コアも無さそうだ」
涼介は克己の顔を見てそう言うと、克己は顎に手を添えて考える。
「この世界は失敗ポイな……」
そう言って周りを見渡し、状況を考える。
「確実なのは彼処位だろ?」
「彼処は危険すぎる……が、仕方ないのかも知れないな……」
「ここの座標は調べが付いているんだろ? だったら構わないじゃん? 先ずは向こうでの問題をクリアしてからここに来れば良いだけの話だろ?」
「そりゃ、そうだが……」
克己はチラリと森田の方を一瞬だけ見て考える。森田はドキッとして顔を赤らめアルスを見ると、アルスは嬉しそうに微笑み、頷いた。
「銃が効かない訳じゃない、行くだけ行ってみたらどうだ? コイツらだって死を覚悟してはいるんだし」
涼介が言うと、自衛隊の面子は苦笑いをする。克己は再び森田の顔を見ると、森田は頷いたので決断した。
「分かった、あっちに行ってみよう。だが、絶対に彼等を死なせてはいけない! 涼介、これは絶対だ!」
克己が言うと、ノエル達の表情が引き締まる。一行は入り口まで引き返し、元の異世界へと戻ってくる。
克己は入り口枠に何かの器具を取り付け、何かをする事10分。特に何か特別な事が起きた訳では無いが、克己は器具を取り外し、袋の中に仕舞った。
「行き先を変更したよ、ここからは気を引き閉めて行こう……洒落にならないからね……」
克己が言うと、涼介は先に中へと入っていく。安全の確認を行うためだ。
「問題ない、入って良いぞ」
涼介の声が聞こえて、ノエル達は中へと入っていく最後の方に森田は入ろうとして立ち止まる。
「克己さん、無事に帰ってきたら……お話があります。宜しいですか?」
「どうぞご自由に。大丈夫だよ、何があっても君だけは守るから……」
「はい、信じてます……」
「ほら、中に入って調査を始めるよ……」
「最後に確認させてください……。まだ……私の事を思ってくれていますか?」
「……帰ってからで良いかい? 今はそんな暇がないからね」
「……冷たくなりましたね……」
森田は寂しそうな顔して中に入っていき、克己は呟く。
「思ってるに決まってんじゃん……」
少し、残念そうな顔して克己も中へと入っていった。
「涼介、状況は?」
「今のところ問題は……無さそうだ。前回と同じ場所だな……」
涼介は地面にある自分達の靴跡を見て克己に言う。克己は機械を取り出し入り口にセットすると、入り口が消えてしまった。下手をしたら帰れなくなるのを覚悟しての行為だった。
「先ずは向こうの安全が最優先だ。こっちの民家があったらそこを拠点にしよう。原住民がいるのかは分からないが、コアがあるのは確かだ、気を引き閉めて行こう……」
克己はみんなにそう言って、袋の中からレーザーガンを取り出し歩き始める。そのすぐ後ろには森田が歩き、その後ろにノエルと続く。
「克己さん、あの……こ、ここの魔物はどの様に危険なのですか?」
森田が言葉を探し、克己と会話をしたがっているようにノエルは感じた。
「凶暴なんだよ、話して通じる相手じゃない……平和的なんて言葉が似合わないね……。容赦がないって感じだよ。それに集団行動を好む様で、絶対に複数で行動をしている」
「そ、そうなんですか……。話は変わりますが……あ、あれから父と母に何度か話をしました……」
「元気そうなら何よりだよ……」
「いっぱい説明をして、理解を求めました。母は私の好きなようにしなさいって……」
「今、その話は必要か? 君はここに何をしに来ているんだ? 状況を考えよう」
「す、すいません……でした……」
「でも、嬉しいよ。心が折れそうなときもあった。だけど、森田ちゃん……。続きは後だな、二尉! 前方に敵発見、注意されたし!」
克己が言うと、アルス達も銃を構える。森田も慌てて構え、ゆっくりと先へと進む。涼介は殿を勤め、サーベルの柄だけを握り、周りを警戒していた。
「敵数4、二尉、確認できたか?」
克己が言うと宮川は手で前進を止める合図をする。
「視認良し、撃ち方用意……撃て!」
宮川の指示により、自衛隊組の射撃が始まる。克己達は周囲の警戒をして襲撃に備えていた。
「撃ち方止め!」
宮川は伊藤に指示を出そうとしたが、克己が先に指示を出す。
「アルス、確認。警戒を怠るな!」
「はい!」
アルスは周りを確認しながら敵の死骸がある場所へと近寄り、異常が無いと合図をして、克己達は近寄っていく。
「どうだ?」
克己が質問すると、アルスは足で死骸を踏みつけ死亡を再確認する。
「涼介、頼む……」
「OK……」
涼介はナイフを取り出し、死骸を解剖し始める。
「おし……、やっぱここに有ったか……」
心臓辺りにコアがあり、涼介はそれを取り除く。
「大きさはそんなに変わらないな、大体親指の爪ほどのサイズだ……」
「あとはどのくらいのエネルギーが詰まっているかだな……」
涼介が大きさを確認したあと、克己はエネルギーについて考えていた。
「分析なら、北川に頼めば早いだろ?」
「里理ちゃんに? ん……そうだけど、戻るよりも、先ずは調査が必要だろ……」
克己は里理の名前が出て森田の反応を確認したが、気にしていない様子だったので、少しだけホッとした。
「二尉、先ずは人がいるかの確認をした方が良いですかね?」
「う~ん、そうですね。落ち着ける場所は必要ですよね……。帰り道が有りませんし……」
「じゃあ、先へと進みましょう……」
そう言って克己達は先へと進んでいく。克己達が過ぎ去って暫くすると、死骸のある場所に何者かが近付き、死骸を回収していった。




