59.5話 消える人……
森田は克己の家へとテレポートで戻ってきた。森田は別れ際の克己が普段とは違って見えていたため、顔だけでも見て基地へと帰ろうと思っていた。
「か、克己さん……」
森田は克己の部屋扉をノックするが、返事はない。
「お、怒ってる……よね……」
再びノックをしたが、返事は返ってこない。森田は不安を感じて扉を開けると、そこには克己の姿がなかった。
「ま、まだ戻ってきてないのかな?」
森田は荷物を纏め、克己が戻ってくるのを待っていたが戻っては来ず、森田はアルスの魔法で基地へと帰っていった。
「アルスさん、克己さんに会えなかったけど、よろしく言っといてくれるかな?」
「構いませんが……、本当に良いのですか? ご自身で挨拶をされた方がよろしいのではないでしょうか……」
「大丈夫……だよ、何年も会えなくなるわけではないし、来週辺りには基地の中で会えると思うし……」
「あ、あの!」
「ん?」
「結婚されなかったことは後悔しないのですか……」
「してるよ……。会って謝りたい。考えてみれば、正式な妻は私になるのだし、克己さんは私を見てくれてた……と思う。私が克己さんを見ていなかっただけのような気がする……」
森田は俯き、悲しそうな顔をする。
「そうですか……。では、森田さん……サヨナラ……いつ会えるか分かりませんが、ごきげんよう……」
「え?」
森田が顔を上げると、アルスは泣きそうな顔して小さく手を振って目の前から消えた。
森田は大袈裟な別れだと思いながら基地へと戻って行った。だが、森田は気が付いていなかった。克己の部屋に訪れた時に、もう一つの扉が開いていたことを……。




